バラック
悪い癖。泣き虫男を抱くこと。それはよく泣くのだ。
始め彼らは目を閉じている。
何も喋らなくなって沈黙が流れる。それが重くなかったら何も言わないのだか厄介なことに
かなりの重みを持っている。堪らなくなり、どうしたの?っと聞くが何も答えない。
私は肩を落とし彼らの顔に指を這わせる。目を開けて。
苦しいような表情を浮かべ溢れんばかの涙を溜めた二つの目で私の目を離さない様に
ぐっと見つめてくる。
なぜ私よりも早く泣くの?そんなんじゃ私はどうすればいいの?本当は縋り付いて
子供のように泣きじゃくりたいのに…。
「ハルは強いね」
涙を拭いながらそんなことを言いお腹の辺りに顔を埋める。私は彼の頭を撫でながら
時間がたつことだけを考える、そう、私はそんな人間なのだ。
なのに彼らは私を優しいとか包み込んでくれるとか馬鹿らしいことばかり言う。
だからもしかしたらそれも私自身なのかもしれない。
私の手を離れた私の断片。核となるモノを誰かに見てほしくて自分の身を削ぎり落とした断片。
「泣きたいだけ泣けばいいよ。泣ける強さもある。一人で泣かないで、私がいる時に泣いて」
私はボロボロだ。
「ありがとう」彼は私にキスをする。それはだんだんと激しくなり体を絡ませていく。
結局はこれを待っていたんじゃないの。そんなことをポロリと言うと彼はまた泣いた。
「どうしてそんなこと言うの?俺はただハルと繋がりたかっただけなのに」
私にはわからないことがいっぱいあり過ぎる。繋がりを大切にする気持ち。
別に身体的繋がりなんてどうでもいい。ただ彼らが求めるからあげるだけ。
どうぞ、満足してね。
私は私が出来るすべてことをしてあげる。
「ハルは満足しないの?」
「普通にするよ」
彼はまたまた泣く。だからまたまた抱きしめ頭を撫でながら願い続ける。気づかれないような
透明のため息をそっとついた。
シワだらけのベット。クシャクシャになったちり紙。すすり泣くだらしない声。
「ごめん」彼は謝る。決定的な温度の違い。どの男にも感じる。抱き合っても手をつないでも心を通わしても彼らの熱さに驚く。夏の日のように熱い彼ら。彼らはそれに気づいているのだろう。だから泣く。そう私の冷たさに泣くのだ。でも、何も出来ない。
「何も出来ないけど・・俺はハルが好きだよ」
「ごめんね」近づかないで、甘やかさないで、私にはどうやら男を泣かせる癖があるんだから。