表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

バラック

作者: 桐島 瑛里

悪い癖。泣き虫男を抱くこと。それはよく泣くのだ。

始め彼らは目を閉じている。

何も喋らなくなって沈黙が流れる。それが重くなかったら何も言わないのだか厄介なことに

かなりの重みを持っている。堪らなくなり、どうしたの?っと聞くが何も答えない。

私は肩を落とし彼らの顔に指を這わせる。目を開けて。

苦しいような表情を浮かべ溢れんばかの涙を溜めた二つの目で私の目を離さない様に

ぐっと見つめてくる。

なぜ私よりも早く泣くの?そんなんじゃ私はどうすればいいの?本当は縋り付いて

子供のように泣きじゃくりたいのに…。

「ハルは強いね」

涙を拭いながらそんなことを言いお腹の辺りに顔を埋める。私は彼の頭を撫でながら

時間がたつことだけを考える、そう、私はそんな人間なのだ。

なのに彼らは私を優しいとか包み込んでくれるとか馬鹿らしいことばかり言う。

だからもしかしたらそれも私自身なのかもしれない。

私の手を離れた私の断片。核となるモノを誰かに見てほしくて自分の身を削ぎり落とした断片。

「泣きたいだけ泣けばいいよ。泣ける強さもある。一人で泣かないで、私がいる時に泣いて」

私はボロボロだ。

「ありがとう」彼は私にキスをする。それはだんだんと激しくなり体を絡ませていく。

結局はこれを待っていたんじゃないの。そんなことをポロリと言うと彼はまた泣いた。

「どうしてそんなこと言うの?俺はただハルと繋がりたかっただけなのに」

私にはわからないことがいっぱいあり過ぎる。繋がりを大切にする気持ち。

別に身体的繋がりなんてどうでもいい。ただ彼らが求めるからあげるだけ。

どうぞ、満足してね。

私は私が出来るすべてことをしてあげる。

「ハルは満足しないの?」

「普通にするよ」

彼はまたまた泣く。だからまたまた抱きしめ頭を撫でながら願い続ける。気づかれないような

透明のため息をそっとついた。

シワだらけのベット。クシャクシャになったちり紙。すすり泣くだらしない声。

「ごめん」彼は謝る。決定的な温度の違い。どの男にも感じる。抱き合っても手をつないでも心を通わしても彼らの熱さに驚く。夏の日のように熱い彼ら。彼らはそれに気づいているのだろう。だから泣く。そう私の冷たさに泣くのだ。でも、何も出来ない。

「何も出来ないけど・・俺はハルが好きだよ」

「ごめんね」近づかないで、甘やかさないで、私にはどうやら男を泣かせる癖があるんだから。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ