表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私のスキルは【毒反転】。なので、劇毒しか食べない配信やってます  作者: 狐白


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/9

第4話

 [私が狂ってるのか……それとも、この世界が狂ってるのか?]


 [この配信者……ダンジョン産の劇毒ゴンズイを、素手で掴んでるんだけど!?]


 [終わった!!誰か!!救急車呼んで!!]


 [人が死ぬぞおおお!!]


「ん? そんなに危ないの?」


 初めて見る魚だったから、どうして配信のコメント欄がこんなに騒いでいるのか、まったく分からない。


「すごい……こんなに小さい魚たちが、絡み合って……ひとつの球みたいになってる……」


 危険なんて、まったく感じなかった。


 それどころか、この黄白の縞模様の小魚たちは、すごく可愛く見える。


 私はそっと両手で包み込む。


 手のひらの温もりのせいか、小魚たちは少しずつほどけていき――


 ぴょん、ぴょん、と跳ねながら海へと戻っていった。


 ……止められない。


 小さすぎるし、体の表面はぬるぬるした粘液に覆われていて、まったく掴めない。


 それに、このサイズの幼魚って……食べちゃダメなサイズだよね、これ。


 気がついたときには――


 手のひらには、小さな粘液だけが残っていた。


 なぜか分からないけど、その粘液は――


 触れた瞬間、妙に気持ちよくて。


 思わず、手の甲に塗り広げてしまった。


 [????]


 [WTF??????]


 コメント欄が、一瞬で疑問符に埋め尽くされる。


 [ちょっと待て!?ゴンズイの毒粘液を素手で塗ったぞ!?]


 [ゴンズイ?毒粘液?何それ?本当なの?]


 [魚詳しくないけど……全然苦しそうに見えないんだが]


 [むしろ気持ちよさそうなんだけど!?]


 半信半疑のコメントが流れていく。


 [知らない人向けに説明する――


 ダンジョン産ゴンズイの粘液には、大量の毒針細胞と毒性タンパクが含まれている。


 人間が触れれば激痛。蜂の百倍レベルの痛みだ。


 しかも、接触部位は壊死する!]


 [俺それやったことある……一週間入院した……マジで、ずっと電撃と灼熱を同時に食らってるみたいで……痛すぎて気絶するレベルだった……]


 [この動画見てるだけでPTSD来たんだけど]


「えっ……そんなにヤバいの?」


 塗る手が、ぴたりと止まる。


 私はそっと手を持ち上げて、目の前でじっと見つめた。


 ……そして。


 うっとりしたまま、そのまま頬へと塗り広げる。


 [????]


 [??????]


 コメント欄が、完全に壊れた。


 流れてくるのは、ただ無数の疑問符だけ。


 でも――


 そんなこと、どうでもよかった。


 だって……


 気持ちよすぎる!


 まるで、無数の小さな精霊の手に撫でられているみたいに。


 くすぐったくて、ふわふわして、ずっと触っていてほしくなるような感覚。


 目の前に、次々とステータス表示が浮かび上がる。


 [腕/顔の皮膚細胞健康度+100(永続)]


 [痛覚耐性+100(1週間)]


 [神経系強化、反射遅延-0.03秒(永続)]


 [防御力+5]


 ……すごい。


 なんだか、体が軽くなった気がする。


 それに――反射遅延が減るってことは。


 危険に対して、もっと早く反応できるってことだよね?


「全部逃げちゃったのは残念だけど……まだお腹空いてるし……釣り、続けよっか」


 粘液はすっかり吸収されたみたいで、肌はしっとりして、なめらかになっている。


 私はもう一度、釣り竿を構えた。


 ここは美容配信じゃないし。


 ……お腹、まだ空いてる。


 [いやいやいや、普通に続行するな!?]


 [救急車いらないのかよ!?]


 [無理してるだけだろ!?痛いなら叫べって!!]


 [頼むから病院行ってくれ……課金するから……スマホの中で死なないでくれ……]


「……大丈夫です。私のスキルなら、こういう毒は平気なので。ほんとに大丈夫です……」


「あと、絶対に真似しないでくださいね!」


 ひゅっ――


 釣り針を投げる。


 初心者には“ビギナーズラック”があるって、聞いたことがある。


 ……どうやら、まだ続いてるみたい!


「来た!」


 二匹目!


 一瞬のチャンス。


 でも――


 さっきより、体の動きが明らかに速い。


 私はその瞬間を、正確に掴み取った。


 ぐっと、竿を引き上げる。


 今度は、小魚じゃない。


 夜でよく見えないけど……少なくとも、手のひらよりは大きい。


 食べられる!


 ごぽ……ごぽ……


 ……違う。


 お腹じゃない。


 魚が、鳴いてる?


 しかも――


 体が、みるみる膨らんでいく。


 膨張……?


「フグ!!」


 フグだ!


 一口で成人十人を殺せるほどの猛毒を持つ――ダンジョン産の劇毒フグ!


 やった!!


 ついに釣れた!!


 [フグ!?]


 [終わったあああああ!!]


 コメント欄が、一斉に絶叫で埋め尽くされる。


 私は慎重に針から外し、そのまま一気に海岸から距離を取った。


 さっきみたいに逃がしたら困るし。


 [マジで食う気か!?]


 [それだけはやめろ!!]


 [お願いだから死なないでくれ!!俺のスマホの中で死ぬな!!俺のスマホを事故物件にするな!!]


 [通報しろ!!]


 [G172の古代灯台エリアだろ!?近くの奴、止めに行け!!]


 [今向かってる!!待て!!]


「通報は本当にやめてください!大丈夫ですから!」


 え、ほんとに来るの!?


 まずい……


 捕まったら、食べられない。


 こうなったら――


 刺身しかない!


 フグ、食べたことないけど……


 そのまま齧れば、いける?


 がぶっ――


 ……硬っ!?


 皮、硬すぎる!


 無理、全然噛めない!!


 どうしよう、どうしよう……!


 焦っていると、そのフグが口を開き――


 中で、紫色の光が急速に集まっていく。


 [避けろ!!ダークショットだ!!]


 ドンッ!!


 ――間に合う。


 今の私は、すごく冴えてる。


 反応も、速い。


 完成する前に、思いきり蹴り飛ばした。


 暴発した魔法が、口の中で炸裂する。


 空気が、じんわり熱を帯びる。


 ……動かない。


 死んだ?


 しかも――


 自分で焼けた……?


 ちょうどいいかも。


 魚の締め方、分からなかったし……


 うぅ……ありがとう、フグ……!


 私は急いで回収し、ナイフと簡易調理道具を取り出す。


 皮を切り裂き、身をいくつか取り出す。


 時間がない。


 転送陣の方から、人が走ってきてる――


 私は魚肉をつまみ上げて、口を開いた。


 目を閉じる。


 あむっ――


 ……


 ……


 ……


 頬を、涙が伝った。


「……なんで……」


「……こんなに、美味しいの……?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ