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私のスキルは【毒反転】。なので、劇毒しか食べない配信やってます  作者: 狐白


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第3話

[毒効果反転が発動しました!]


 どうして? 私、まだダンジョンに入ったばかりなのに……


「くしゅんっ——!」


 転送陣を出た瞬間、あちこちから連続してくしゃみの音が聞こえてきた。


「この最悪の花粉! もう無理だ、鼻もムズムズするし眠気もヤバい……俺は先に戻るわ、お前らは続けてくれ……」


「俺も限界だ……一緒に出よう」


 二人の釣り人は道具を片付けると、そのまま転送陣へと戻っていった。


 花粉……?


[「花粉強化」効果を獲得。10分ごとに覚醒度+1、呼吸機能+1]


 ああ、そうだ。


 思い出した。


 ダンジョンには、毒性を持つ植物が存在することがある。


 その花粉が空気中に広がって、ダンジョンに入った人に花粉症や強い眠気を引き起こすんだった。


 だから普通の人は、しばらく探索したら外に出ないといけない。


 ……でも。


 この効果、私には——


 逆になってる。


 ってことは……


「ここ、ずっといられるってこと!? 花粉中毒の心配なし……!?」


 それなら——


 花粉が一番濃い森の奥にも行けるかもしれない。


 中心部には、まだ誰も辿り着いたことがないって話だし……


 どんなお宝があるんだろう。


 ……とはいえ。


「今はまず、ご飯……」


 お腹が空きすぎて、もうまともに歩くのもきつい。


「またフグかよ! ふざけんなよ、このフグ地獄!」


 古代灯台の近くまで来ると、やっぱりそこら中にフグがいた。


 一人の釣り人が、針からフグを外して海へ投げようとしている。


「ま、待ってください!」


 私は慌てて声をかけた。


「そのフグ、売ってもらえませんか?」


 すると、相手の目が一気に警戒色に変わる。


「何言ってんだ!? それ、猛毒だぞ! ちょっとでも食えば死ぬレベルだ、絶対食うな!」


「私のスキル、ちょっと特殊で……食べられるかもしれないんです……たぶん」


 言いながら、ちょっと不安になる。


 まだちゃんと試してないし……


 いきなりフグって、さすがに危険すぎるんじゃない?


「悪いが、渡せないな」


 ぼちゃん。


 フグはそのまま海に放り込まれた。


「もしそれであんたが中毒起こしたら、責任問題になる。そんなことはできねぇ」


「……そう、ですよね」


「嬢ちゃん。何か悩みがあるなら、俺に話してみな。無茶はするなよ」


「……え?」


 思わず苦笑いがこぼれる。


「違います違います、大丈夫です。そういうんじゃないですから」


「見た感じ高校生だろ? こんな時間に一人でダンジョン入って、仲間もいない……どう見ても危ないことしようとしてるようにしか見えねぇんだよ」


「本当に大丈夫です。ありがとうございます」


 私は軽く頭を下げて、その場から逃げるように離れた。


 ……優しい人だなぁ。


 でも同時に、ちょっと困る。


 どうやら釣り人からフグを安く譲ってもらうのは無理そうだ。


 仕方ない。


 あっちにレンタル釣具の店があるし、自分で釣るしかないかな。


「おーい! そこのお嬢ちゃん! 海を制覇してみないかい!? 釣りに必要な道具は全部揃ってるよ!」


「……釣具を一式、お願いします」


「うちは1000円から10万円まで幅広く取り揃えてるよ! 雷電シャークだって釣れる装備もある! どれにする?」


「一番安いやつで……」


「よしきた! 初心者セット一式だ! レンタル1000円、保証金3000円! まいどあり!」


 私は、ぎゅっと胸が痛むのをこらえながら4000円を差し出した。


 これが……本当に最後のお金。


 もし釣れなかったら……


 普通に、詰む。


「お願い……神様、お願い……一匹でいいから、釣れて……」


 古代灯台の下へと歩いていく。


 かすかな灯りが海面を照らしている。


 海はまるで湖みたいに静かで、波ひとつない。


 この星は恒星に潮汐固定されているらしく、潮の流れはほとんど存在しない。


 ……そのせいか。


 この海は、どこまでも静かだった。


「ポチ、配信用のアカウント作って」


[了解です~。アカウントIDはどうされますか?]


「もう餓死しそうだから、適当に決めて」


[承知しました。「もう餓死しそうだから適当に決めて」に設定しました……登録完了です!]


「……ポチ、バカなの?」


[ポチはバカではありません。ポチはダンジョン素材と人工知能技術により構築された総合支援モデルです]


「人工知能? どう見ても人工無能でしょ……もういい」


 ぱしん、と額を押さえる。


 このAI、たまに本気で腹立つ。


[配信を開始しますか?]


「する」


[配信タイトルを設定してください——]


「ダンジョン釣り。釣れたもの全部食べる」


[設定完了。3秒後に配信を開始します。3、2、1——配信スタート!]


 配信が始まった。


 ポチは小さな金属球に変形して、ふわりと空中に浮かぶ。


 私は海辺に腰を下ろして、竿を振る。


 ポチの指示通りに、餌とオモリをつけた針を投げ込む。


 ……すると、魚がかかる前に、もう視聴者が来ていた。


[マジで? 釣れたもの全部食うの?]

[ダンジョンの魚って毒だらけじゃん……効果も意味不明なの多いし]

[絶対ウソだろ、釣りタイトル詐欺だわ]


「本当に、釣れたものは全部食べます」


 初めての配信。


 “見られてる”って意識だけで、変に緊張してしまう。


 思わず姿勢を正して、少し噛みながら説明する。


[初配信? めっちゃ緊張してるじゃんw]

[高校生っぽいな。今日って全国で覚醒測定の日だろ? 終わってすぐ潜った系?]


「はい……お腹が空きすぎて、それどころじゃなくて……」


 ぐぅ——


 タイミングよく、お腹が鳴った。


[マジで食うの?]


 三人目も入室してきた。


 このタイトル、やっぱりインパクトが強いらしい。


 だって常識的に考えて——


 ダンジョンの魚なんて、ほとんど毒持ち。


「本当に食べます。ちゃんと味も伝えます」


 私は真面目に答えた。


[……これ、自殺配信では?]

[やめとけって!]

[落ち着け、まだ間に合う!]


 完全に誤解されてる。


 説明するのは面倒だし……


 一匹食べれば、すぐ分かるはず。


「来たっ!」


 竿が突然、大きくしなった。


 想像以上の引きに、体ごと海に持っていかれそうになる。


 花粉中毒状態だったら、たぶん今ので終わってた。


 ……でも今は違う。


 私は“花粉強化”状態!


[うお、マジで釣れてる!]

[毒じゃありませんように……]

[フグ来い! どうせ食えないんだろ?]


「出てきた!」


 ばしゃあっ——!


 水しぶきが弾ける。


 次の瞬間——


 黒と黄色の縞模様をした、小魚のかたまりみたいなものが、そのまま丸ごと引き上げられた。


 ばらけない。


 ひとつの生き物みたいに、空中でうねっている。


[ちょっと待って、それゴンズイじゃない!?]

[触るな! 毒トゲあるぞ!!]


「……え?」


 私は一瞬、固まった。


 視線を落とす。


 ——もう遅かった。


 もう指が触れてる。

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