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どうなさいますか、ロザリア様。

扉を叩き、入室の許可を得て中に入ると、主はちょうどリィナが用意したジャムたっぷりのスコーンを頬張っているところだった。


「お帰りなさい、ユリウス。……リィナとは話せたかしら?」


ロザリア様が期待に満ちた目で私を見る。私はワゴンを彼女の側に寄せ、冷めきった紅茶を手際よく温かいものへと取り替えた。


「ええ。少々、聞き捨てならない収穫がありました」


私は周囲の気配を伺うと、声を低めた。


「まず、ドレスの件です。リィナはあの日、エミリア様が自らインクをドレスにぶちまけ、その後で自分の服を汚して『被害者』を演じる現場を、扉の隙間から目撃していました」

「……っ、やっぱり!」


ロザリア様が勢いよく立ち上がる。その瞳には、確信と激しい怒りが混ざり合っていた。


「リィナが解雇される理由が分かったわ。エミリアは、あの現場を見られたことに気づいている。だから半年かけて彼女を追い詰めて、口を封じるつもりなのよ」

「恐らくは。……ですが、問題はそれだけではありません」


私は一拍置き、あえて無機質な声で続けた。


「今、使用人たちの間で、ロザリア様に関する極めて悪質な噂が流布されています。内容は『ドレスの件はロザリア様による自作自演であり、エミリア様を陥めるための狂言である』というもの。さらに、舞踏会での完璧な振る舞いさえも『油断させるための計算だ』と、貴女の努力をすべて狡猾な悪巧みにすり替える内容です」

「……なんですって……?」


ロザリア様の顔から血の気が引いていく。

せっかく手に入れた自信を根底から腐らせるような、卑劣な攻撃。


「ロザリア様。この噂の広まり方は、単なる世間話の域を超えています。恐らく、使用人の中にエミリア様のスパイ……あるいは協力者が紛れ込んでいます。そのスパイが主導して、組織的に貴女の評判を貶めているのでしょう」


私は主の瞳を真っ直ぐに見つめた。


「敵は屋敷の至る所に『目』と『口』を配置しています。このままでは、貴女がどれほど輝こうとも、すべては『嘘つきの演目』として処理されてしまう。……どうなさいますか、ロザリア様」


ロザリア様は震える拳を握りしめ、一度だけ深く息を吐いた。そして、一周目を生き抜いた執念を感じさせるような、鋭い笑みを浮かべた。


「いいわ。嘘つきだと呼びたいなら、呼べばいい。……でも、嘘を真実に変えるのがどれだけ大変か、あの娘に教えてあげなきゃいけないわね」


彼女の瞳に、不屈の炎が宿る。


「ユリウス。そのスパイ、特定できる?」

「誰に向かって仰っているのですか。もう数人に目星はついています。掃除が必要な『ゴミ』は、まとめて片付けるのが私の流儀ですので」

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