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何ですか、ロザリア様。

翌朝、カーテンの隙間から差し込む陽光が、私のまぶたを執拗に突き刺した。


「……ん……っ」


重い頭を持ち上げた瞬間、昨夜の記憶が濁流のように押し寄せてくる。

月明かりのホール。ユリウスの大きな手。耳元で響いた、あの低く甘い声。


「あああああもうっ!思い出すな私!」


シーツに顔を突っ伏してジタバタとのたうち回る。

あんなの、あいつの気まぐれに決まってる。それなのに、鏡を見なくてもわかるほど自分の顔が熱い。


その時、寝室の扉が遠慮がちに、けれど規則正しくノックされた。


「……っ、来たわね、性悪執事!」


私は火照った顔を隠すように、わざと不機嫌な声を張り上げた。


「遅いわよ、ユリウス! 昨夜あんなに偉そうに言っておいて、主を待たせるなんて……っ」


勢いよく扉を開け放つ。

しかし、そこに立っていたのは、ユリウスの長身ではなく――金色の髪を高い位置でサイドテールに結った、見覚えのある少女だった。


「おはようございます、ロザリア様。……残念ながらユリウス様は不在です。そんなに肩を落とさないでいただけますか、掃除がしにくいので」


少し眠たげな、それでいてどこか突き放すようなダウナーな声。

メイドのリィナだった。彼女はトレイを抱えたまま、感情の読めない瞳で私を静かに見つめている。


「え……リィナ? ユリウスは?」

「ユリウス様は旦那様に呼ばれて執務室です。代わりに私が朝食を持って参りました。……いつまでその格好で立っておいでですか。さあ、どいてください」


リィナは私をひょいと避けて部屋に入ると、手際よくワゴンをセッティングし始めた。なぜ私の使用人はこう不遜なやつばかりなのか。

毒を吐きながらも、私の好きなベリーのジャムを多めに用意してくれているのが彼女らしい。


言葉の端々に薄い棘はあるし(誰に似たんだか!)、どこかやるせなさを漂わせているが、用意された白のリネンは完璧に整えられており、私の好みの香水が微かに振られている。

私は彼女の背中で揺れるサイドテールを見つめながら、ふと、心臓が冷えるような感覚に襲われた。


(……そうだわ。リィナ、彼女は――)


脳裏に、一周目の記憶が蘇る。

リィナは、この半年後くらいに、不可解な理由で屋敷を解雇されていたはずだ。


当時は自分のことばかりで気にも留めていなかったけれど、あんなに優秀で、口は悪いけれど忠実だった彼女が、なぜ?

そして思い出す。リィナはあの時、何かを言いたげに私を見ていた。


(リィナなら、エミリアの「裏の顔」について、何か気づいていたんじゃないかしら……)


「……リィナ」

「何ですか。紅茶、まだ熱いから飲まないでくださいよ。」


ぶっきらぼうに答える彼女。

私は椅子に座り、彼女の横顔をじっと見つめた。


「貴女……最近、屋敷で変なことを見たりしてない?」


リィナの手が一瞬、止まったように見えた。

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