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できました、ロザリア様。

「おはよう、ユリウス!」


心地よい朝の光の中、私はベッドから跳ね起きた。今日は宮廷晩餐会。あのエミリアを置き去りにして、私が主役になる日!


「おはようございます、ロザリア様。……お目覚め早々恐縮ですが、少々、騒がしい朝になりそうです」


ユリウスの声はいつも通り冷静だったけれど、その瞳には凍りつくような冷徹さが宿っていた。

彼がそう口にした直後、部屋の扉が勢いよく開いた。


「ロ、ロザリア様ぁっ!!大変です大変ですっ!」


顔を真っ青にした仕立て担当の侍女が、涙目で部屋に飛び込んできた。彼女が指し示した先、部屋の隅に置かれたトルソーに目を向けた瞬間、私の心臓が止まりそうになった。


「……っ!?な、何よ、これ……!!」


一瞬で血の気が引いた。

サファイアの原石を溶かし込んだような、美しい青色。光の加減で深い海のように揺らめくその最上級の絹地に、どす黒いインクの大きなシミが、まるで悪意の塊のようにべったりと広がっていた。


「申し訳ございません……!昨晩、最終チェックをした時は確かに何ともなかったのです!なのに今朝確認したら、こんな……っ!!」


侍女が床に崩れ落ちて泣きじゃくる。

犯人なんて考えるまでもない。エミリアだ。彼女は自分が招待されなかった腹いせに、そして私が父上からの期待に応えるのを阻むために、侍女たちの目を盗んで細工をしたのだ。


「うそ……嘘よ……どうしよう、ユリウス…!もう馬車が出る時間だわ。今から仕立屋を呼んでも間に合わないし、でも、このままじゃ……!」


一周目の記憶がフラッシュバックする。

恥をかき、蔑まれ、孤立していく恐怖。私の呼吸が浅くなり、指先が震え始める。

その時、冷たくて大きな手が、私の肩を力強く掴んだ。


「落ち着いてください、ロザリア様。……たかだかインク一滴で、貴女の数日間の努力が台無しになるとでも?」


ユリウスの声は、驚くほど冷静で、そしていつになく傲慢だった。

見上げると、彼は嘲笑うような、けれど確固たる自信を湛えた笑みを浮かべていた。


「ユリウス……?」

「私が何のために貴女の傍にいるとお思いですか?私はロザリア様の執事ですよ。主人の窮地を救えぬようでは、それこそ給金を返上せねばなりません」


彼はそう言うと、懐から見たこともないような細い銀のピンと、宝石のように青く輝くシルクの飾り布を取り出した。


「ロザリア様、そのまま動かないでください。……このシミは、貴女様の『欠点』ではなく、今夜の装いの『アクセント』に変えて差し上げましょう」


彼の指先が、魔法のように鮮やかに動き始める。

汚れを隠すように布を折り込み、繊細なプリーツを作ってピンで固定していく。その手捌きは、一流の職人をも凌ぐほどに正確で、迷いがない。


「……できました。ご覧ください。」


わずか数分の出来事だった。

鏡を見れば、そこには汚れなど微塵も感じさせない、むしろ先ほどよりも豪華で立体的なデザインに生まれ変わったドレスがあった。エミリアがつけた汚らわしいシミは、ユリウスの技術によって、より高貴な青を際立たせる「バラのコサージュ」のような装飾の一部に作り替えられていたのだ。


「これ……さっきよりずっと素敵だわ……!」

「当然です。誰が仕上げたとお思いですか」


ユリウスは満足げに顎を引くと、私の前に跪き、そっとエスコートの手を差し出した。


「さあ、行きましょうか。……エミリア様の浅知恵など、私の主人の足を止める理由にはなり得ません」

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