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失礼いたしました、ロザリア様。

ご機嫌よう。私はロザリア・セラフィーナ・エーデルハイト。エーデルハイト公爵家の誇り高き令嬢よ。


……いいえ、今の私は、ただの令嬢ではないわ。


なんとびっくり。私は今『二周目』の人生を歩んでいるの!


一度目の人生、私は最愛の双子の妹・エミリアに、身に覚えのない「皇太子殺害」の罪を着せられた。信じていた家族には見捨てられ、国外追放という屈辱を味わわされた。そして……私を最後まで守り抜こうとした忠実な執事、ユリウス。彼は私を庇い、私の目の前で処刑された。


けれど、絶望の中で息を引き取ったはずの私が目を開けると――そこは二年前の世界だった。


これは、私を哀れんだ神様からの贈り物に違いない。私はこのチャンスを、決して無駄にはしない。今度の人生では、エミリアの化けの皮を剥ぎ、彼女が画策する裏切りをすべて未然に防いでみせる。私を地獄へ突き落とした者たち全員に、それ以上の地獄を見せて、私は私の幸せを掴み取るのよ!


―――と、意気込んでいたのだけれど。

二周目から、私はおかしい。


「ロザリア様。どうされたのですか、そんな知性を失った羊のような顔をなさって」

「知性を失った羊って何よ!考え事をしてたの!」


思わず声を荒らげて振り返ると、そこには銀のトレイを手に、涼しい顔で佇む男がいた。

ユリウス。意地が悪く皮肉屋な、私専属の執事だ。


「これはこれは、失礼致しました。私にはロザリア様が、思考を投げ出して草原でぼんやりしている羊にしか見えなかったのです。真剣な思索の表情がそれであったとは、お見それいたしました。不徳の致すところ、深くお詫び申し上げます。」

「失礼さに際限がないわね」


ユリウスは口ぶりは丁寧なのに、とにかく毒舌家で、よく私をからかってくる。しかも、それを楽しんでいる節がある――とんだ性悪執事よ。


「まぁいいわ。ユリウス!イヤリングつけて」

「承知いたしました」


それなのに。


ユリウスが私のすぐ背後に立つ。彼の存在が近い。

かすかに衣擦れの音がして、次の瞬間、彼の白く細い指の先が、私の耳に触れた―――


「ぎゃー!!!近いわよバカ!!!」

「ではご自分でお付けになったらどうです」


私は反射的に耳を押さえ、真っ赤な顔で震える。彼の指が触れた箇所が、妙に熱を帯びている気がした。


一周目の人生で、私はこれほどまでに「男」としての彼を意識したことがあっただろうか。

あの頃の私は、彼をただの有能な、口の悪い執事だとしか思っていなかったはずなのに。


私は俯きながら、もう一度そっと、自分の耳に触れる。


(時が戻って以来、ユリウスのこと変に意識しちゃうのよね……)


そう、私はおかしいのだ。

時が巻き戻ってから、ずっとおかしい。

彼を見れば心臓が跳ね、声を聞けば呼吸が乱れる。

こんな不遜な意地悪執事だというのに、私は彼を妙に意識してしまっている。


「ロザリア様。お顔が火照っておられるようです。……熱でもおありでしょうか。」


ユリウスの手が、静かに私の額へと伸びてくる。

冷たい指先が近づくにつれ、胸の鼓動が耳の奥でやけにうるさく響いた。


「熱なんかないわよ!!」

「そうですか?しかし、顔色が。」


彼の声は相変わらず落ち着いていて、まるで私の動揺を楽しんでいるかのようだった。


指先があと少しで触れる、その瞬間――


「ぎゃーー!!!」


思わず一歩引く。椅子の脚が床を擦る音が、部屋の静寂を破った。

ユリウスはわずかに眉を上げ、ふっと微笑んだ。


「……失礼いたしました。ただの羞恥による紅潮だったようですね」

「なっ……!」


またしても、彼の一言で完璧にしてやられた。

胸の奥がじりじりと熱くなる。


「それはさておき。早く支度を整えていただかないと。本日はエルナ様によるダンスレッスンの日ですよ。……そのように落ち着きのない足取りでは、ステップどころか、ご自分のドレスの裾に躓いて転ぶのが関の山かと」

「もう、いちいち一言多いのよ!」


私はそう言うと、あの鬼のダンス講師の存在を思い出し、げっそりと溜息を吐いた。

そう、すべては先日の食事会が発端だ。

私はあの日、クロムウェル伯爵から直々に「宮廷晩餐会」への招待を受けてしまった。栄誉なことだけれど、問題はその内容だ。


宮廷晩餐会では、食事の後に必ず大がかりな舞踏会が行われる。エーデルハイト家の令嬢として、不様なステップを晒すことなど万が一にも許されない。

何よりその宮廷晩餐会では、私の婚約者であるヴィルヘルム殿下も出席なさるのだ。

その結果、私はこうして厳しいことで有名なエルナ様のレッスンを強いられている…というわけ。


「エルナ様は少し……厳しすぎるのよ。あんなに追い込まれなくたって、ステップくらい覚えられるわ!」

「おやおや、あれほど足がもつれていた方が仰るセリフではないのでは。羊のようにふわふわした頭のままでは、レッスンが終わる頃には毛を刈られた無力な姿にされているでしょうね。それが嫌なら、せめてご自分の足の運びくらいは制御できるようになることです」


ユリウスはわざとらしく溜息をつき、私の背中を促すように扉を指し示した。

ダンスホールへ向かう廊下を歩きながら、私は必死に高鳴る鼓動を鎮めていた。


(落ち着きなさい、ロザリア! 今の私は復讐に燃える強い令嬢なのよ。あんな意地悪執事の指先ひとつで、いちいちうろたえてどうするの!)


私はドレスの裾を強く握りしめ、自分に言い聞かせるように前を向いた。

昨日は投稿ができずすみませんでした!

可能な限り毎日投稿できるように頑張ります!!

ブックマークお待ちしてます!!!

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