表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/22

アブが母になるための儀式





アゲハ「ねえ、ミツキ君。温かくなってきたし、そろそろ二人でお出かけしない?」


ミツキ「え!? そ、それって……、デー……ットっすか……」


アゲハ「デー? え、何?」


ミツキ「いや、あの、先輩と僕がお出かけするって話ですよね……?」


アゲハ「嫌?」


ミツキ「全然!嫌じゃないっす!!」


アゲハ「OK。それじゃ、今日これから出発でどう?」


ミツキ「う、うっす!あ、あの、何処に行くんですか?」


アゲハ「もう行くとこ決めてるんだ~」


ミツキ「わかりました!ついて行くっす!」


アゲハ「はい、それじゃ出発!」


ミツキ「イエス!インセクト!」



***



アゲハ「はい、着きました。学校裏の林です」


ミツキ「あの、先輩、どこかに遊びに行くんじゃないですか?」


アゲハ「遊び? 遊びと言えば……遊びとも言えなくないけど」


ミツキ「あの、ここには何をしに……?」


アゲハ「よくぞ聞いてくれたわ。それはね、ここにどんな虫さんが居るかの視察です!」


ミツキ「……部活っすか?」


アゲハ「え、そうだけど」


ミツキ「そっすか……」


アゲハ「ん? まあ、いいか。春の林には、虫がいっぱい!たくさんの動植物がひしめき合い、それぞれの生活を歩んでいる。いわば大都市ね」


ミツキ「はあ……。もう何でもいいですけど」


ブゥゥン……


アゲハ「ミツキ君!危ない!」


ペシッ!

アゲハ先輩が何かをはたく。


ミツキ「ど、どうしたんです?」


アゲハ「この大都市の中、早速良くない出来事に出会ってしまったわね。血を吸い、皮膚を腫らせ、激痛を与える、生き血を求める吸血の母。子を欲する本能の渇望に」


ミツキ「え?なんて?」


ブゥゥン……


アゲハ「伏せて!」


ミツキ「うわわ」


ブゥゥン……ピタ……


ミツキ「う、うわあ!でかいハエが腕に!!」


アゲハ「ウチの後輩はやらせないわ!」


ぴしっ!

ミツキの腕についた虫をデコピンで飛ばす。


ミツキ「あ、ありがとうございます!門城先輩!」


アゲハ「あれは、アブのメスね」


ミツキ「アブ?」


アゲハ「アブのメスは、産卵の栄養を得るために、動物の生き血を吸うのよ。母になることを求め、他者の血を飲む。それこそがアブが母へなるための儀式」


ミツキ「儀式って……」


アゲハ「ここにはそんなメスたちが沢山いるようよ。下がっていなさい。これは女たちの戦い。母になる覚悟がある者に、ひ弱かつ弱男のミツキ君では勝てないわ」


ミツキ「弱男……、そんな風に見てたんすね。あれ、なんか、目じりの端から塩水が」


ブゥゥン……


ミツキ「うわ!また来た!」


アゲハ「危ない!!」


ミツキに抱き着いてアブを回避。


ミツキ「ももも、門城先輩!」


アゲハ「何してんの!ぼーっとしてたら、一撃で持って行かれるわ!」


ミツキ「す、すいま……。なんかコレ悪くないかも」


アゲハ「何か言った?」


ミツキ「な、なんでもありません!」


ブゥゥン……

ブゥゥン……


アゲハ「まずいわね。周囲をアブたちが飛び回っている。キリがないわ」


ミツキ「あ、あの、どうすれば」


アゲハ「こうなったら!」


脱ぎ脱ぎ……

アゲハ先輩がおもむろにセーターを脱ぐ。

ブラウスでハッキリと形が見えるアゲハの体形美。


ミツキ「も、門城先輩!?」


アゲハ「ほら、君も脱ぎなさい!」


ミツキ「ぬ、脱ぐんですか!? ここで!?」


アゲハ「そうよ!早く!」


ミツキ「なんで!?」


アゲハ「さっさとしなさい!」


ミツキ「も、もうどうにでもなれ!」


ベルトを外そうとカチャカチャ。


アゲハ「きゃ!?な、なにしてんの!?」


ミツキ「え、門城先輩が脱げって……」


アゲハ「上着のセーターだ!バカ!」


ミツキ「す、すいません!」


脱ぎ脱ぎ


ミツキ「ぬ、脱ぎました!」


アゲハ「よし!セーターで仰いで風を起こせ!!」


ミツキ「は、はい!」


ブンブン


アゲハ「いい感じ!」


ミツキ「あ、あの、これは、何を?」


アゲハ「アブのような虫は、風を当てられたら思うように飛べないのよ。だからコレで追い払う!」


ミツキ「なるほど……。ブンブン」


アゲハ「ミツキ君、背中は預けたわよ!君は後ろに注意を!私は前を!そして、ここから逃げる!」


ミツキ「う、うっす!」


ブンブン


アブが風に揺られて、逃げて行く。


アゲハ「哀れな者ども。先ほどの威勢はどうしたのかしら。こちらが強者とわかれば、途端に尻尾を撒いて逃げ出す。あなた達の覚悟など、その程度なのね」


ミツキ「せ、先輩、早く逃げましょう!」


アゲハ「ええ、もうすぐ林を抜けれるわ!希望はすぐそこよ!」


ミツキ「う、うす!」


ブンブン

セーターを振りながら。

背中合わせで林を進む。


アゲハ「よし!日当たりのいい場所に来た。ここまでくれば大丈夫ね」


ミツキ「はあ、はあ、林、怖いっす……」


アゲハ「今の私たちの装備で挑むには、このダンジョンは難易度が高い。出直しましょう」


ミツキ「は、はあ、また来るんすか……」


アゲハ「ええ。今回は私の判断ミス。悪かったわ、ミツキ君」


ミツキ「い、いえ、大丈夫っす……」


ミツキ(案外、悪くなかったような……ドキドキ)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ