第二十二話 光の祭が終わるころ
第二十二話 光の祭が終わるころ
アゲハ「ねえ、ミツキ君。今日帰りが遅くなってもいい?」
ミツキ「急にどうしたんですか?」
アゲハ「連れて行って欲しい所があるの」
ミツキ「連れて行って欲しい所?」
アゲハ「一人だと、行きにくい場所っていうか……。男の人と一緒じゃないと、行けないっていうか……」
ミツキ「ごくっ……。男の人と一緒じゃないと、行けない場所……」
アゲハ「私、男の子の友達って、ミツキ君ぐらいしかいないしさ。女の子の友達誘ってもいいんだけど……。ちょっと、ね。興味ないかも……」
ミツキ「女どうしも行けるんすか……」
アゲハ「ど、どっちかっていうと、男の人の方がいいんだけど。ミツキ君どうかな?」
ミツキ「い、行きます!」
アゲハ「ほんと?」
ミツキ「も、もちろん!!」
アゲハ「じゃあ、部活の後にね」
ミツキ「う、うす!」
ミツキ(すごい急だけど、もしかして、今日、大人の階段を上るのかな……。こんな感じなんだ、大人になるって……)
***
アゲハ「はい来ました。山の麓です」
ミツキ「あの、かなりバスに揺られて来ましたけど……。こんな所にあるんですか?」
アゲハ「うん。ここから、ちょっと山を登るけどね」
ミツキ「山の中に?」
アゲハ「うん。川の上流まで。暗いから気をつけてね」
ミツキ「あの……。そんな所に?」
アゲハ「そうだよ? え、ダメ?」
ミツキ「い、いえ! 滅相もございません!」
ミツキ(もしかしたら、ちょっと変わった趣向かもしれない。先輩って変わってるし)
アゲハ「うん、お願い。懐中電灯持ってきたよね?」
ミツキ「はい。言われた通りに」
アゲハ「じゃあ、ミツキ君が先頭ね」
ミツキ「は、はあ……」
***
ミツキ「門城先輩、どこまで行くんですか?」
アゲハ「もうちょい、もうちょい。川が見えるから、その辺りまで」
ミツキ「はあ……」
ミツキの裾をつまんで歩くアゲハ。
ミツキ「あ、あの……。手、つなぎましょうか……?」
アゲハ「え!?」
ミツキ「服、引っ張ると伸びちゃうかも……。ドキドキ」
アゲハ「ご、ごめん。そ、そうしようかな……」
ミツキ「は、はい……。どうぞ……」
アゲハ「うん……」
手を繋ぐ。
ドキドキドキドキドキドキ
ミツキ(か、かっこつけてみたけど、だ、大丈夫だよな!?)
アゲハ「……」
ミツキ「せ、先輩、大丈夫ですか?」
アゲハ「……うん」
ミツキ「そ、空も、だいぶ、暗くなってきました、ね……?」
アゲハ「ね、日は長くなってきたけど、この時間になるとね」
ミツキ「ひ、人気も無いし……。この先の川で、何があるんですか?」
アゲハ「内緒」
ミツキ「な、内緒……」
アゲハ「でも、こんな所、一人じゃ怖いじゃない? ミツキ君がOKって言ってくれてよかったよ」
ミツキ「も、もちろん!僕で良ければ!……ん?」
アゲハ「ん?」
ミツキ「一人じゃ怖い?」
アゲハ「え、怖いじゃん。ちょっとだけとはいえ、夜に山に入るの」
ミツキ「夜に山に入るのが怖い?」
アゲハ「え、怖くない?」
ミツキ「怖いですけど……。それで僕を?」
アゲハ「え、そうだけど。男の人が一緒だと心強いよ」
ミツキ「あ、はあ……。え? ん?」
アゲハ「なに?」
ミツキ「あ、あの、頭の中がこんがらがっていて……」
アゲハ「あ、着いたよ! ライトを消して!」
ミツキ「は、はあ……」
フワフワ
ポツリ、ポツリと飛ぶホタル。
ミツキ「……ホタル?」
アゲハ「綺麗だね。ここは、ホタルで有名な場所なんだ。川が綺麗だからなんだよね。ちょっと前までは人でいっぱいだったらしいよ」
ミツキ「へえ……」
アゲハ「もうすぐ夏になるの。そしたら、ホタルの季節は終わっちゃうからさ。見ておきたいなって」
ミツキ「そうだったんすね」
アゲハ「もっと早くにきてたら、もーっと沢山飛んでるらしいけどね。ホタルの成虫が数日で死んじゃうのって知ってるでしょ?」
ミツキ「七日とか、聞いたことありますね」
アゲハ「五月の終わりぐらいから順番に大人になっていってね、恋の相手を見つけるの。この時期は終盤で、ホタルたちの恋の季節はもうすぐ終わっちゃうんだ」
ミツキ「へえ……」
アゲハ「人がいっぱいだと、私、酔っちゃうから。このぐらいの時期がいいかなって」
ミツキ「たしかに、今日は誰もいませんね」
サーっと木々が揺れる。
フワフワ、キラキラ
ミツキ「他に人がいなくて良かったかも」
アゲハ「ごめんね。私が弱っちいからさ」
ミツキ「いいえ。僕も、その方が良かったんだと思います」
アゲハ「ミツキ君は人混み得意じゃないの?」
ミツキ「それと、これとは別ですから」
アゲハ「ん? どういうこと?」
ミツキ「まあ……。内緒、です」
アゲハ「ふーん」
握られた手。
フワフワ、キラキラ




