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第二十一話 コガネムシさんは嫌われ者





ブーン、ブーン

カツン!

ブブブ、ブーン!


ミツキ「なんだ?」


ブーン、カツン!


窓ガラスにぶつかる虫。


ミツキ「あ、カナブンだ」


アゲハ「ふーん、どれどれ?」


ワシワシ


窓の外で、ひっくり返って足をばたつかせている。


アゲハ「あー、コガネムシさんだね」


ミツキ「えっと、カナブンって言いません?」


アゲハ「コガネムシさんね」


ミツキ「へー。うちじゃカナブンって呼んでますけど、アゲハ先輩の家ではコガネムシさんって呼んでるんすね」


アゲハ「カナブンじゃなくて、コガネムシさんは、コガネムシさんだよ」


ミツキ「ふーん。カナブンにも言い方が色々あるんすね。方言みたいなもんですかね?」


アゲハ「ん? カナブンじゃなくて、コガネムシだって」


ミツキ「えーっと、まあ呼び名は色々ってことを言いたいわけでして……」


アゲハ「だーかーらー! コガネムシ!」


ミツキ(偏屈なんだよな、門城先輩ってこういう所……)


アゲハ「あのね、カナブンとコガネムシさんは、別の虫なの!」


ミツキ「え? こいつ、カナブンに見えますけど……」


アゲハ「そっくりさんなの!」


ミツキ「そっくりさん?」


アゲハ「見た目が似てるから、混合されがちなの。まあ、どちらもコガネムシ科だし、しょうがないけど……」


ミツキ「別の虫なんすね……、てっきり、各地で呼び名が違うのかと……」


アゲハ「まったく……。いーい? 見た目はそっくりでも。片や害のない虫と言われ、もう一方は害虫というレッテルを貼られているぐらい違うんだよ?」


ミツキ「そうなんすね……。同じ形してるっぽいっすっけど……」


アゲハ「背中の三角計の所と、顎の形が若干違うんだよね」


ミツキ「知らなかった……」


アゲハ「まあね。カナブンは特段害虫ってわけでもないけど、このコガネムシさんは害虫って言われて嫌われることが多いんだよね」


ミツキ「同じような形なのに?」


アゲハ「食べてる物が違うんだよ。カナブンは土の中の枯葉とかを食べて、大人になったら樹液や、落ちた果物なんかを食べてる。果樹園以外では、害のない虫って言われてるんだよ。しかし、コガネムシさんは……」


ミツキ(……今日も日差しが綺麗だな)


アゲハ「聞いてる?」


ミツキ「き、聞いてます!」


アゲハ「コガネムシさんは生きた植物の根とか、葉っぱを食べちゃうの。だから、農作物を荒らす厄介者って言われてるんだよね」


ミツキ「似てる虫なのに、嫌われてるんすね。かわいそうに」


アゲハ「よ……、良く言った!」


ミツキ「え?」


アゲハ「人間都合で見てるから、害虫とか言っちゃうんだよ!そこに気が付くとは!」


ミツキ「え?」


アゲハ「見直したわ、ミツキ君」


ミツキ「ど、どうも……」


アゲハ「そういうわけなの。確かにコガネムシは農作物を荒らす害虫。しかし、彼らにも彼らの役割がある。いなくなったら、それはそれで問題が起きる。バランスの問題ってわけ」


ミツキ「な、なるほど」


アゲハ「どちらも土を良くする虫だし、食物連鎖の中では、鳥さんの大事な餌にもなる。コガネムシさんだけレッテルを貼られてるのも、不憫じゃない?」


ミツキ「でも、農作物を荒らしちゃうんすから、嫌われても仕方ないんじゃないすかね」


アゲハ「まー……、そういうことなんだよね……。彼らが全くいなくなったら、土の豊かさも失われちゃうんだけど、農作物が食べられちゃったらね……。彼らの役割って、地味で見えないからさ……」


ミツキ「そうですね……」


アゲハ「彼らも要らない存在じゃないからさ。一方向の見方で、貴方は良い人、この人は悪い人って、レッテルを貼っちゃうのは、ちょっと違うかなって……」


ミツキ「どの虫さんとも仲良くできたらいいっすけどねー」


アゲハ「まあ、皆、それぞれの都合があるからさー」


ミツキ「まーでも、僕はコガネムシさんを悪く言ったりしないっす。カナブンもコガネムシさんも、似た物どうしっすから」


アゲハ「いや、だから、違う……。まあ、ミツキ君らしいか……。いいかな、それで……」


ミツキ「やった、今日は沢山ほめられて、嬉しいっす」


アゲハ「うん……」


ブーン、カツン!


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