第十五話 雨が待ち遠しいカタツムリさん
ミツキ「雨が多いっすね……」
アゲハ「そんなに外を眺めてても、すぐに晴れないんじゃないかなー」
ミツキ「朝からずっと雨ですしね」
アゲハ「もうすぐ梅雨だしねー」
ミツキ「やまないっすかねー」
アゲハ「ドバーっと降る雨は、すぐにやむかもだけどー。シンシンと降る雨は、しばらくやまないって、おじいちゃんが良く言ってるかな」
ミツキ「ドバー? シンシン?」
アゲハ「雨の降りかたの話ね」
ミツキ「ドバーって、どういう感じの降りかたっすか?」
アゲハ「そうだねぇ。ドバーは、ザーって降る雨って感じかな」
ミツキ「シンシンは?」
アゲハ「シンシンはシトシト降る雨って感じなんじゃない?」
ミツキ「ザーとシトシトの違いは?」
アゲハ「あー、もう、うっさい。オノマトペにいちいちケチつけてたらキリがないよ?」
ミツキ「すんません……。興味本位で……」
アゲハ「まったく。そうだ、ちょっと校庭の散歩しない?」
ミツキ「雨降ってるっすよ? シンシンと」
アゲハ「だからよ。雨には雨の良さがあるの」
ミツキ「うーむ。雨でべちょるの嫌だしなぁ」
アゲハ「もう! いいからさっさと立つ!」
ミツキ「ウーム」
アゲハ「いえすー?」
ミツキ「いんせくとー」
***
アゲハ「はい、来ました。ここは花壇ですね」
ミツキ「雨降ってるし、虫さんもいないんじゃないっすか?」
アゲハ「いやいや、雨だから出会える虫さんもいるのよ」
ミツキ「雨だから出会える?」
アゲハ「あ、いたいた」
ミツキ「どこっすか?」
アゲハ「ほら、カタツムリさん」
ヨジヨジ
葉っぱの上にカタツムリ。
ミツキ「あー。たしかに雨の日にしか見ないかも」
アゲハ「カタツムリさんは、雨の日を楽しみにしてるからねー」
ミツキ「楽しみ?」
アゲハ「そそ。だって彼らは湿り気がないと生きていけないじゃない? 普段はじっと日陰で隠れてて、雨が降ったら、待ってました!って飛び出してくるの」
ミツキ「そうなんすね。見るからにネチャネチャしてますもんね」
アゲハ「そもそも、軟体動物の仲間だからさ。虫というより、タコとか、イカの仲間なんだよ」
ミツキ「タコ? カタツムリが?」
アゲハ「まあ……、見た目は似てないけどさ。分類上はね。つまり、水分が無いと生きていけないの。だから雨が降るのを、心待ちにしながら生きてるんだよね。干からびちゃったら大変だし」
ミツキ「晴れてる日は何をしてるんすか?」
アゲハ「日陰の下で、殻に閉じこもって水分温存」
ミツキ「……大変っすね」
アゲハ「そうだよ。だから、雨が嫌だなって思ってても、カタツムリさんが生きてくためには、雨が必要だし、多めに見てあげてよ」
ミツキ「そうすね。人間も雨が降らないと、水不足になりますし」
アゲハ「そういうこと。命にとって、雨って大事なんだよ。カタツムリさんなんか、4億年前ぐらいからいるって言われてるし」
ミツキ「まじすか?」
アゲハ「うんうん。元々巻貝の仲間から派生して、陸で暮らすことになったっぽいけどさ、それからずっと、こんな生活をしてるって思ったらすごいことじゃない? 4億年間ずっと雨を待ちながら生きてるなんてさ」
ミツキ「晴れの日が続いたら、大変っぽいすけど、不思議っすね」
アゲハ「それだけ、ちゃんと雨が降って来たってことなのかもね。大昔の人は、雨が降らなくて、農作物が実らなくて、飢えに苦しんだりっていう話も聞くじゃない? 雨よ降れ、雨よ降れって雨ごいしていたりさ」
ミツキ「聞いたことはあるっすね。大変だったんすね、昔の人は」
アゲハ「そういうこと。雨の日は、人にとっても命を繋ぐ大切な日なんだよ。今だって水不足とかあるし」
ミツキ「たしかに」
アゲハ「うむ。4億年後もカタツムリさんが生きて行けるような、雨が降り続く環境で会ってほしいよね。ということで、雨の日もいいかもって思ってくれた?」
ミツキ「僕、嫌だとは言っていないような」
アゲハ「そうだっけ?」
ミツキ「ちなみにっすけど、今の雨の降りかたは、なんて言うんすか?」
アゲハ「え? サーって感じかな?」
ミツキ「確かに、サーって感じっすね」
アゲハ「……もしかして、馬鹿にしてる? 私のオノマトペ」
ミツキ「してないっすよ」
アゲハ「してるよね?」
ミツキ「い、いえ、してないっす!」
アゲハ「なんかイライラしてきたわ。教えてあげましょうか? 先輩を馬鹿にしたらどうなるか。我が部に代々伝わる上下関係の厳しさという奴を」
ミツキ「代々って……、門城先輩が立ち上げた部なんじゃ……」
アゲハ「うるさい! 先輩は敬うべし!」
ミツキ「う、うす!」
アゲハ「あ? イエス?」
ミツキ「イエス!インセクト!」




