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第十四話 毛虫さんはサバイバルの最中





下校中。

咲き乱れる桜の木々を見上げる。


ミツキ「桜も散り始めたっすよねー。寂しいっす」


アゲハ「ね。ミツキ君、この春、高校生になってみてどうだった?」


ミツキ「進学して、覚えることも色々多くて、ホントにバタバタっす」


アゲハ「私もそうだったなぁ……。不安だよね、新しい人間関係の中で、自分は大丈夫かなとか。どんな人と出会うかなとか」


ミツキ「僕は入学して、速攻でスゴイ人に出会ってしまったっすけどね」


アゲハ「へえー。すごい人?どんな?」


ミツキ「どんなって……。局所的な分野において、とても物知り……とでも言いましょうか……。自分にはない視点を持っている人というか……」


アゲハ「ふーん、変わった人がいるんだね」


ミツキ「ま、まあ……」


ポトリ


アゲハ「あ」


ミツキ「なんすか?」


アゲハ「あー、ミツキ君の肩のところにね。ふふ、いらっしゃい、小さなモンクロシャチホコさん」


ミツキ「もんくろ? 肩? え?」


アゲハ「ここ、ここ」


モゾモゾ

ミツキの肩に乗る毛虫。


ミツキ「ひ、ひいいいいい!!!」


アゲハ「あ、落ち着いて、この子、毒とかないから」


ミツキ「毛虫があああ! 肩にいいいい!」


アゲハ「こらこら、だから害はないって。脅かしたらだめだよ」


モゾモゾ

ミツキの首元に近づく毛虫。


ミツキ「ととと、とってくれっすー!」


アゲハ「あーはいはい」


ひょい


枝で毛虫を拾い上げる。


ミツキ「はー、はー、はー」


アゲハ「この子、何か怖いものから逃げて来たんだろうね」


ミツキ「に、逃げて来た?」


アゲハ「この子たちは普段はじっとして隠れてるからさ。動くときは、天敵が現れたりしたときなの」


ミツキ「そ、そうなんすか……」


アゲハ「すごい勇気だと思わない? 危険から逃げるためとはいえ、自分から飛び降りているんだよ?」


ミツキ「す、すごいっすけど……、こっちは、めっちゃ怖かったんすけど」


アゲハ「ふふ。でもよかったじゃない。落ちたのがミツキ君の肩で。おかげでこの子は無事だしね」


ミツキ「よかった……、よかったのか……? よかったのか……」


アゲハ「さあ、桜の木に戻りな」


毛虫が乗る枝を、桜の幹に近づける。


モゾモゾ

桜の木に登っていく。


アゲハ「次は怖いものが来ないといいね」


ミツキ「昔から、桜の木の下を歩くときは、注意してたんすけど……、今日は油断してたっす……」


アゲハ「彼らは人の影とか、風の動きとかでも危険を察知するから、静かに通り抜けよっか」


ミツキ「う、うっす……、コソコソで切り抜けるっす」


コソコソコソ


ミツキ「ふう……、ここまでくれば安心っすね」


アゲハ「ふふ。相変わらずの怖がりだね」


ミツキ「どうみても怖いっすよ、毛むくじゃらでモゾモゾ動いてるんすよ?」


アゲハ「うんうん。まあでも許してあげてよ。彼らって、本当に過酷なサバイバル生活をしてるんだからさ」


ミツキ「サバイバル?」


アゲハ「彼らって、毒も無ければ、噛む力も強くないし、何にも身を守る術がないんだよね」


ミツキ「そうなんすね、あんな見た目なのに」


アゲハ「せめてもの擬態っていうのかな。彼らは鳥さん、他の虫さん、色んな生き物に狙われてるのよ」


ミツキ「ふーん」


アゲハ「特に春は、鳥さんたちは子育てシーズンだし、さっきの毛虫さんなんかは、すぐに食べられちゃうの」


ミツキ「でも、桜の木には毛虫がいっぱい居るように思うんすけど。小さい頃なんか、さっきみたいに、何回も落ちてこられた記憶が……」


アゲハ「うん、いっぱい居るよね。でも、成虫になるまでに、ほとんどが食べられちゃうんだー……。99パーセントぐらいの毛虫さんは、成虫になれないんだよ」


ミツキ「え、無茶苦茶いっぱい食べられてるじゃないすか……」


アゲハ「鳥さんたちの子育てを支える食料になっちゃってるからね。彼らがいっぱい居るおかげで、鳥さんは子育てが出来る。さっきの子も、いつか食べられちゃうかもね」


ミツキ「過酷なんすね……」


アゲハ「まあね。だから、踏みつけたりしちゃだめだよ? サバイバルを生き残って、成虫になって、次の毛虫さんたちを産んでもらって、そしてまた、来年の鳥さんの子育てを支える餌にもなってもらって、そうやって、季節の中で命を回してもらわないとさ」


ミツキ「あいつらが餌にならないと、鳥さんも生き残れないんすもんね。色々あるんすね、自然って」


アゲハ「そういうこと。大人になるって大変なんだよね。まあ、私たちも大人になるまでに、色々大変なんだけどさ」


ミツキ「そっすね……。毎日、悩みや、トラブルは尽きないっすしね」


アゲハ「大変なんだ、ミツキ君の毎日も」


ミツキ「そっすね~。でも、それなりに楽しいっすよ」


アゲハ「ふふ。気の持ちようは大事だね。えらいえらい」


ミツキ「先輩に褒められたー。あー、もっと褒めてほしいっすねー」


アゲハ「えらいよー、ミツキ君」


ミツキ「もっと褒めてー、もっと、もっと」


アゲハ「うん、えらい……。まだまだ子供だね、ミツキ君……」





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