第十三話 アイツがいるなら、ゲジが来る
ミツキ「あ、またコイツ……」
ミツキが小さい黒い虫を見つける。
ミツキ「最近多いよな、この小さい虫」
プリントですくって、窓の外に放り投げる。
アゲハ「み、ミツキ君……。今のは……」
ミツキ「え、よくわかんないけど、最近よく見る虫っす」
アゲハ「小さい、黒い、テクテク歩いてる……」
ミツキ「そんな感じっすね」
アゲハ「ミツキ君、あれが何か知っているの……?」
ミツキ「いや、知らないっすけど、最近、この部屋で結構見ますね」
アゲハ「け、結構……?」
ミツキ「昨日もいたっす。先輩がまだ来てない時に」
アゲハ「ひ、ひいいいい!!」
ミツキ「な、なんすか!?」
アゲハ「あれは、ゴキちゃんの赤ちゃん!つ、つまりは、敵の新兵よ!!」
ミツキ「あ、あれが、ゴキブリ?」
アゲハ「完全に油断していた……。ミツキ君が、いつもここでお菓子やら、コンビニ唐揚げやらを食べていたことに……」
ミツキ「え、まずかったっすか?」
アゲハ「そして季節は春。窓はあけっぱなし。学校の裏は林。そもそも、ここは田舎で自然は豊富。終わった……」
ミツキ「な、なんなんすか……」
アゲハ「私達が油断している隙に、スパイを放たれていたのよ。もうこの部室は私たちのオアシスなんかじゃない。ここはもう戦場の最前線なの!!」
ミツキ「す、すぱい? さいぜんせん?」
アゲハ「卵よ」
ミツキ「え?」
アゲハ「ゴキちゃんの卵を仕掛けられているのよ!この部室に!!ああああああ!!!」
ミツキ「せ、先輩、落ち着いてっす!」
アゲハ「きえええええ!!あんだら、いんだら、うんだら、えんだら」
ミツキ「そ、そうだ! ムーちゃんっす、ムカデのムーちゃんに探してもらえば!」
アゲハ「どこに卵が仕掛けられているかわからないのよ。ムーちゃんが逃げちゃったらどうするのよ」
ミツキ「そ、そっすけど、どうしたら」
シャカシャカシャカ
ミツキ「ん?」
シャカシャカシャカ
壁にゲジゲジ。
ミツキ「ひ、ひいい! ゲジゲジっす!!」
アゲハ「き、来てくれたのね。マイヒーロー!」
ミツキ「まい、ひーろー? よくわかんないっすけど、ゲジゲジを追い出すっす!」
アゲハ「や、やめてミツキ君! ミツキ君は誤解してるのよ、彼らを!」
ミツキ「え?」
アゲハ「彼らは、今、私達の為に戦っているの! 敵なんかじゃない!」
ミツキ「え、ゲジゲジっすよ?」
アゲハ「もう、ミツキ君のバカ! 彼らの気持ちも知らないで!」
シャカシャカシャカ
ミツキ「あ、どっか行った……」
アゲハ「ここはもう安全よ。ミツキ君、敵の危険物はほどなく処理される」
ミツキ「どういうことっすか?」
アゲハ「ゲジゲジ、つまりはゲジさんは、家の中の不快害虫を倒してくれるヒーローなの。見た目は怖いけど、とっても頑張ってる!」
ミツキ「そ、そうなんすか」
アゲハ「そもそも、スパイを招きいれてしまったのは、私達。この部屋には敵が沢山。そんなとき、何処からとも現れ、人知れず処理して、人目から消える。孤高のヒーロー、それがゲジさんなの」
ミツキ「そ、そっすか……。ぼくは、どっちかというと、ゴキよりゲジゲジの方が怖いっす」
アゲハ「な、なんてことを。そうやって相手の見た目で態度を変えて、彼の心が傷ついたらどうするの!?」
ミツキ「ゴキは……、見た目で嫌ってるんじゃないんすね……」
アゲハ「さあ、今日は撤収。帰宅しましょう」
ミツキ「え、もう帰るんすか?」
アゲハ「ええ、ここはもう彼の戦場。一般市民が邪魔をしてはいけないわ。明日には全てが解決していたらいいのだけどね」
ミツキ「そ、そっすか……。良かったっす……」
アゲハ「あ、そうだ、帰りにソコのコンビニ寄ってかない?」
ミツキ「え?」
アゲハ「ミツキ君がよく食べてるメガソルト唐揚げ、私も食べたくなってきちゃった」
ミツキ「お、あれ美味いっすよ! スーパーカプサイシン唐揚げも美味いっすけど、メガソルトの方が半歩上っすね~。そうだ、シェアしません?」
アゲハ「シェア? その二つで?」
ミツキ「そっす! どっちも美味いっすから!」
アゲハ「スーパーカプサイシンって、辛いヤツじゃないの? 大丈夫かな」
ミツキ「それがいいんすよ! さ、ここはゲジゲジさんに任せて、行きましょうっす!」




