表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/22

第十二話 カメムシさんを怖がらせない





ミツキ「……」


科学準備室で、ジーっと机を見るミツキ。


アゲハ「ミツキ君、なにしてんの?」


ミツキ「いえ、あの、こちらをご覧になってくださいっす……」


机の上にカメムシ。


アゲハ「あ、ああ、カメムシさんね……」


ミツキ「どうしましょう……、こいつ手に持ったら無茶苦茶くさいですしね……」


アゲハ「それで、にらめっこしてたのね……」


ミツキ「教科書でぶっ潰してやろうかとも思いながら、迷ってるっす……」


アゲハ「それは、やめてあげて欲しいかな……。スプラッターは見せちゃ駄目なの……、この話、年齢制限してないから……」


ミツキ「何の話っすか……。仕方が無いっすね……、ティッシュでつまんで外に放り投げるっす」


アゲハ「うん、ポイ捨てもやめてほしいかな」


ミツキ「なら、どうしろと言うんでしょう。いつまでもコイツの滞在を許したら、安心して夜も眠れないっすよ」


アゲハ「うん、家に帰って寝てほしいけどね。あのね、ミツキ君。北風と太陽を知ってる?」


ミツキ「昔話っすか?」


アゲハ「まあ、童話なんだけど……。とある旅人の服を北風さんと太陽さんが脱がせようって競い合う話ね」


ミツキ「それぐらい知ってるっす!バカにしないで欲しいっす!」


アゲハ「まあ、まあ……。今のミツキ君は北風さんだよ。その子と睨み合って、どう攻撃しようか考えてる。その子が可愛そうかも」


ミツキ「し、しかし……」


アゲハ「カメムシさんたちが匂いを発するのは、身を守る最終手段なのね。だって、その子たちは足も遅ければ、大した武器もない。匂いを出すだけが唯一の防御方法だから」


ミツキ「そりゃあ、まあ、そうなんでしょうけど……」


アゲハ「だからね、無理に掴もうとかしたら、余計に怖がって匂いを出しちゃうからさ。怖がらせないであげて」


ミツキ「う、うす」


アゲハ「ごめんね。怖かったよね。ホントはこんなに怖い人じゃないから、心配しないでね」


ミツキ「こいつがここに入ってくるから悪いんす!」


アゲハ「まあ、待ちたまえ。そうだ、これ使おう!」


鞄から下敷きを取り出す。


ミツキ「それで、ぶっ叩くんすか?」


アゲハ「だから、物騒なこと言わないで……」


下敷きをカメムシの手前に置く。


アゲハ「ほーら、怖くないよ~。乗っておいでー。お外に帰してあげますよー」


カメムシ「ブルブルブル……」


アゲハ「おやおや……。完全に恐怖を植え付けてしまったようね。ミツキ君が怖がらせすぎたんじゃない?」


ミツキ「しょ、しょうがないっすよ!」


シュタ!


机の上にハエトリさん。


ミツキ「あ、ハエトリさんっす! ここのポリスが出動してきたっすよ!」


アゲハ「まずいわね。ハエトリさんがカメムシさんに興味を持ってるみたい……」


ミツキ「ハエトリさんに追い払ってもらえば?」


アゲハ「ハエトリさんからしたら、この子は勝てるかどうか怪しいサイズ。そしてカメムシさんの殻は硬い。激戦が繰り広げられる予感がするわ」


ミツキ「ごくっ……」


アゲハ「そして、その戦いの後に残るのは、私達を苦しませる匂いという名の毒。この部室が人の住めない場所になるかもしれない。勝者のいない、地獄よ」


ミツキ「やばいっすね……。しかし、下敷きにも乗ってこないし、どうしたら……」


アゲハ「ミツキ君、ダッシュで校庭から落ち葉をとってきて」


ミツキ「落ち葉っすか?」


アゲハ「早く!私がハエトリさんを下敷きで阻んでおくから!急いで!」


ミツキ「う、うす!」


アゲハ「任せたわよミツキ君。あなたが、早く落ち葉を見つけて帰ってこなければ、私は彼らの戦いに巻き込まれ、もう此処にはいないかもしれないわ……」


ミツキ「それは、ただ部屋から逃げただけでは……」


アゲハ「行って!あなたを信じて待ってる!私の下敷きが、ハエトリさんの動きを封じているうちに!」


ミツキ「い、イエス!インセクト!」


アゲハ「頼んだわよ……、ミツキ君……」


駆け出すミツキ。


ミツキ「門城先輩……どうか、無事でいてくれっす……」



***



テクテク


ミツキが持ってきた落ち葉に、乗ってくるカメムシさん。


ミツキ「乗ってきたっすね」


アゲハ「はい、そのまま窓の外に持って行って」


ミツキ「うす」


アゲハ「じゃあ、窓の外に落ち葉ごと、落としてあげましょうか」


ミツキ「大丈夫っすかね」


アゲハ「大丈夫よ。彼らは飛べるんだし、落ち葉は自然に帰るだけ」


ミツキ「そっすね。じゃあな、カメムシさん!」


ふわっ


風に揺られて落ちていく落ち葉。


アゲハ「よかったわね。いがみ合っているだけじゃだめ。何かをお願いしなきゃってときも、相手の立場を少し考えて、どうしたら相手が納得してくれるかって考えるほうが、お互いが気持ちよく生活できるっていうもの」


ミツキ「ま、そっすね。ぶっ叩いて終わりってのも、気分がよくないっすから」


アゲハ「うんうん。成長したね、ミツキ君。お姉さん嬉しいな」


ミツキ「ぼ、僕だって、もう大人っすから! ……デレデレ」


アゲハ「ふふ、かっこいい大人の男になってね!」


ミツキ「うっす!」


ブーン


ミツキ「……ん?」


机の上にカメムシが降り立つ。


ミツキ「ま、まさか……、さっき、出て行ったはずじゃあ……」


アゲハ「別のカメムシさんかもね……、さあ、ミツキ君、もう一枚落ち葉を……」


ミツキ「う、うす……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ