第十話 我らの友ミツバチさん
ミツキ「美味いっす、イチゴオレ!やっぱり人の金で飲むジュースは最高っす!」
アゲハ「あの……、想像以上に現金な性格だったのね、ミツキ君……」
ミツキ「奢るって言ってくれたのは、門城先輩っす」
アゲハ「まあ……、そうなんだけどね……」
ミツキ「甘い物好きなんすよ。ありがとうございます!」
アゲハ「う、うん……、よかった、よかった……」
ブーン
ミツキ「あ、見てください、花壇にミツバチが来てるっす」
アゲハ「あら、ホントだね。彼らも甘い匂いに惹かれてきたのかしらね」
ミツキ「ミツバチは良いっすよねー。いつも甘い物を集めて、巣に蓄えて。巣にはたんまりと甘い物を貯め込んでるんでしょ? そんな生活してみたいっす」
アゲハ「あのね、ミツキ君。彼らのこと、ちゃんとわかってあげれてる? 人間にとって、とても重要な行動を彼らはしてくれているんだよ?」
ミツキ「えーっと、ハチミツを作ってくれたりとか? まあ、ハチミツも美味いっすけど、そんなに重要っすか、ハチミツって」
アゲハ「おいおいおい、ミツキ君よ。お主の生活を裏で支えてくださっている方々に対して、失礼ではないか。無知とはいえ、己の印象だけで相手を低く見積もることは、木偶のすること」
ミツキ「え、えっと……」
アゲハ「そうやって、知らず知らずのうちに他者に失礼な態度をとっては、いつか足元をすくわれてしまうであろう。有事の時に援助を受けられなくなっても知らんぞ」
ミツキ「す、すいませんっす……。ハチミツは確かに大事っすね!」
アゲハ「馬鹿者めが!それが、他者を低く見積もった、愚かな発言だと言うのだ!」
ミツキ「え!?そこじゃないんすか!?」
アゲハ「昆虫観察部の一員として、これは看過できないわ。今日はミツキ君に、昆虫部員たるものの心得をみっちり叩き込む必要がありそうね」
ミツキ「こ、心得っすか……」
アゲハ「聞くがよい、わっぱよ。お主は、我が流派の一門なるぞ。その体たらくでよいであろうか」
ミツキ「も、もう勘弁してほしいっす!」
アゲハ「ふう、じゃあ、ミツキ君。お姉さんのお話、聞いてくれるかな?」
ミツキ「も、もちろんっす!」
アゲハ「あ……? イエス?」
ミツキ「い、いえす!いんせくと!」
アゲハ「よろしい。あのね、ミツキ君は、野菜や果物がどうやって果実を実らせるのか、わかってる?」
ミツキ「はあ……、まあ、それぐらいなら……。花の受粉っすよね?」
アゲハ「そういうこと。受粉とはつまり、花粉が飛んで、メシベにくっつくことよね?」
ミツキ「そうっすね」
アゲハ「じゃあ問題。花粉はどうやってメシベに飛んでいくのでしょうか」
ミツキ「そりゃ……、風でしょ」
アゲハ「まあ、それもあるけど……。実際には多くの花粉は、虫さんにくっついて運ばれているのよ」
ミツキ「えっ、そうだったんすか?」
アゲハ「ええ。そして花粉を運んでくれる代表的な虫さん。それがミツバチさんたちってわけ」
ミツキ「それは、知らなかったっす」
アゲハ「すごい大切なことなんだよ? 人間が食べている農作物の多くは、ミツバチさんが居なければ実らないとさえ言われているぐらいなの」
ミツキ「え、まじすか?」
アゲハ「そういうことよ。人類にとっての益虫の中でも、最強の益虫。そう、それは、まさに人類と共に歩む“友“!これからは、野菜を食べるときは、農家さんをはじめ、ミツバチさんたち、引いては、それらのお仕事に従事している方々もはじめ、この地球環境全てに感謝なさい」
ミツキ「す、スケールがでかいっす……」
アゲハ「……発言を許可した覚えはないのだけど」
ミツキ「す、すいませんっす!」
アゲハ「まあ、いいでしょう。さて、甘い物を飲んで休憩も出来たことだし、部活に戻りましょうか」
ミツキ「もう、既に充分すぎるほど、部活をしたような……」
アゲハ「何か言ったかしら」
ミツキ「いえ!何でもないっす!」
アゲハ「よろしい。ミツキ君は、我が門下の一番弟子。その身に、みっちりと仕込んでやらねばね……、う、ウフフ、ウフフフフ……」
ミツキ「あの、今日お腹の調子が悪いので、帰ってもいいでしょうか」
アゲハ「なに? さっきのイチゴオレが当たったとでもいうの? 先輩のなけなしのお小遣いで奢られたイチゴオレで」
ミツキ「いえ、あの……」
アゲハ「さあ、行きましょうか。今日は無事に帰れると思わないことね」
ミツキ「い、イエス、インセクト……。ほんとに胃が痛くなってきたっす……」
アゲハ「まあ、それは大変。大丈夫?」
さすさす
ミツキのお腹をさするアゲハ。
ミツキ「だだだ、大丈夫っす!」
アゲハ「よし!じゃあ部室へ行くわよ!我が友よ!」
がっしと、ミツキの肩に手を回す。
ミツキ「う、うす!」
ミツキ(先輩の身体が当たってんだよな~……。もう、今日はこれでいいか……)




