第93話 ダビデとヨナタン・男の友情かBLか②
黒須の解説は続く。
―「とにかく、ヨナタンは父サウル王の元へ行ってサウル王を説得することにした」
しかし、サウル王は、険しい表情でヨナタンを見つめた。
サウル(ルシファー)―「ならぬ! この期に及んで命乞いなど……わらしが注いだ愛情を踏みちぎりやがって! よく考えろ、ヨナタン……! なぜだ……!! あのダビデは……お前の敵となるかもしれぬ男だぞ!!」
ヨナタン(ミカエル)―「違います。ダビデは“敵”ではありません。父上、あなたの怒りこそが国を危うくしているのです」
サウル(ルシファー)―「何も知らない小童が! うるさいっ! もうこうなったら、お前も殺してやるぅ!」
ヨナタン(ミカエル)―「父上!! わたしの命でダビデが助かるのなら……いつでも、この命をささげましょう」
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圧巻の演技に、生徒たちは唖然とするばかりだった。
「ヨナタン(ミカエル)かっこよすぎ」
「サウル王と息子の対立……エモい」
「イケメン親子w」
「これは、男の友情か? 父と息子の葛藤か?」
ルシファー(現実)―「…………」
黒須の心の声。
(……なんか、ここだけガチなんだよな……ルシファーのやつ)
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―「父親であるサウル王は、息子のヨナタンさえ殺そうとした。
ダニエルを大事にしていた想いと、嫉妬が入り乱れ、サウル王は愛憎の嵐に揉まれて病んでいた。
そんな父親の攻撃を避け、ひとりこっそりと、ヨナタンは必死の思いで宮殿を逃げ出した」
こうして、約束の野原の岩の上で、二人はこっそりと会った。
ヨナタン(ミカエル)―「ダビデ! 会いたかった! 君がどれほどの困難にあっても、僕は君の味方だからね」
―「ヨナタンはダビデに会えない哀しみはあった。だが、それよりダビデを無事に逃したい思いでいっぱいだった」
ダビデ(黒須)―「僕も会いたかった、ヨナタン。ぼくはヨナタンに会えないと、もう、どうやって生きて行けばいいんだ……」
ヨナタン(ミカエル)―「とにかく生きるんだ、ダビデ。君の望むことはなんでもしよう」
ダビデ(黒須)―「じゃあ、僕に愛を示してよ。もし、僕に過ちがあるなら、僕を殺して!」
ヨナタン(ミカエル)―「そんなことは……断じてしない」
ダビデ(黒須)―「ヨナタン……ウッ、ウッ、ウッ、…………」
ヨナタン(ミカエル)―「泣かないで。さ、野原を散歩しよう」
―「二人は野に出て行った。ヨナタンはダビデを自分自身のように愛していたので、その愛ゆえに誓った。」
ヨナタン(ミカエル)―「よく聞いて、明日は新月祭だ。パーティ会場で君の席が空いていれば、父上は疑うだろう。僕が適当に理由をつける。だから、君はあの岩の裏に隠れていろ。そこで僕は、戯れにここに来て、その辺に向けて三本の矢を放つ。そしたら従者にこう言うから。『矢を見つけてこい』って命令する。
僕が『ほら、矢はお前の手前にある。持って来い』と言ったら、出て来て大丈夫だって合図だ。君は安全だ、心配いらない。
だけど、『おい違うぞ、矢はお前のもっと先だ』と、言ったら危険と言う意味だよ。
そしたら、……君は何も言わずにそこを立ち去るんだよ。いいね」
そして、教室はVRで新月祭の翌日に背景が変わった。
―「新月祭の翌日、ヨナタンは従者を連れて、ダビデと約束した時刻に野に出かけた。
ヨナタンは従者に言った」
ヨナタン(ミカエル)―「僕が矢を射るから、走って見つけ出してこい」
―「ヨナタンは従者を越えるように矢を放った。従者がヨナタンの矢の辺りに追い着くと、ヨナタンは叫んだ」
ヨナタン(ミカエル)―「違うだろ!! 矢はお前のもっと先ではないか!……早くしろ! 急げ、立ち止まるな!」
―「従者はさっぱり意味がわからなかった。だが、ヨナタンとダビデはその意味がわかっていた。ヨナタンは武器を従者に渡した」
ヨナタン(ミカエル)―「町に持ち帰ってくれ」
従者―「王子さまは?」
ヨナタン(ミカエル)―「……ちょっと一人にしてくれ」
やがて、従者がいなくなると、ダビデは南側の岩から出てきてヨナタンに飛びついた。
二人とも泣いた。
ヨナタンよりもダビデのほうが激しく号泣した。
ヨナタン(ミカエル)―「安心して行っていいよ。僕と君の間にも、僕と君の子孫の間にも、主がとこしえにおられますように……。僕たち二人は主の名によって、誓い合ったのだから………」
黒須の声は震えていた。
―「ダビデは黙って野を立ち去り、ヨナタンは町に帰った」
使徒たちはしんと静まり、だれも言葉が出なかった。
―「その後、ダビデは密かにサウル王に近づいた。いくらでも命を狙う機会はあった。
だが、それはしなかった。ここがダビデの性格だよな。
この後、ヨナタンは戦いで戦死する。
サウル王も山の上に追い詰められて自害してしまう」
生徒のダニエルが手を挙げた。
「先生、じゃあ、あれっきりダビデとヨナタンは会うことはなかったんですか?」
―「そうだな。生きているうちは、会えなかった。
だが、ダビデが30歳になり王になってから、ヨナタンの5歳の息子をひきとるんだ。
その子は両足が不自由な子だったが、ダビデは自分の子どもたちと同じように育てた。
その子もエルサレムに住み、いつも王の食卓で食事したと書かれてある。
そこから何十年もたって、ダビデが晩年になり、サウル王の側目つながりの子孫から、ヨナタンとサウル王の遺骨を引き取ることになるんだ。そして、サウル王とヨナタンは、墓に埋葬された。
ダビデの心中を思うと、どれほどの哀しみだったか……
ダビデは哀悼の歌を詠んでいる。ほら、もともと竪琴の名手だったから、吟遊詩人的な面もあったんだろう。
♪あなたを思って私は悲しむ。
あぁヨナタン。
女の愛に勝る、驚くべきあなたの愛!」
(サムエル記下1,26)
ルカはぽろぽろ涙をこぼし、ハンカチで鼻を抑えた。
「……やばい……無理……こんなの、耐えられない……」
生徒たち。
「泣いてるルカ先生、可愛い……」
「今日の授業、涙腺壊れる……」
「うわあああああああ!!!」
黒須もついに琥珀色の瞳が潤んでしまった。
「……ミカエル……」
ミカエル(現実)
「だーかーらー、……VRだってば。勝手に感情移入するな、黒須」
「するわバカ」
「は……?」
「言わせんなよ……。……ありがとな、ミカエル」
ミカエルは固まった。
ルカも驚いた。
「…………黒須……先生?」
生徒たち。
「黒須先生がミカエルさんに“ありがとう”言った……神回……」
「マジで二人ってどういう関係?」
「友情尊い……。いや、この二人は薄いと思ったが」
ラストは、サウルとヨナタンを埋葬したダビデの後ろ姿でフェードアウトした。
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ウリエル「以上が、“イスラエル王国最大の友情”です」
教頭は感動して立ち上がり拍手した。
「素晴らしかったですわぁ〜〜!!黒須先生とミカエルさんの友情に涙が止まりません!!」
黒須&ミカエル
「「ありがとうございます。ただVRです」」
ルシファーは、静かに立ち上がった。
「……ヨナタン役は、……悪くなかったな」
ミカエルが意外な顔をした。
「お? 珍しくわたしを褒めたな?」
ルシファーは、照れ隠しに怒って見せた。
「黙れ、天使!!」
ルカがツッコんだ。
「わたしも天使ですけど、ルシファー。……何か、……でも、いい授業だった」
「君は泣きすぎだ……」
「泣いちゃダメなんですか? 黒須先生。酷い」
「別に、ダメじゃねぇよ。授業だからさ」
「ふん、授業なのはわかってます!」
「……君の涙を、他のひとに見られたくない……」
ルカは真っ赤になって、その場に崩れた。
生徒たち。
「恋と友情と歴史が全部きた……」
「今日の授業、永久保存版!!」
「ウリエル先生、これアーカイブ保存してくださーい」
「でも、ルカ先生って、結構あちこちで泣いてません?」
「バカ! 黒須先生のセリフが萌え萌えなのよ!」
その後、この映像は天界で永久保存されたとか。




