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ハルマゲドン始まったってよ ~堕天使教師とマッチングしたのは天使エージェントだった~  作者: 白神ブナ
第三章 VR旧約聖書

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第88話 イスラエルの歴史概要とアンケート

 黒須は社会科準部室で、ため息をついた。


「なんだか、旧約聖書をVR授業するってのは、すごく時間がかかるのな。モーセが終わって、エリコの戦いまでいったら、もうゴールでいいんじゃねーか?」


ルカは反論した。


「ダメ! 言ったでしょ。エリコの戦いからイスラエル王国滅亡までがひとくくりなの。ちゃんとバビロン捕囚までやってよ」


「言われたっけ?」


「言ってないかもしれない」


「だがなー、ここから先は、端折っていい所は端折っていこうよ」


ウリエルが心配した。


「端折ると、ストーリーが続かなくなりません? 生徒たちが混乱しちゃいますよ」


黒須はしばらく考え込んでいた。


「でも無理だ。体力的に続かない……」


ルカがポンと膝を打った。


「そうだ! 先にざっと概要を話しちゃえば? いつもやる予告みたいに短くまとめるの。そして、いくつかのストーリーの中から、おもしろそうな部分だけVRにするの」


「モーセ以外に面白そうな場面ってあるか?」


「あるじゃない。ダビデと巨人ゴリアテとか、ゲームみたいで盛り上がりそうじゃん」


「さすが、先輩っす! それいいっすねー」

「人気のあるシーンだけ作れば、こっちも楽だし」


しかし、黒須はなかなか頷かない。


「俺の授業だぞ。もっと真剣に考えてくれ。人気とか楽でやりたくねーんだ」


「考えてるわよ。真剣よ。あんたのつまらない解説聞いてるよりも、最高のエンターテイメントよ!」


「さすがっす! 先輩。僕も真剣に考えて思いつきましたぁ!」


黒須は、この恋愛CIAが思いつくことは、常識を超えると身をもって知っていた。


「待て、待て、待て! いやな予感しかしないぞー。ちゃんと生徒の事を考えているんだろうな。これだけは言っとく、お前らの趣味で授業スタイルを恋愛とかにするなよ!」


ルカは、冷静かつ淡々と言った。


「もちろんいたしません。黒須先生がざっと概要を説明します。そのあとで、生徒たちに聞くんです。どの部分をVR体験したいか、選んでもらえば、興味を持ってくれると思います」


 ノックの音がして、そこにルシファーが入って来た。


「失礼。今、校長室で話し合ったんだが、次は教頭先生がVR授業参観したいそうだ」


ルカとウリエルは黒須がどういう返事をするのか、全神経を集中して見つめた。

その異様な空気に、ルシファーはドン引きした。


「ど、どうした? なんだか、この部屋の空気、地獄みたいだけど? わたし、何かまずいこと言ったかな……」


黒須は額に手を当てて、ため息をついた。


「わかった。ルカとウリエルの意見を取り入れよう。教頭先生が参観するそうだから、残酷シーンとかは、無しで。生徒たちが見たいシーンが決まってから、教頭先生に参観してもらう」


こうして、次回の授業は生徒たちにアンケートを取ることになった。



 いよいよ、黒須の世界史の授業が始まった。


「モーセの導きで、約束の地カナンを目指して移動してきたイスラエル民族。なんとかカナンの先住民たちを破って、カナンの土地に住めることになった。

イスラエルの民は、12部族に分かれて定住したんだ。

ところが、沿岸部の新たな敵『ペリシテ人』が侵略してきて、いつも戦いうことになる。

旧約聖書のヨシュア記以降ってのは、しょっちゅうペリシテ人という部族が出てくる。

イスラエル民族の敵だから、書き方もさぞ悪いやつみたいに書いてある。

ほら、気が付かないか?」


生徒たちは何も気が付かないようだった。

無反応だ。


「ペリシテ人っていうのは、今のパレスチナ人だ。音が似ているだろう。

ペリシテ人とかガザという地名も出て来る。そこに注意して旧約聖書を読むと、また感じ方が違う。ってか、そんな大昔から仲が悪い民族だったんだと、よくわかる。彼らには彼らの歴史があるということだ」


生徒たちは、ペリシテ人についての解説に引き込まれた。


「で、最初はイスラエルの12部族に王はいなかった。それぞれが地方自治体みたいにくらしていたんだ。

ここから、ざっと歴史の概略を話すぞ。ルカ先生、プリントを配ってくれ」


ルカは生徒たちの前列からプリントを取ってもらえるように、配った。

そのプリントは、歴史の概要に番号がふってあり、一番下にVR体験したい番号を記入するようになっていた。


「これから話す概要の中から、VR授業でやってほしいものを選ぶことー。いいかー、説明するから、ちゃんと聞けよ。」


プリントに目を通しながら、生徒たちは黒須の話す内容を待っていた。


①ペリシテ人の侵略に対抗するため、預言者サムエルは12部族をまとめてサウルを初代王に任命しました。


②イスラエル軍は初代王のもとで多くの勝利を収めました。しかし、サウル王は油断して神との約束を守らなかったため、神だけでなく預言者サムエルからも見放されてしまいます。その結果、サウル王は気分が沈みがちになりました。


③羊飼いであったダビデは、ある戦闘において敵の指導者ゴリアテを討伐した。この出来事により、彼は社会的・歴史的に著名な人物となった。 それはもう大人気! 古代のアイドル爆誕だ。


④サウル王は、ダビデに対する嫉妬心からその生命を脅かし、継続的に追跡した。ダビデはイスラエル各地を転々と移動し、逃亡生活を送った。


⑤サウル王はペリシテ人との戦争で敗北し、自ら命を絶ちました。その後、民衆の支持を得てダビデが王位に就き、長年の敵であったペリシテ人の脅威を抑えることに成功し、イスラエルを一つの統一国家としてまとめ上げました。


⑥ダビデ王は、古代イスラエル王国の著名な統治者でしたが、その晩年には重大な困難に直面しました。彼はバト・シェバとの関係によって宗教的非難を受け、また自身の息子たちによる反乱にも対応せざるを得ませんでした。最終的に、彼はその統治権をソロモンへ継承しました。


⑦賢王ソロモンは知性的な政治を行い、巨大神殿も完成させる。ただ、異国からの妻をたくさん娶り、妻たちの異教に染まり、神の怒りを買う」


⑧ソロモンの死後、王国は神の怒りによりイスラエル(北)とユダ(南)に分裂した。


⑨イスラエルは分裂し、北はアッシリア、南はバビロンによって滅ぼされました。南のユダ族はバビロンに捕囚されました。


⑩バビロンがペルシャに滅ぼされると、捕囚だったユダ族はイェルサレムに帰還しました。しかし、その後ローマの侵攻で再び追放され、民族は各地に離散しました。


「ざっと言うとこんなストーリーだ。 この中でVR授業するとしたら、③のダビデかなぁ。イスラエルの国旗がダビデの星と呼ばれているから、いかに人気者だったかわかるだろ」


ルカは、黒須を注意した。


「誘導しないで。生徒たちが自分で選ぶようにしないと意味ないです」


「あ、ごめん」


生徒たちは怒られる黒須を見てクスクス笑っていた。


「始まった。あれで、本当は仲がいいんだよ」

「仲がいいなんてもんじゃないよ。隠れラブだろ」

「だよなー。大人のラブって見てみたい」

「ってことは、⑥番? やってくれるかなー。際どいじゃん」

「僕たちが希望すれば断れないだろ。だってどうせVRだろ」

「じゃ、わたしも⑥番」

「③も捨てがたいよねー。③、④、⑤、⑥って、一連の流れで見たいわ」

「よし、みんなそこに集中して番号書こうぜ」



放課後の社会科準備室。

生徒たちのアンケート結果を集計したをウリエルは、苦笑いした。


「やっぱ、そーっすよねー」


黒須はアンケート結果に疑いを持った。


「これ、本当に公平な集計か? なんか、ダビデに偏ってない?」


「黒須先生が、ダビデがいいって最初に洗脳したからでしょ」


ルカが怒ると、黒須は小さくなった。


「すみません。くっ、怒るルカってかわいいよな」


ウリエルはいたずらっぽい目で、何かを考えていた。


「これさぁ、普通にVRしてもつまんないっすよ。ちょっと僕にまかせてもらえませんか?」


「ウリエル……、おかしなことしたら承知しないからね」


「先輩、大丈夫っす。ちゃんとAIを使って、教育上最も適した内容で作ります!!」


そうは言うものの、黒須は不安でしかない。


「マジで、健全なVRにしてくれよ。俺をクビにするなよ」



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