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ハルマゲドン始まったってよ ~堕天使教師とマッチングしたのは天使エージェントだった~  作者: 白神ブナ
第三章 VR旧約聖書

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第83話 ルカの気持ちダダ洩れの神回

****


 VRの黒須が海の上空からモーセたちを見下ろしていた時。

その瞬間……、

突然、視界にノイズが走った。


ウリエルの悲鳴が聞こえる。


「や、やばい……! 本物の記録データに接続されたまま……!」


「おい!! ウリエル。またか!? またそれか!!」


次の瞬間、現代の教室からの声が “同時再生” されて聞こえてきた。


生徒たちはザワザワとおしゃべりしていた。


「すご……海、本当に割れてる……」

「黒須先生、これ本物なんですか?」

「黒須先生って、当時いたんですか?」

「本物記録データって、なんすかぁー?」


黒須は咳払いした。


「いた、とは言ってねぇよ!!」


……しかし、否定してもこの映像では、まるで説得力ゼロだった。


ルカは、VRの黒須と本物の黒須の見分けがつかない。


「……ちょっと待ちなさいよ、黒須先生。あんた、こんな危ないところで何やってんのよ」


声のトーンは、いつも通り強気。

でも、その裏にあるのは、焦りと心配だった。


現代の黒須は頭を掻きながら、言い訳した。


「えへへへへ……、いや、あの時は……仕事で……」



「“仕事で”? 仕事で、こんな案件引き受けるなんてどういうつもり? 海の上を気楽に飛ぶ仕事じゃないでしょ! いくら堕天使でも、命がけの現場に単独で突っ込む!? 馬鹿なの!?」


黒須は、ルカに罵られるのは好きだが、生徒たちの手前、さすがに喜んでばかりいられない。


「君、天使だろ? もっと優しく言えないのか?」


「優しくしてほしいなら、もっと大事に扱いなさいよ、自分の命を!! あんたが命の書から消えたら、わたしも消えるからね!」


最後の一言だけ、声が震えていた。


「……ルカ?」


「な、なによ。心配なんかしてないからね。勘違いしないでよ。ただ、あんたが勝手に死んだら……。そう、……任務報告書を書くのが面倒なだけだからっ!」


これは明らかに嘘だ。

その嘘の付き方があまりに不器用すぎて、生徒たちがざわつき始めた。


生徒たちは、VRと現代の歪みで生じた事故を喜んで見ていた。


「え、ルカ先生って、黒須先生のことを……」

「ツンデレだ……!」

「ギャップ萌え天使だ……!」


ルカは生徒たちを叱った。


「うるっさい!! 黙れ!! これ以上騒いだ生徒は、反省文とレポート提出ね!!」


ルカは、耳まで真っ赤になっていた。


一番の問題児、黒須は、授業中にに自分にでツッコミを入れていた。


(俺は天使にも悪魔にも慣れすぎて、こういう時どう反応すればいいのかわからない。

……なんだよ。そんな顔で心配されると、俺のほうが弱くなるだろうが……)


だが、口に出た言葉で、ルカをからかってしまった。


「ま、俺のこと好きなんだろ」


「はぁ!? し、ししし……しばくわよ!!!」


ルカが、怒ってる。

めちゃくちゃ怒ってる。

でもその怒りは……、黒須の命が心配で震えている怒りだ。


ウリエルは、小声でルカに忠告した。


「……ルカ先輩、動揺で羽ばたきのリズム乱れてますよ。いまは、翼をしまっておいてください」


「うるさい!! 見ないで!!」


生徒たちは、ルカの様子に注目した。


「かわいい……」

「ツンデレ天使が黒須先生にデレた……!」


ところで、お忘れでないだろうか。

VRの映像はまだ続いている。


****


 水の壁が崩れ、

エジプト兵が飲まれる瞬間……、ルカはそっと呟いた。


「……黒須先生。あんた、こんな地獄みたいな場面を見てきたのに……まだ人間守ってんの?」


「……さぁな。俺が守りてぇと思ったから、やってるだけだ」


「……馬鹿。本当に、どうしようもなく優しい……。そういうバカは……嫌い……じゃないわよ」


小さく、小さく。

本人以外には聞こえないくらいの本音だった。


だが、……VRは拾った。

教室全体にその音声が流れたのだ。


生徒たちは歓声を上げた。


「ヒュー―――!」


「!?!?!? ルカ先生が黒須先生のこと“嫌いじゃない”って言ったー!!!」

「録音しよ!」

「神回!!」


ルカは慌てた。


「きやああああああああああああああ!!!! ウリエル!! 全部消しなさい!! 今すぐ!!」


ウリエルは両手を挙げて降参した。


「む、無理です先輩……!! 天界データと同期してしまって……!!」


「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



 黒須は深いため息をついた。


「……フリーランスってのはよ、過去の案件まで暴かれて大変だな」


でも、心のどこかで少しだけ嬉しかった。


あのツンデレ天使に、心配されていたという事実が……

心の奥にじんわりと温かく残った。




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