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ハルマゲドン始まったってよ ~堕天使教師とマッチングしたのは天使エージェントだった~  作者: 白神ブナ
第三章 VR旧約聖書

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第80話 十の災い・早送りモード

****


 世界史VR授業。

旧約聖書、出エジプト記。


エジプトに着いたモーセは、イスラエルの民たちが休憩している所にやって来て、ぼそぼそと呼びかけた。


―「あのさ……、俺、神にあったんだけどさ。エジプトを出て約束の地に帰ろ―よ……」


しかし、モーセの言葉に耳を貸す者は、誰一人いない。

そこで、兄のアロンが大きな声で選挙運動の如く、力説し始めた。


―「お前ら、それでもイスラエルの民か!!! 立ち上がれよ! 俺たちはイスラエルの民、神に選ばれし民だということ思い出せ! 我が同朋よ、聞いてくれ! わたしは聖なる山で神の言葉を聞いた。我々は奴隷などするべき民族ではない。すぐにエジプトを出てよう! そして約束の地、カナンに帰ろうではないかーーっ!」


イスラエルの民たちは歓声を上げた。


「うおおおおーーー! そうだ! そうだ!」


だが、問題はエジプトの王だった。

今までエジプトの繁栄を支えて来た奴隷たち、それがイスラエルの民だった。

「わたしたち、カナンに帰りますわ」と言ったところで、

「ほう、そうか。ご苦労さん」とはならない。

何十万という労働力の喪失を、認めるわけがなかった。


しかし、モーセがボソボソと言った言葉を、アロンは盛大にかます。


―「大人しく諦めた方が賢明だぞ、王よ。わたしの言うことを聴いておいた方がいい。そうしないとエジプトは大きな災厄に見舞われるであろう……」


―「ばかな! へへ、出来るもんならやってみろ」


年取ったモーセなんか、その時代の王から見たら、どこの馬の骨ともわからない男だ。

そんな奴の言う事なんか聞くわけがない。

(アロンはもっと年寄りだったけどね)


****


ウリエルは、パソコン画面を睨みながら説明した。


「ここからは、“旧約聖書の中でも最も劇的な出来事のひとつ”です。安全のため視覚効果は少し控えめにしますね。黒須先生」


「頼むから控えめにしろよ。ガチすぎると保健室が混むからな」


****


 ここから、「十の災い」が始まった。


■VR ① 血の災い

ナイル川が血の色に変わった。

生徒たちは気味悪がって、悲鳴をあげた。


「うわああああ!」

「本当に赤い!!」


黒須はさすがに落ち着いていた。


「落ち着け、ただのVRだ。嗅覚はオフにしとけよ」


ルカは冷静に解説した。


「これ、ファラオへの最初の警告です」


「最初って? ルカ先生、まだ続くんですか?」


「ええ、でもVRで控えめに映像化するから大丈夫よ。もし気分が悪くなったら、遠慮なく手を挙げてねー」


■VR ② カエルの大発生


ウリエルは小声で、黒須に伝えた。


「カエルの量、少し減らします……」


「当たり前だ。増やすなよ!? 今“減らす”って言ったよな!?」


怒鳴っている黒須を、イワンが指さした。


「黒須先生の肩にも……、乗ってる!」


ルカは遠い目で言った。


「黒須先生、……カエルにもモテるんだ(棒読み)」


■VR ③〜⑨ は災いラッシュだ。

ここは、生徒たちの健康を守ることを優先して、早送りモードで映像は流れた。


③ブヨの群れ

 神がモーセに言った。

―「杖で土の塵を打ちなさい」

 モーセは言われた通りにすると、塵がブヨになって、ブヨの大群がエジプト全土を覆った。

それでも、王は降参しなかった。


④アブの災い

神はモーセに言った。

 ―「『早くイスラエルの民を去らせよ』と王に言いなさい。去らせないならば、国中にアブを送る」

王はその言葉をまるで無視したので、アブが国中に溢れた。


⑤疫病で倒れる家畜

神がモーセに言った。

―「王に『早くイスラエルの民を去らせよ』と言いなさい。去らせないなら、恐ろしい疫病を野に放ち、エジプト中の家畜、馬、ロバ、ラクダ、牛、羊が死ぬだろう」

疫病は国中に広がった。


⑥皮膚病の苦しみ

神は言った。

―「かまどのすすを両手一杯とって、それを王の前で天に向かって蒔くがよい」

エジプトの国中に腫れ物が流行った。

皮膚が赤くただれ、膿が出た。


⑦火を伴う雹

神はモーセに言った。

―「天に手を差し伸べ、エジプト全土にひょうを降らせなさい」

これで畑は全滅した。


⑧空を覆うイナゴ

神はモーセに言った。

―「手をエジプトの地に差し伸べ、イナゴを呼び寄せよ」

無数のイナゴがエジプトを襲い、あらゆる草、雹の被害を免れたあらゆる作物を食い尽くしてしまった。


⑨三日間の闇

神はモーセに言った。

―「手を天に向かって差し伸べよ。エジプトの空から光がなくなるであろう」

モーセがそうすると、エジプト全土を闇が覆った。


生徒たちは震えていた。


「これ、現実で起きたとか怖すぎ……」

「ファラオも意地を張りすぎじゃない?」

「意地の張り合いとしか思えない」


黒須は解説を加えた。


「これは、エジプト人が信仰する“太陽神ラー”をイスラエル民族の神ヤハウェが打ち倒した、という解釈をする学者もいる。まあ、どうなんだろうねぇ……。そんなのどっちでもいいよな」


 マルが質問した。


「あれ? 先生、まだ災いは九個ですけど? 十の災いって言ってませんでした?」


「ああ、そうだな。ここからは、ちょっとダークサイドな話になるから、途中でヘッドセット外してもいいことにする。観たくない者はあとで聖書を読んでおけ」


マルとイワンは、ダニエルに小声で話しかけた。


「どうする? ダークサイドだって。ダニエル、何か知ってる?」


「うん、知ってるよ。女の子は、そう、マリちゃんは見ない方がいいよ」


マリは毅然とした態度で返した。


「リケジョを舐めるんじゃないわよ! こちとらぁ、日々カエルの解剖しているんだからね。ダークサイド系のリケジョとは、このあたしのことよ!」


男子生徒たちは、マリに震えた。


「わかった……、ここでタトゥー出さないでね」


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