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ハルマゲドン始まったってよ ~堕天使教師とマッチングしたのは天使エージェントだった~  作者: 白神ブナ
第三章 VR旧約聖書

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第79話 イスラエルの民を導くのだぞっ、て何人よ?

****


 結婚してからのモーセは、ヤンキーを卒業した。

結婚相手が良かったのか、殺人に対する悔恨か、はたまた、エジプトから逃げて環境が変わったせいか、それはわからない。

子どももできて、幸せな結婚生活を送っていた。


黒須は、旧約聖書のモーセが、神と出会うシーンを解説した。


「モーセが、羊を連れて聖なる山までやって来たときのことだ。モーセは燃え上がる柴を目撃する。聖書にはよく燃え上がる柴って出て来るけど、何か意味あるのかな、ルカ先生」


「え? うーん……、天界の演出パターンって単純なのよ。熱くないLEDライトで演出するんだけど、昔の人には燃えているように見えたんでしょ」


「なんか……、聞かなきゃよかった」


モーセは、燃えている柴を見つけて、何だろうと近づいてみた。

すると、雷鳴と共に神の声が聞こえて来た。


―「モーセよ、モーセ。わたしはあなたの先祖アブラハム、イサク、ヤコブの神である。

ってか、まず靴を脱げー。ここは神聖な場所なのだー」


****


 ウリエルが悲鳴を上げた。


「うーーん、神の声って、負荷がとんでもないっす! サーバーぶっ飛びそう!」


****


 VR画面のモーセは驚き、急いで靴を脱いだ。


―「モーセよ。イスラエルの民を率いてエジプトを脱出し、約束の地カナンを目指せー」


約束の地カナンとは、今のパレスチナだ。


―「は? 俺ですか? いやいやいや、無理っすよー。なんで俺なんすか」


―「心配することはない。わたしがついている。あなたを遣わしたのがわたしだという証拠に、必ずあなたとともにいよう」


―「いやいや、いやいや、心配とかそういう問題じゃなくて……、イスラエル人のところへ行って、先祖の神に遣わされて来たと言ったって、誰も信じてくれませんって。先祖の神様って何?」


―「わたしは『わたしはある』という者だ」


―「え、それが答えですか?」


―「さあ、エジプトに戻れー。そして皆を率いてエジプトを出て、約束の地カナンを目指すのじゃー」


―「えええーー? でも、あの人たちは俺を信じてくれませんよ。俺の言うことなど聞くはずがないって。『神がおまえに現れたって? おもしれ―冗談だな』と言われてお終いですよ」


―「モーセ、お前が今、手にしているのは何か」


―「羊飼いの杖ですけど?」


―「地面に投げてみなさい」


そう言われて杖を投げると、たちまち蛇に変わった。

モーセは驚いて、思わず後ろに身を引いた。

VRで見ていた女生徒たちも悲鳴を上げて後退りした。

神は命じた。


―「蛇のしっぽをつかみなさい」


―「え、大丈夫? 噛まれない?」


言われたとおりにすると、蛇は手の中で、また杖に戻った。


―「みなの前で、今と同じことをして見せるのだ。そうすれば、お前を信じるだろう。そして、先祖アブラハム、イサク、ヤコブの神が、ほんとうにお前に現れたのだと納得するだろう」


―「ホントに?」


―「心配ならば、お前の兄のアロンが説得力ある。お前が言葉をアロンに言わせて、民衆を団結させるのじゃー」


―「えーっと。腹話術的な?」


―「ひそひそ女将でもなんでもいい。アロンに喋らせろ」


モーセは山を下りたあと、妻の父にこの出来事を話した。


―「お義父さん、申し訳ありません。ってなわけで、エジプトに帰らないといけなくなりました。どうかエジプトにいる仲間の元に帰らせてください」


こうして、モーセは「奇跡の杖」を握りしめ、妻と子を連れてエジプトに向かった。


だが、エジプトにいるイスラエルの民は、成人男性だけで約 60 万人もいた。

女性、子ども、高齢者を合わせると実際の総人口は200万人前後……。


****


 黒須はここでウリエルに確認した。


「おい、ウリエル。出エジプト時にエジプトを脱出したイスラエルの民は、何人いた?」


「“聖書そのままの数字”を視覚化しまか? 成人男性 60 万人と記録されているので、記載通りですと200万人ですけど」


生徒たちは驚きの声をあげた。


「え、200万人!?そんなに!?」


黒須はざわつく生徒たちを、制した。


「落ち着けー! 聖書の数字は“大きく書く”のが伝統なんだよ。実際は数万人くらいだったんじゃねぇか? 荒野で200万人もいたらトイレの問題が地獄だろ」


ルカが説明に入った。


「出発する側だけの問題じゃないわ。最低でも2万~5万人の労働力がエジプトを出て行く事って、エジプトにとっても大問題なの。これだけの人口が流出したら、エジプトの王は納得しないでしょ? 労働力の流出よ。要するに、モーセの願いは、そう簡単に王に聞き入れられなかった。ここがポイントでーす」


黒須は、ルカに軽く目でサインを送った。


(サンキュー)


だが、ルカには通じていなかった。


(まったくもう! ……目がショボショボしてるのか。ドライアイ? あ、老眼か)


このすれ違いに気づいていたのは、ルシファーとウリエルだけだ。

二人はうつむきながら、肩を震わせ、笑いをこらえていた。



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