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ハルマゲドン始まったってよ ~堕天使教師とマッチングしたのは天使エージェントだった~  作者: 白神ブナ
第三章 VR旧約聖書

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第71話 失敗だったんで一旦滅ぼすわby神

 生徒たちは乾いた土地に立っていた。

ずっと立ちっぱなしの授業もつらいだろうと、ルカは黒須に声をかけた。


「黒須先生、一旦、生徒たちを座らせてもいいですか?」


「ああ、そうだな。みんなゆっくり腰を降ろせ。ウリエル、悪いが生徒たちが椅子に座れるようにできるか?」


「大丈夫っすよー。みんな立っているようで、実は机に座ってますから」


「あら、そうなの……、先に言ってよウリエル」


黒須は荒野で授業を続けた。


「ウリエル、残酷なシーンは出ないようにしてあるだろな」


「はい、カインとアベルのことなら、映像にしてませーん」


それを聞くと、ルカは黒須にオッケーサインを送った。


「次、アダムとイブの続きな。アダムとイブには、二人の息子がいて、カインとアベルと言うんだ。この兄弟は喧嘩しちゃって、カインがアベルを殺しちゃう。これが最初の殺人と言いわけだ」


生徒たちは映像がないと好き勝手なことを言い始めた。


「どうせ、神話だろ? 意外と神話って残酷だよな」

「神話と言っても、旧約聖書よ。事実だったんじゃない?」

「せっかく作った人間が、約束破って楽園を追放され、今度は殺人かよ。作った神様もそりゃ嫌になっただろうよ」


黒須は生徒たちの声を拾った。


「そうだよな。せっかく作ってもらったのに、人間は神に逆らいまくっているしょうもない存在なんだよ。だんだん、この人類がコントロール不能なるんだ。そんな馬鹿どもが世界中に増えちゃったんで、神は反省したわけだ。『わたしが作った作品は失敗だった。』ってな」


生徒たちは不安な顔で黒須を見つめた。


「神様が反省した? 失敗だったって?」

「嫌な予感しかしないわ」


黒須は琥珀色の目を輝かせて続けた。


「神はこう言ったんだ。さて、何と言ったと思う?」


「不具合を見つけて今すぐ直そう」

「出来の悪い子たち集めて、教育しなおそう」

「設計図のミスを見つけて書き直しだ!」


「ブブーーーッ! ハズレだ。正解はこうだ。

『失敗だったんで、一旦滅ぼすわ』BY 神

そんなわけで、大洪水を起こしてすべてをチャラにすることにしたんだ」


生徒たちが言った。

「え? チャラって? 嘘」

「でも、すべてじゃないよね。黒須先生」

「いい行いをした人たちは救われるんですよね」


「さあ、どうかな? だといいがな。では、実際はどうだったのか、見てみよう。ウリエル、このシーンは昔の俺が出て来るよな」


「そうっすね」


「じゃ、俺はちょっと休んでる。ルカ、君が生徒たちを見ててくれ。俺はここで寝てるわ」


「ん? どういう意味?」


ルカが戸惑っていると、ルシファーがそっと教えた。


「黒須の過去がバレるのが嫌なんだよ。あいつがなぜ日本に居続けているのか、それが分かるシーンだ。君に見られるのが恥ずかしいんだろ。こんな機会はめったにないから、見といたほうがいいよ。ルカちゃん」


めずらしくルシファーが真面目な顔で言うので、ルカはとりあえず生徒の安全面を引き受けて頷いた。



 画面は大勢の人々と、動物たちが集まっている風景になった。

奥の方で大きな木製の箱舟が出来上がっている。


VRの若い黒須が、動物たちを数えて管理している男のところにやって来た。


―「やあ、久しぶりだな、ノア」


ルカが驚いた。

 

「ノアですって? この冴えないおじさんがノアだっていうの? 知り合いだったの? 黒須先生」


ウリエルがルカに説明した。


「先輩、違いますよ。大昔の黒須さんは、堕天使なりたててで、完全に天使の癖がとれてないんですよ。だから、人間に近い存在だったんっす。天界ってご存じかと思いますが、階級世界でしょ? ずーーーっと大昔からそういうヒエラルキーがあったんっす。黒須さんはまだ下級堕天使です。平社員みたいなもんです。今も変わってませんが……」


「それならわかる。じゃあ、ミカエル上官もガブリエルは昔から上級天使?」


「いいえ、実は……。大天使ってのはヒエラルキーの下級天使なんです。上には上があって、……。上に行くば行くほど、目と翼だけになったりして、形は人間離れしていきます」


「きもっ! 上級になりたくないわ」


「先輩、あのそろそろ授業を……、あのー、VR授業、続けてもいいですか?」


「ああ、かまわない。続けてもらおうじゃないの、あのバカがここでどんなことをしでかしたのか。とくと拝見するわ」


ルカの怒声にルシファーは振り向き、にこりと笑った。


「ルカちゃん、わたしのことも叱ってね。黒須だけ叱るなんてずるい……」


「……ウリエル、早く続けろ」



 VRの黒須は、ノアに何をしているのか聞いた。


―「これ、何なんだ。デカい船作って動物まで乗せて……」


―「聞いたところによれば、……神は怒っているらしい。人間を一掃するようだ。……嵐で、雨が降り続くんだと」


―「全員?」


―「うん、まあ……、全員の予定だが、世界って広いんだろ? おそらくここの人間だけだろね。雨を降らすと言っても全体じゃないと思うけど」


ー「……、まさか地球全部じゃないだろ。それでも、ここの人間って相当の数がいるだろ」


ー「ああ、ここの人間とは言ったが、……俺と、船のあそこにいる俺の家族。妻と子供たちは生き残るんだ」


ー「……。は? でも、他は全員溺れさせる?」


ノアは黙ってうなずいた。

黒須たちの側を、羊を追って、何も知らない子供たちが笑いながら通り過ぎていった。


ー「子供も? 子供も溺れさせるのか?」


ノアは、黒須とは目を合わせずに頷いた。


ー「……うん」


黒須は神の残忍さにあきれてしまった。


ー「無慈悲な……、悪魔だってそこまではしないぞ」


ー「ああ、でも、これが終わったら、神は新しい何かを作るらしい。それに、二度と溺れさせないという約束の証に虹をかけるそうだ。素晴らしい計画だろ」


ー「お優しいな……」


ー「神を判断しないでくれ、黒須さん。神の計画は……」


ー「言葉にできないし、理解を越えていると言う気か?」


ー「そう、……理解不能。我々にはわからない。君も、大人しく神の御心のままにしていれば、天界に戻れる日も近い」


「天界? 神の御心? なにそれ。今さら遅い」


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