表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハルマゲドン始まったってよ ~堕天使教師とマッチングしたのは天使エージェントだった~  作者: 白神ブナ
第二章 拗らせルシファー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/92

第61話 求人広告を見て来ました

 恋愛CIAオフィス。

一旦都落ちしても、赤坂という場所からは離れなかった。

今は、タワービルではなく、雑居ビルの一室を借りている。


少しでも来客数を増やすため、ガラスドアは常に開けっ放しにすることにした。

その代わり、受付にバイトの女の子を一人採用した。

そんな目立たないオフィスに、場違いなほど目立つ男が立っていた。


黒いスーツ。

無駄に整った顔立ち。

妙に余裕のある微笑み。


受付の女性が、思わず聞き返した。


「失礼ですが……ご予約は?」


「ない」


即答だった。


「ただ、求人広告を見て来ただけだよ」


挿絵(By みてみん)


その声が狭いオフィスの奥まで聞こえてきた。

奥のオフィスでコーヒーを飲んでいたルカは、ぴたりと動きを止めた。


「……ん?」


ゆっくりと顔を上げた。


視線の先には、見覚えのある妖しさてんこ盛りのイケメンがひとり。


「……ルシファー?」


ルシファーは、にこやかに手を振った。


「やあ。奇遇だね」


「奇遇なわけあるか!! 今、求人広告を見て来たと言ってた!」


ルカは立ち上がり、ルシファーのいる所まで、ハイヒールの靴音を鳴らして近づいた。


「ここ、何の場所かわかってる?」


「もちろん。恋愛CIA。人間の恋愛を分析し、時に介入し、時に破壊し、時に成就させる機関」


「そこまで理解してなくていいから。把握しすぎでしょ! 裏の顏まで把握しなくていい」


そのとき、横からウリエルが顔を出した。


「あ、先輩。その人、応募者っす」


「……は? ウリエル、ふざけてるの?」


ウリエルは涼しい顔で、タブレットの画面を指さした。


「求人広告、出しました」


「誰の許可で?」


「先輩が“人手不足”って言ってたんで……、先回りしたんですけど、ダメでした?」


「そういう意味じゃない!! ここは天界の出張所東京支部なんだから、地獄側の堕天使は入っちゃアウトでしょ」


「あれ? でも、黒須さんも堕天使ですよね。黒須さんは良くてルシファさんはダメなんですか? とりあえず、面接だけでもしたらいいのに。採用か不採用は、また別の話だし」


「ウリエル……、いつから雄弁になった」


「はい、ルカ先輩に鍛えられましたっ!」


ルカとウリエルが話しているあいだじゅう、ルシファーは、興味深そうに室内を見回していた。


「なるほど。……悪くない職場だ。ちょっと建物は古いけど」


同じ堕天使でも、黒須とルシファーではタイプが違う。

ルカは、ルシファーを警戒した。


「……何が目的?」


ルカが睨むと、ルシファーは、肩をすくめた。


「いやいや、純粋な転職活動さ」


「嘘臭い」


「最近、教育現場にも興味が湧いてね」


「……」


(出た。絶対ろくな理由じゃない)


ウリエルは、受付でずっと立っているルシファーを中に入れた。


「じゃ、とりあえず面接っすね! こちらにどうぞ」


応接セットが置いてある場所に、ルシファーを案内した。


「履歴書、あります?」


「ない」


「えっと、一応、履歴書かエントリーシートがないと、応募になりませんが……」


「そうか。それは失念した。だが、自己PRならできる」


ルカは、向かい側のソファーに座って、ルシファーににらみを利かせた。


「いらない」


ウリエルは、冷や汗をながしながら、ルカの機嫌を損ねないように言葉を選んだ。


「聞くだけ聞きましょう! このまま帰すのは簡単ですが、こういう案件に対処するのも、我々の仕事ですから……」


こうして、なし崩し的に面接が始まった。



 面接① まずは基本情報


ルカは手帳を片手に、ルシファーと向き合った。


「……名前」


「ルシファー」


「却下」


「え、名前で却下ってありなの? じゃあ、“ルシ”でいいよ」


「よくない」


ウリエルは引きつった笑顔でその場を繋いだ。


「年齢は?」


「……概念的には、君たちの想像の外だ」


「了解っす」


ウリエルはノートパソコンに、年齢不詳と打ち込んだ。

「住所は?」


「地獄の第7層だったが、君たちに破壊された」


「住所不定」


ルカは、形だけの面接ならいいかと思い、しょうがなく経歴を聞いた。


「前職は?」


「天界管理職」


「……それは、かなり大昔ですよね。初期の職歴ね。そこまで遡らなくていい。直近で」


「あえて言うなら、フリーランスです。主に地獄側と業務提携あります」


「もっとやめて」



 面接② 地雷が埋め込まれた志望動機


ルカは、核心をついた。


「……で、なぜ恋愛CIAに?」


ルシファーは、ほんの一瞬だけ間を置いた。


「……君がいるから」


オフィスは沈黙に包まれた。


何か言おうとしたウリエル。


「……っす」


ルカは容赦なく結果を出した。


「不採用」


即答すぎた。


「ルカちゃーん、今のは冗談だよ」


ルシファーは、いつもの余裕の笑みを浮かべた。


「正直に言うとだね……、君が“ここで何をしているのか”が気になったんだ。恋愛を“管理”するとは、実に興味深い」


ルカは、よく知っていた。

ルシファーがよく喋る時は、必ず裏があると。


「……」


(半分本音で、半分逃げたわね。冗談をいう時、鼻を膨らませた。本当の理由を隠している証拠だわ。この男、自覚がない分、タチが悪いわ)


挿絵(By みてみん)


 面接③ 適性テスト


ウリエルは、タブレットを出してきて、適性テストを始めた。


「じゃあ、仮想ケースっす。AさんとBさんが両想いだけど、すれ違ってる場合、どうします?」


ルシファーは鼻で笑って、自信満々に答えた。


「簡単だ。一度、徹底的に誤解させる」


ルカは聞き返した。


「……は?」


「傷つけ、怒らせ、それでも離れないなら本物だ」


ルカは叫んだ。


「不合格!!」


ウリエルは、冷静に分析した。


「でも……理論は一貫してますね。確かに、そういうピンチを乗り越えてゴールイン……、理にかなっているっす」


ルシファーは、もう鼻高々だ。


「そうだよ、ウリエルくん。恋愛とは、試練だろう? ウリエル君の目の前にいいお手本がいるじゃないか。ルカちゃん、君だって、そうやって選んだ……だろ?」


ルカは、自分の事を言われると、言い返せなかった。


「……っ」


一瞬、言葉に詰まった。


(この人、余計なところだけ鋭い)



気が付くと、時計はもう夕方の時間を指していた。

オフィスの窓の外が、オレンジ色に染まり始めた。


そのとき……、玄関ドアが開いた。


「……あ?」


ルカにとって、安心する聞き慣れた声が聞こえた。

黒須だった。


学校帰りに赤坂のオフィスに立ち寄ったのだった。

ネクタイを緩め、紙袋を下げている。


「ルカ、忘れ物……」


黒須の視線が、止まった。


「……」


ルシファーと黒須は、目が合った。

空気が、一気に冷える。

バッチバチの視線をお互い飛ばしあった。

ルシファーは、にやりと笑った。


「やあ、黒須。同じ職場になるかもしれないね」


「……何の話だ」


ルカは、書類をまとめながらファイルに閉じた。


「まだ何も決まってないわ!!」


ウリエルが、馬鹿正直に黒須に報告した。


「只今、面接中っす!」


「……はぁ?」


夕焼けの赤坂で、新たな地獄が始まろうとしていた。


宣伝用画像

挿絵(By みてみん)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ