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ハルマゲドン始まったってよ ~堕天使教師とマッチングしたのは天使エージェントだった~  作者: 白神ブナ
第二章 拗らせルシファー

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第60話 ミカエルとの非公式面談

 地獄は、婚活フェスの後処理中だったが、ルシファーはサタンに内緒で、仕事を抜け出した。

サタンはルシファーがしょっちゅう仕事を抜け出すことを知っている。

なぜなら、仕事をさぼって何処かへ行くのは、悪魔の本業の一部だからだ。

ルシファーほど高位の堕天使なら、ある程度黙認されていた。


挿絵(By みてみん)


ルシファーが向かったのは、地獄の裏ルート。

誰もいない地下通路を歩いていた。

ある部屋の前に立つと、左右に誰かいないか確認。

素早く、薄暗い図書室の中に入った。

奥に進み、ある本棚を押すと、青白い炎に照らされた扉が現れた。

これは、天界への古い転送門だった。

地獄でも、この転送門の存在を知っている者はサタンとルシファーしかいない。


 眩い光に包まれたかと思うと、ふっと光が和らいだ。

うっすらと目を開けると、約束の時間より早く相手は待ち合わせ場所に来ていた。



「……久しいねえ、ルシファー」


大天使ミカエルが、天界の誰も通らない渡り廊下で手を振った。


「ミカエル、悪いね。待たせたかな」


「いや、わたしも今来たばかりだ」


そう言いながら、ミカエルは読みかけの本を閉じた。


「フフフ、相変わらず嘘が下手だな。その本、電話帳じゃないか。そんなの読んで面白いか?」


「ああ、これか。まあ、最近の教会の説教よりは面白い」


「罰当たりなやつめ」


いつもミカエルは、ルシファーを責めない。

天界からルシファーを堕とした張本人がミカエルだが、そのことで若干自分を責めていた。

本当は、ルシファーとは旧知の仲だ。

だからこそ、ルシファーのすべてを見抜いていた。


「また、面倒なことを始めたようだな。地獄で婚活とは……君らしい」


「ああ、それか? 婚活フェスなら、君の部下に破壊されて終わったよ」


「ほう、ルカが?……で? わたしに会いに来るとは……今度は“何を壊したいんだ?」


「いや、いや、壊されたのはわたしの方。壊したは君の部下。その子が欲しい」


「そんな用事で、わたしを呼び出したのか。花火大会で見ただろう。ルカはそっち側の堕天使、黒須に夢中だ。しかも神の恩赦付き。わたしごときでどうにかなる話じゃない」


「……知っている」


挿絵(By みてみん)


「それでも、彼女が欲しいのか? それでわたしを呼んだ? ……ったく、幼稚だな」


「彼女が欲しい? はは……まさか。そんな安っぽい感情じゃないよ」


「いやいや、もうこの時点でじゅうぶん怪しいが……」


「ただ、気になるだけだ。黒須の隣で、あんな顔をする天使は、初めて見た。それに……

あの女、わたしの言葉を一つも信じなかった」


ルシファーの言葉を聞いていると、ミカエルの口元が思わず緩んだ。

堪えようとしても、どうしても笑ってしまう。


「くっ……それを、人は“恋”と言うんだよ」


ルシファーは即座に否定した。


「違う。そう捉えられるとは……不愉快だ」


「ほう、違ったか」


「わたしはただ、黒須のやり方が気に入らないだけだ。あいつと同じ舞台に立てば、どちらの言葉が彼女の胸に届くか、はっきりするだろう?」


「ルシファー……それって、完全に張り合ってるだけでは……」


ミカエルは確信した。


(……重症だな、こいつ)


ルシファーの熱弁は続いた。


「……だから、次は同じ舞台に立つ! 教師としてね。ま、それに人間界の“教育現場”に、

少し興味があったしね」


「取ってつけたような言い訳その2か」


「あ、ところで、天界で小細工するって聞いたぞ」


「何を」


「天使エージェントを青葉学院高等部に正式に送り込むんだって?」


「誰から聞いた」


「ウリエルのログを覗き見た」


「あの少年ハッカー。たまに脇が甘いんだよな。ちっ! バレたら隠してもしょうがない。だが、神からの深い指令はないぞ。あいつらの希望があったので派遣するだけだ。黒須サトルの元なら害は無いだろう。あいつは、今どき珍しい人畜無害だ」


「黒須サトル。あれは面白い存在だ。昔からそんな奴でな」


ミカエルは警戒した。


「地獄のことに干渉するつもりはないが……あの堕天使に、何をする気だ。」


ルシファーは微笑んだ。


「管理だよ。教育とは、管理の別名だろう?」


ミカエルはルシファーお得意の理屈には辟易していた。

言い返すのも面倒くさかったが、次に出た言葉は慈愛に満ちていた。


「ルカには近づくな」


ルシファーは肩をすくめた。


「安心したまえ。彼女は“奪うほどの器”じゃない」


「だが……、黒須の隣にいる限り、あの子は“世界を揺らすぞ。神はそれをご存じなのだ」


ミカエルはそう言うと、それ以上は説明しなかった。

そして、最後に一言だけ言った。


「ま、……好きにしろ」


ルシファーは、驚いた顔でミカエルを見た。


「だが、これだけは言っておく。生徒に手を出した瞬間、君は本当に“終わる”からな」


ルシファーは笑った。


「約束するよ。手は出さない。……口は出すけどね」


「やってごらん。時々観察させてもらう」


「なんだよ、余裕で許可するなよ。もっと反対しろよ。調子狂うなぁ」


「反対されたくて、わざわざわたしに悪事を報告するの、やめろ。いつまでも庇ってやれんぞ」


ミカエルはルシファーの額をデコピンした。


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