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ハルマゲドン始まったってよ ~堕天使教師とマッチングしたのは天使エージェントだった~  作者: 白神ブナ
第一章 ハルマゲ丼

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39/91

第39話 1区:霞が関 → 芝給水公園

 午後一時ちょうど。

霞が関、財務省前。

道路に敷かれた駅伝のスタートラインに集まった生徒たちと報道陣。

そして、SNSで配信する何千人もの観客で熱気が渦巻いていた。

本格的な駅伝中継の様子に、黒須は少し気が引いていた。


「ウリエル、お前だろ。どうやってこれだけの報道陣を集めた」


「てへっ、警察庁からファックス流しましたぁ。地球の未来を決める一大イベント駅伝開催! もちろんSNSもあらゆるプラットホームから投稿しましたけど……、ちと派手にやり過ぎっすかね」


「いや、いいんだ。このほうが生徒たちのモチベが上がる。さあ、行くぞ! 青葉学院高等部!」


生徒たちは黒須の元に集合した。



「トップランナー、マル!」


黒須が声を張り上げると、青葉学院高等部の生徒たちが一斉に拍手を送った。


「先生、ニックネームじゃなくて、ちゃんと名前で呼んでくださいよ」


「無理だ。SNS上で、ハッシュタグ・マルになってる」


「ええー?! 誰がそんなハッシュタグを……」


側で待機していたイワンとマリとダニエルが、三人揃って手を挙げ、自首した。


「犯人はウリエルさんじゃないんだ……」


ウリエルは白い中継車で近くに停車し、運転席から生徒たちを呼んだ。


「イワン、マリ、ダニエル! 担当の区間まで移動しまーす。生徒たちを持ち場に着かせたら、戻って来て黒須さんを拾いますんで、よろしくー」


「ああ、忘れずに拾えよな」




 マルの隣に並ぶのは、白いマントと鎧に身を包んだ白の騎士だ。

無機質な顔に一片の笑みもなく、淡々と告げた。


「数値は常に裏切らない。君は敗北する」


挿絵(By みてみん)


 天界で天使たちがラッパを吹き鳴らした。

聖書に書かれてある通り、ハルマゲドン駅伝の始まりの合図だ。


マルは全力で駆け出した。

だが、霞が関のビル街に吹き抜ける風は、強い向かい風で、白の騎士の背中はすぐに遠ざかっていく。


「くっ……!」


挿絵(By みてみん)


必死に腕を振るが、差は開く一方だった。

マルは走るのは苦手ではないが、得意でもない。

それでも、都心の舗装された広い道路を走るのは、少し気持ちがいいと思った。

マルは、ネガティブな感情にならないように、今この瞬間を楽しむことにした。

すると、足はどんどん前に出るようになった。


 約二キロを走り抜け、芝給水公園の入口へ。

マルが公園内に飛び込んだとき、白の騎士はすでに待ち構えていた。


「お前の到着は……三分遅れだ。規定により、盤面の最初の二手は勝者である私が置く」


 冷徹な声とともに、公園の人工芝の上に眩しい光が走った。

すると、地面から巨大なオセロ盤が現れ、その中央に黒と白の駒が並んだ。


白の騎士が手をかざすと、駒が二つ……マルの黒にとって不利な位置に、白い駒が置かれた。


「ふふ……最適解から始めよう」


マルは息を整えながら、タスキを握り直した。


「オセロでも、罰ゲームでも……楽しんだもの勝ち。ここからは得意の頭脳戦だ。なんだかワクワクしてきた」


挿絵(By みてみん)


そのとき、観客席代わりに集まったクラスメイトたちの声援が飛んできた。


「マルー! 超かっこいい!」

「SNSでトレンド入りしてんぞー! マルの得意技見せてやれやー!」

「G組きっての正義感の塊! マルが地球を救う!」


マルは正義と言われて、ふと考えた。


(正義とは何だろう。いや、それよりも……昼休みのカレーを残すのは罪だろうか。」


そんなことを考えながらオセロ盤の中に立った。

巨大盤上の駒が一つ、マルの手でひっくり返えす。

すると、駒の裏に大きな「×」マークが書かれていた。

審判のユニフォームを着た悪魔が、マルの近くに来て説明しはじめた。


「ええですか? この巨大オセロには罰ゲームがあります。罰ゲーム発動。サッカーシュート対決――!」


マルが驚く間もなく、公園のサッカーゴールがせり上がり、ボールが転がってきた。


「えぇっ!? ここでPK!? マジで?」


「はい、3回シュートのチャンスがあります。そのうち、1回でも成功したら、オセロはそのまま続行です。逆に3回とも失敗したら、相手側つまり白の騎士は2回駒を動かせます」


マルは頭を抱えた。


「全然、頭脳戦じゃないじゃん……。ああ、もっと体育の授業、真面目に受けてればよかった」


キーパーは白の騎士だ。


「おーい、どうした。怖いのか?」


マルは、ムッとしてボールに足を叩きつけた。

ボールはゴール大きく外れて、見当違いの所へ飛んで行った。

青葉学院高等部の応援団から、惜しむ声が漏れた。


「「「ああーー」」」


「おやおや、これじゃつまらないな。わたしにキーパーの仕事をさせてくれよ」


白の騎士はマルを小ばかにして笑った。

そのとき、フィールドの奥から黒須の声が響いた。


「マル! イメージしろ。ボールが弧を描いてゴールに入るイメージを描け!!」


マルは大きく頷いた。

ゴールの瞬間をイメージし、それから足を動かした。

その瞬間、白の騎士がマルの足元を見ていることに気が付いた。


(やべ! 読まれてる)


そう思ったときには、マルが蹴ったボールは白の騎士の腕の中に捕えられていた。

クラスメイトたちから、思わずため息が漏れた。

だが、黒須は大声で褒めた。


「いいぞ、マル! 合ってる。それでいい。次は絶対成功するぞ!」


マルは計算した。

風の向きと、白の騎士の行動予測。

たぶん、右に向かって蹴っても読まれる。

ならば、左か、真ん中か。それとも、裏の裏をかいて右か。


(ふーん、おもしろくなってきたじゃん)


マルはゴールする瞬間をイメージして、……蹴った。

ボールはイメージどおり、ゴールのコーナーすれすれを目指すかのように飛んだ。

白の騎士はボールの方へ飛んで腕を伸ばした。

が、奇跡的にボールは曲がって白の騎士の手をすり抜けて、……入った。


「よっしゃー!」


マルのガッツポーズに、クラスメイトが湧いた。


「うぉーーーーーー! やったーーー!」


白の騎士はゆっくりと立ち上がった。


「別に何も変わりはしない。ペナルティなしでオセロを続行できるようになっただけだ」


「この巨大オセロおもしろいね。誰が考えたんですか?」


「はぁ?! バカにしてんのかお前。次行くぞ、次!」


マルの純粋な質問に、白の騎士はメンタルを乱された。

マルは仲間たち笑顔と声援に背中を押され、自信を取り戻しつつあった。



 巨大な盤上で、駒を打つ音が響く。

 白の騎士は無機質な指先で次々と駒を置き、盤面を制圧していく。


「数値は裏切らない。黒はすでに敗北ルートにある」


淡々とした声が、マルの焦りをあおった。


マルも駒を返す。

だが……、またしても×マークが浮かび上がってしまった。

さっきから、特に仕事をしていない審判の悪魔がアナウンスした。


「罰ゲーム発動。暗記ゲーム! フランス革命は何年?」


「えぇぇっ!? こんなとこで社会科!?」


信じられない罰ゲームに、頭を抱えたマル。

すると、観客席から声援が飛んだ。


「落ち着いて! マルならできる!」


「せんはっぴゃく……きゅ、きゅうじゅうはち? いや違う!」


「違う! 落ち着けマル! おい、ここで世界史を間違えたらお前の評価を落すからな!」


「辞めてくださいよ、黒須先生! えっとー、……1789年!」


マルが叫ぶと、判定音が鳴った。


ピンポン、ピンポン!


セーフ。


「ぜぇ……ぜぇ……試合中に小テストとか心臓に悪すぎるだろ……!」


さらに駒を返すと、また「×」が現れた。


「罰ゲーム発動―! サッカーシュート!」


「なんか、僕だけ罰ゲーム引いてない?」


白の騎士は余裕で言った。


「運も実力のうちだ」


半分納得しながら、半分首をかしげて、マルはゴール前に立った。

クラスメイト達が


「マルー! ふかすなよー!」


と大声援を送ってきた。


「うおおおお!」


 渾身のシュートは、ゴールポストにガンッと当たって内側へ転がった。


「よっしゃあああ! 一発で決めたぜぃ!」


 生徒たちから大歓声が巻き起こり、SNSコメント欄も祭り状態だ。


《PKで世界を救う男》

《ただの体育祭じゃんww》

《でも泣ける》


 白の騎士の盤面優勢は揺るぎなかった。

だが、持っている男、マルの運気が思わぬところで盤面をひっくり返し始めた。


「はいよ、白の騎士さん。ここからは僕が巻き返しますんで……」


「な……馬鹿な、最適解が……」


初めて白の騎士の声が震えた。


「計算どおりも悪くないけど、予想外もおもしろいよなぁ! 予想外の驚きが僕を進化させたんだ! トドメだぁ!」


マルが最後の駒を打ち込むと、盤面が一気に黒に変わった。


 歓声と拍手が沸き起こる中、マルは汗だくのまま、芝給水公園の出口へと走った。

そこには次の走者、イワンが待っていた。


「イワン! 頼んだ!」


白地に赤ラインのタスキが、力強く託された。


「任せろ」


イワンは短く答え、軽快に駆け出していった。


一方の白の騎士は、冷たい声で告げる。


「規定により、三分の遅延を課す……」


彼は動きを止め、時計の針が静かに時を刻むのを待った。

その視線の先にあるのは、赤いバイクだ。

赤の騎士のエンジン音が低く唸っていた。


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