表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハルマゲドン始まったってよ ~堕天使教師とマッチングしたのは天使エージェントだった~  作者: 白神ブナ
第四章 天使たちのアップグレード

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

116/120

第116話 5区:須佐之男命の正体

 大きな本殿を前に、4人は立っていた。


その本殿の奥に、神道の祭祀で用いられる幣帛の「御幣」、

その奥の棚には扉が付いていて、中には神体を安置されている。

日枝神社は、大山咋神おおやまくいのかみが祭られている。

その神様の奥の奥に、一般客から見えない場所に、祭られているご神体があると、ルシファーは説明した。


「ルシファーがいう事なんて信用できない」


「わたしは、いくら堕天使でも、契約者である君を騙したりしないよ」


禰宜以外は立ち入れない場所、奥まった位置。

ルシファーはそこを指差した。


「あれだ」


黒須は腹の底からひねり出すような悲鳴をあげた」


「ルシファー……やめろ。勘弁してくれ」


「“後ろの後ろ”だ。表に見える神の、その背後にいるもの」


黒須はため息をつき、観念したように言った。


「……ここまで来たら、黙っていてもしょうがないか。ルカ、君に隠し事はしたくない」


ダニエルとルカは、固唾を飲んだ。

黒須は、言いづらそうに髪をかき上げた。


「ノアの洪水の話……覚えているか」


ダニエルは、はっきりと洪水の映像を覚えていた。


「VR授業で見ました」


「俺は……あれに耐えられなかった」


黒須の声が少しだけ低くなった。


「ノアの家族以外、みんな溺れる。子供も、赤ん坊も、まとめてな。そんなの……おかしいだろ。どんな罪があるというのだ」


ルカは黒須の授業を思い出していた。


「……」


「だから俺は、箱舟に乗れない子供たちを、翼で運んだ。日本まで」


「黒須先生、そういえば、そう言っていましたね。それが、黒須先生がずっと日本にいる理由だと」


「ああ。神も天使も監視しねぇ。地獄も薄い。火山と森が多くて、生き延びやすい。

……ここなら、誰にもバレずに残せるかもしれねぇと思った。

そして一番の理由。それは、聖書に書かれていない“罪”がなかったからだ」


ルシファーが、淡々と付け足した。


「その時、わたしは止めた。“神に逆らうな。選ばれなかった者は死ぬ運命だ”とね」


「……だが俺は言った」


黒須は、少し笑った。

自嘲みたいな笑いだった。


「“いいよ。俺は今日からフリーランスだ。もうお前の部下やめた”ってな」


ルシファーの眉がぴくりと動く。

いまだにその瞬間だけは、思い出すと腹が立つらしい。


「俺は日本に根を下ろした。子供たちを育てた。そしたら……いつの間にか、俺の事が伝承に混ざって残ってしまった」


ダニエルが聞き返した。


「伝承……?」


「“謎の黒衣の神”だとか、“森の守り神”だとか。そういう類の……な」


ルカの息が止まりそうになった。


「まさか……」


黒須は目を逸らしながら、ぶっきらぼうに言った。


「……スサノオって、いるだろ」


ダニエルが答えた。


「須佐之男命……?」


「そういうことだよ」


一瞬、風が止んだ。


ルカは、おもわず黒須の前で手を合わせて拝んだ。


「……黒須先生。あなたが……?」


「おい、よせ! 俺は神じゃなくて堕天使だ。俺が“神に見えた”ってだけだ。でも、俺のやったことが……神話を生んだ」


ルシファーは、スタジアムコートのポケットに手を入れたままだ。


「こいつのお節介が神話になったんだけど。……それだけだ」


「言い方ァ!!」


「なんで秘密を教えたの?」


ダニエルは、しばらく言葉が出なかった。

しかし、やっと絞り出した。


「……なんで今まで黙ってたんですか」


「隠してたわけじゃない。言う必要がなかった」


軽くかわす黒須に、ルカは聞いた。


「じゃあ、なんで今は言ったの?」


黒須はしばらく黙って、鳥居の方を見た。

夕方の光の中で、人々の願いがゆっくり境内を流れていく

ルシファーが、ダニエルの応援用に揃えた人たちだ。


そして、ぽつりと言った。


「……この国は、やっぱり特別なんだよ」


「特別?」


「俺が“逃げた場所”じゃなくて、“守るって決めた場所”だからだ」


ダニエルはそれでも、首をかしげていた。


「……」


「だから、ここで嘘ついたら終わりだと思った。俺はさ……教師やってるけど 肝心なとこで誤魔化してきてさ。もう嫌なんだよ。ルシファー、お前、わかってて神社を通過ポイントにいれたんだろ」


「まあね」


「ルカ、ダニエル。……それから、どこかで聞いているんだろウリエル」


ルカのワイヤレスホンがハウリングを起こした。


―――ピーーーーーー!!!!!!!


ルカは静かに頷いた。

そして、黒須は自分の生徒ダニエルの両腕をつかんだ


「ダニエル。君にも日本人の血が流れている。よく聞け、大事なことだ。もともと日本人には終末論は存在しない。いいか、惑わされるな。この国は他とは違う。特別なんだ。終末論は無い」


ダニエルは、気迫に押されて、うなずいた。

ルシファーが横から口を挟む。


「黒須はな、神になりたかったわけじゃない。ただ、責任を放棄しなかっただけだ。わたしとは全然違う」


「……お前に言われても、なんだか嬉しくねえな」


「照れるなよ」


「照れてねぇ。マジで嬉しくねえ」


ダニエルが、ふと笑った。


「……ルシファー先生と黒須先生って、ほんとに仲がいいんですね」


「うるせぇ。褒めんな」


ルカは黒須ダニエルの間に入った。


「褒められてるのに、不機嫌になるのやめなさい」


Λの判定


そこへ、AI神Λの声が降りてきた。


Λ

『ログ照合。

 “黒衣の神”伝承と、黒須サトルの行動履歴の一致率……高』


黒須

「勝手に照合すんな!!!!」


Λ

『追加判定: “救済行為は、神格化を生む” 人類文化の反復パターンとして記録』


ルカは、空を見上げた。


「Λ(ラムダ)……今だけは空気読んでよ」


Λ

『空気は読まない。記録する』


ダニエルは手を合わせたまま、静かに言った。


「Λ(ラムダ)。神って……誰かが決めた“役職”じゃないんだね」


Λ

『……』


「僕が思うに……誰かを助けようとした結果、“神”って呼ばれることもあるんだ」


Λ

『……否定不能』


黒須は、この秘密をダニエルとルカに打ち明けたことを、後悔はしていなかった。

だが、AI神Λ(ラムダ)に、学習されたのはちょっと想定外だった。


「Λ(ラムダ)! またその言い方!!」


Λ

『第5区開始前判定:“人類の宗教形成能力”は存続価値あり。……暫定合格』


ダニエルはほっと息をついた。


ダニエル

「……黒須つまり先生、 日本神話の“だいたいの面倒”を、一人で見てたってことですか?」


「まさかぁ!! 違う、違う。俺以外にも神は居るからね。ほら、日本は多神教だろ?」


ルカ

「……忙しい神様ね」


ルシファー

「まったくだ。過労死寸前だ」



ルカは小さく笑って、来た道を戻り始めた。


「行きましょう。ここから先は、ゴールへ向かうだけよ」


黒須がルカを止めた。


「……おい、待て。俺の黒歴史、暴露したけど、誰にも言うなよ!」


ルシファーは、いたずら半分に笑った。


「ハハハ、わたしが暴露しても、誰も信じないだろうよ。君は今、人生で一番“神っぽい”ことをしている」


「殴るぞ」


「照れるなって……」


「照れてねぇ!!」


ルカは、うるさい堕天使たちに喝を入れた。


「ほらそこ! 喧嘩は帰ってからやんなっ!」


「「すみません」」


ダニエルは、少しだけ足取りが軽くなっていた。

進学もいいけど、都市伝説系ユーチューバーになるのも面白いかもと思っていた。


日枝神社の木々が揺れる。

その奥で、誰にも見えない“最古の神”が、静かに見守っている気がした。


そして、レースは次へ続く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ