表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハルマゲドン始まったってよ ~堕天使教師とマッチングしたのは天使エージェントだった~  作者: 白神ブナ
第四章 天使たちのアップグレード

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/120

第115話 5区:日枝神社参拝


 日枝神社の鳥居が、目の前にそびえていた。

ここは東京のパワースポットだ。


Λ(ラムダ)が、何のつもりでここを通過ポイントにしたのか、黒須はまだ測りかねていた。

ダニエルは、自分のペース配分に集中して、石段を軽快に登っていた。

だが、突然、黒須は足を止めた。


「……なあ。俺、入れないよな?」


黒須はルカに助けを求めるような目で見つめた。


「そうかもね。聖イグナチオ教会は無理だったし」


ルシファーは、苦笑した。


「ふふ……、さて、日本の神はどうかな」


「試すなよ……」


いたずら半分に石段を登ろうとするルシファーを止めようと、黒須は無意識に一歩、前に出てしまった。


鳥居の下に足を踏み入れる。

参道の石段に、足を乗せる。


……だが、何も起きなかった。


「……あ?」


思わず、息を止めた。

そして、身体を確認する。

焼ける感じも、弾かれる気配もないようだった。


「……何も……起きねぇ」


ルカは、目を見開いて、黒須の様子を確認した。


「……」


ルシファーは、驚いて調子に乗った。


「ほう」


今度はルシファーが、興味深そうに前へ出た。

そして、ゆっくりと鳥居をくぐり、石段を登って行った。


やはり……、何も起きなかった。


「……お前も、入れたのか?」


「どうやらね」


ルカはこの堕天使たちを見て、少し考えるように首を傾げた。


「……それって……」


黒須は、ルカのその先の言葉が早く聞きたかった。


「?」


「あんたたちが“穢れ”じゃないってことじゃない?」


二人の堕天使は、同時に言葉を失った。


ルカは続けた。


「日本の神様は、“立場や行い”じゃなくて“そこに至った経緯”を見るのかもしれない」


ダニエルが、石段を登っていた足を止めて、ゆっくりと振り返った。


「難しい言葉使わないでください、ルカ先生。もっと簡単に!」


そして、再び参道を走った。


「確かに……穢れじゃないと思う。ルシファー先生たちって」


ルシファーは、ダニエルの言葉にハッとした。


「……」


その一言に、ルシファーは視線を逸らした。


「先生」という呼び方が、思いのほか胸に刺さったのだ。


「……やめたまえ。 照れるだろう」


「ルシファー、お前が照れるとか初めて見たぞ」


「黙れ、黒須」


「顔赤いぞ」


「気のせいだ」


ルカは、ふっと小さく笑った。


「ね。だから言ったでしょう」


黒須は、石段を登りながらルカの笑った顔に、魅了された。


「……?」


「“堕ちた”って言葉、あんたたちには似合わないってば。堕天使だって、元天使なんだから」


石段の上から、境内の清らかな空気が流れてきた。


ダニエルは、ゆっくりと深く息を吸った。


「……なんか、ここ、落ち着きますね。レースタイムよりも、この空気を味わいたいな。ちょっとだけ、いいですか?」」


「……Λ(ラムダ)さん。人類代表選手のお願いだけど」


Λ(ラムダ)の声が、控えめに響いた。


Λ

『観測記録:“穢れ”という概念は、宗教ごとに判定基準が異なる』


「急に理屈言うな。AIってこれだからよ。俺の質問を無視しやがった!」


ルシファーは、石段を上る足元を見ながら、つぶやいた。


「だが……悪くない分析だ」




四人は、上まで登ると、しばらく言葉もなく、日枝神社境内を見渡していた。

都会の真ん中なのに、木の匂いが濃い。

参道の砂利の音がやけに心地いい。


手水所で水を救い、ダニエルとルカは手と口を清めた。


「おい、ルカ。これは聖水か? だったら、俺はアウトだ。まだまだ死にたくない……」


「聖水じゃないわ。清らかな水ってかんじ。ここで穢れを落としてから参拝するのよ。ほら、やってごらんなさいよ」


ルカが救った杓子の水を、黒須は恐る恐る片手で受けてみた。


「ああ、なんともない。っていうか、清々しい。おい、ルシファー、やってみろ」


「面倒臭い」


だが、ルシファーが連れて来た一般ピーポーが声援を送った。


「「「ルシファーさん! ただの水です。怖がらないで―!!」」」


「怖くはない! わたしが怖がるはずがないだろう」


そして、ルシファーもここで穢れを落とした。


「おおおー、忘れていたよ。はるか昔は、なんだかこういう感覚があった……」



本殿の前では、ルカがダニエルに作法を教えていた。


「二礼二拍手一礼。焦らなくていいわ。そう、ゆっくりやりましょう」


ダニエルは深呼吸し、ルカの動きに合わせて、柏手を打った。


(……かつて悪魔崇拝をしていた僕なのに、教会と神社を訪れるなんて、変なレースだな。でも、ここまで走って来た。僕は……、何かに導かれているのかな)


隣では、黒須が妙に落ち着かない顔をしていた。

ルカがそんな堕天使どもを叱った。


「おい、そこ! 境内に入れたからと言って調子に乗らないで! ちゃんと日本の神様に参拝しなさい!」


「お、俺……ここ、昔から苦手なんだよな」


「どうして? 今さらどうしてそんなこと言うの」


黒須は答えず、視線だけを逸らした。

ルシファーが代わりにルカに教えた。


「面白いことを教えてあげよう。黒須はね、“自分が神になった場所”に来るのが苦手なのさ」


ダニエルとルカは、耳を疑った。


「え……? 黒須先生が神になった場所って、何ですか?」


「……どういう意味? 話の内容によっては神への侮辱罪で訴えるわよ」


黒須は、ルシファーを睨んだ。


「おい。余計なこと言うな。言っとくけど、俺がここで神になったんじゃないからな、勘違いすんなよ」


ルシファーは微笑んだ。

いちばん意地悪な笑みだ。


「わたしが教えよう。今日くらい、真実ってもんを明かしてもいいじゃないか? 勘違いされて2000年……」


不思議なことを言い出す黒須とルシファー。

生徒ダニエルは、黒須と初めて会った日のことを思い出した。

悪魔召喚でたまたま現れたのが、この黒須だった。

悪魔じゃなくて神だという説は、あまりにもぶっ飛んだ話で、そんな先生の元に転校してきたことに、ダニエルは運命めいたものを感じた。


「ここじゃなきゃいけなかったんだ。やはり、黒須先生はただものじゃない。わが師よ……」


「やめろ、ちがうって!! ダニエル! ここで膝まづくな!」


生徒に拝まれる黒須。

何気にお賽銭を投げ入れて本殿に参拝するルシファー。

ルカは、この堕天使たちを憎めなかった。


「ルシファー、日本の神はちゃんと参拝するのね。何を願ったの?」


「黙れ。これは偽善だ、偽善!! 早くハルマゲドンが終わりますようにって、願ってやった。どうだ、悔しいだろう……フフフ」


「く、悔しい!」(演技)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ