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ハルマゲドン始まったってよ ~堕天使教師とマッチングしたのは天使エージェントだった~  作者: 白神ブナ
第四章 天使たちのアップグレード

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第111話 2区:上野・不忍池

 ルシファーは、柵に寄りかかって、ダニエルが来るのを待っていた。

ダニエルは、息を弾ませて不忍池まで来ると、立ち止まり肩で息をした。


「ルシファー先生、どうして?……僕……を、待っていてくれたんですか? 先に行ってもいいのに……」


「待ってる? 冗談じゃない。先に行きたくても、Λ(ラムダ)のミッションがないと進めないんだよ。ああー、君が来るまで暇でしょうがなかった」


黒須とルカも中継車から降りて、不忍池まで走って来た。

普段は大勢の人たちが散策に来る上野公園も、今日は不気味なほど静かだった。

ほどなく、AI神Λの声が響いた。


『第2区は、試練……。旧約聖書の出エジプト記を再現する。“第四の災い:あぶの大群” を再現開始』


「え、VR授業の再現?」


ダニエルはVR授業のあぶの大群シーンを思い出して、ゾッとした。

黒須は、自分の授業データに不正アクセスされたのは知っていたが、こんな使い方……しかも災いのシーンを使うことに腹が立った。


「いやなんで!? なんで再現すんだよそこ!! もっと平和な試練なかった!?」


黒須の訴えなど、最初から聞く耳持たないAI神Λ(ラムダ)。

不忍池の上空が黒く渦巻き、ブゥゥゥゥゥン……と低い羽音が広がった。

ルカは、とっさに姿勢を低くしながら叫んだ。


「黒須先生!! ダニエル!! しゃがんで! 来るわよ!!」


「やめろォォォ!!! 虫だけは勘弁して!!!」


「あんた、この授業してたじゃん! あの時どうしたのよ」


「あの時……、目を閉じてた」


にわかに池の蓮が揺れ、水面から巨大な黒い影が立ち上がった。


Λ

『害虫シミュレーション:展開完了』


雲った空から、本当に耳を裂くような羽音の大群が降ってきた。


「うわあぁぁぁ!!全力で逃げるしかない!!」


数か月前に封印を解いたダニエルは、ときどき不思議な力が出ることがあった。

ダニエルは不忍池の前で、モーセがやったように右手の杖……は、なかったから拳を天に突き上げた。

その瞬間……、


不忍池の水面が、左右にザァァァァァァァッ!!と割れた。


ルカと黒須は、信じられない光景を見た。


「割れた!!!!! また割れた!!! 池でも割れるのかよ!!!!」


「え、ええ。モーセより規模は小さいけどね……」


ルシファーは、目の前の奇跡に顔色ひとつ変えなかった。


「ふむ。質の高い再現だ。悪くない」


「褒めるな!! Λ(ラムダ)が調子に乗るでしょ!!」


Λ

『通過条件:“害虫の追撃をかわしながら、池底の走路を走破せよ”』


「かわせねぇよあんなん!! あれ普通に殺虫剤いるレベルだぞ!!」


ダニエルは、すでに預言者モードだ。


「行くしかないでしょ黒須先生! 出エジプト記ならず、出上野公園!!」


ルシファーが笑った。


「だいぶスケールが小さくなったな」


「量より質なのよ、この子の場合は……」


「ダニエル、俺に声かけた? 先生は走らねぇよ!? お前が走るんだよ!!」


不忍池の底に拓かれた、AI神Λが作り出した“水の回廊”。


ダニエルはあぶの大群を振り切り、池の底を走った。

ルシファーも、この瞬間を利用して彼に続いた。

ラストは池の柵を飛び越え、地を蹴ってゴールラインを越えた。


Λ

『人類代表……第2区、通過』


同じくルシファーも余裕の表情で通過した。


「ふっ……害虫ごとき、速さのうちには入らん」


黒須はその様子をただ呆気に取られて見ていた。


「ごときって言ったぞアイツ!! ごときって……、遠く離れていても、悪口だけは聞こえるんだよ。地獄耳だけにな! ごときじゃねーだろ、あんな地獄の軍団みたいな虫の群れを!!」


「黒須先生、声が大きい!!聞こえてるわよ!! あんたが地獄耳なら、ルシファーだって同じでしょ!」


そのとき……

ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!


「……え、なんか今、聞こえたよな?」


Λ

『補足イベント:“観客が安全地帯に避難していないため、害虫追撃を継続する”』


「は??????」


ルカがシャツの袖を降ろした。


「つまり……逃げろってことじゃん?」


「なんで!?なんで俺まで参加なんだよ!?」


Λ

『黒須サトル、ルカ・セラフィム:天界登録カテゴリ=“堕天使教師” “天使エージェント”

人間にあらずもの。よって、安全対象外』


「はぁぁぁぁ!? こんなところだけ、なんで細かいんだよ!天界のルールはっ!!」


ルカは肩をすくめた。


「仕方ないわね……走りましょう、黒須先生」


「え!? ルカも!?」


「当然、わたしも安全対象外って言われたんだし、めっちゃ腹立つじゃん。それに……あなたを一人で行かせたら……」


「ルカ……(君は僕の事を……)」


「……途中で溺れるでしょ。そんなの嫌よ」


「池の底は水ねぇだろ!!」


「途中で転んで、池の壁が崩れる!! エジプト軍が溺れたみたいに!」


「そこだけは、ちゃんと記憶してるんだな!!」



そこへ……

ウリエルが、中継ドローンを、あの有名な猫型ロボットの漫画のように頭に乗せて飛んで来た。


「実況入りましたー!!」


「お前は、アニメキャラか! そのドローン、四次元ポケットから出したんだろ!」


「SNSで配信中です。第2区、追加参加者は黒須サトル&ルカ・セラフィム!! まさかまさかの教師ペアが参戦です!!」


「実況すんな、ウリエル!! 手伝え!!!」


ウリエルは空中で手を振った。


「応援してます!! 僕は応援担当なんで!! 頑張ってくださーい!!」



「無責任ーーー!! ってか、お前、そんなもん使わなくても翼あるだろが! 天使だろ!」


黒須がわめいている間に、背後でブワァァァァァッ!! と、空からあぶの大群が迫ってきていた。


ルカは、迷わず手を差し出した。


「黒須! 手!!」


「えっ……う、うん!!」


ルカは黒須の腕を掴むと、池底の石畳を駆け出した。


「走れ!! あなたの脚は飾りじゃないでしょ!!」


「うるせぇ!! 言われなくても走るわ! !」


「言われないと、走らないじゃない!!」


天使エージェントで鍛えられたルカの足は速かった。


黒須はルカに引きずられるように、必死に走った。


「うるせぇ!!」


ウリエルの実況中継が、現場の緊迫感を伝えていた。

すると、


「おおっと!! 黒須先生、転んだァ!!」


「転んでねぇ!!! ただ、つまずいただけだ!!!」


ウリエルはマイクを通して言い返す。


「それ転んだって言うんですよ!!」


ルカはそんな二人の茶番劇に付き合っている余裕は無かった。


「ほら あの水の壁、もう閉じ始めてる! 急げ!!」


「わかってるぅぅぅぅ!!!」


転んだ黒須の上に、水の壁が波のように押し寄せてきた。

リアル出エジプト記のエジプト軍だ。


Λ

『補足判定:

 “脱落した場合は、害虫クラウドへ吸収”』


黒須は、恐怖でこえがひっくり返った。


「ふぇっ?! クラウドって言い方やめろ!!! なんかデータ化されて削除されそうじゃん!!!」


「文句は、走りながら言って!! 足を動かせ! 足!!」


「文句言ってねぇと、精神保てねぇんだよ!!!」


二人は叫びながら、池底のゴールラインを駆け抜けた。


Λ

『黒須・ルカ組……臨時通過。 次区への移動許可』


黒須とルカは上野公園のベンチに、倒れるようにもたれかかった。


「……はぁ……はぁ……。マジ死ぬかと思った……」


ルカは髪をかきあげた。

「黒須先生……息あがるの早すぎよ。運動不足じゃない?」


「うるせぇ……お前が引っ張るから、腕痛ぇんだよ……。ってかよ、さっき俺、呼び捨てにされたような……」


「幻聴だ」


ルカは、今さら黒須の手を引っ張ったことにハッとした。

ほんの少しだけ赤くなった頬を、両手でかくした。


「……黙れ、堕天使」


ウリエルは、にこにこしながら実況中継した。


「【速報】黒須先生、ルカ先輩に手を引かれて走るっと」


黒須&ルカは、息ぴったりに叫んだ。


「「やめて、ウリエル!!!!」」





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