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ハルマゲドン始まったってよ ~堕天使教師とマッチングしたのは天使エージェントだった~  作者: 白神ブナ
第四章 天使たちのアップグレード

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第107話 ハルマゲドン・レースやるってよ


――その日の夜。

ルカは、赤坂・恋愛CIA日本支部にいた。

一旦は都落ちしたオフィスが、再び赤坂に戻って来ていた。

天界から、莫大な賠償金を支払って。


夜は、恋愛CIAオフィスに黒須も来ていた。

今後の作戦を立てるためだ。

ルカはデスクで資料の山を片付けながら、ウリエルのカフェラテ(※砂糖40%)を横目でにらんだ。


「……あんた、それコーヒーっていうより、液体スイーツだよね」


「脳の回転には糖が必要っス。恋愛分析AIもそう言ってたっス!」


「AIに言われて信じるあたり、末期よ」


そこへ……

ピンポーン♪

玄関チャイムが鳴った。

ウリエルがドアを開けたが、誰もいなかった。

足元には白い封筒が落ちていた。


「……なんスかこれ? アレですかね」


ルカは封筒を受け取ると、眉をひそめた。

封蝋には“燃える獣のマーク”があった。

黒須はそのマークを見て不安が広がった。


「……メギドの丘か。 ついにここにも挑戦状が届いたか」


恋愛CIAオフィスは、天界出張所でもある。

ここにも挑戦状が届くことは、ルカはわかっていた。

ルカは黙って頷き、そして、封を開けた。

中には、一枚の挑戦状と詳細が書いてあった。


『挑戦状:ハルマゲドン・レース

テーマ:教育を信じる者よ、人類の存続価値を神に証明せよ。


実行日:近日中

コース:浅草寺〜代々木競技場(約28km)

参加者:ダニエル日辻、他1名

判定者:AI神Λ(ラムダ)

主催:文部科学省、終末実行委員会

協賛:メギドの丘』


ルカは読み終えると、しばし無言になった。

黒須が冗談めかして、ルカの背中を叩いた。


「ったくなぁ!……運動会の案内かってんだ?」


「黙れ、堕天使。こっちは人類の運命がかかってるの」


ウリエルが椅子ごとくるくる回りながら言った。


「でもなんか、28kmって中途半端じゃないっスか?」


「中途半端だからこそ、意味があるの」


ルカの声は静かだが、鋭かった。


「“28”は旧約聖書で“試練の数字”。そして、“8”は∞(無限大)……つまり神に近づくこと。

『メギドの丘』は、試練をもって、人類の存続の価値を測るつもりね」


「まさか……このレースで、人間を選別するってことか」


「そう。Λ(ラムダ)は、人間をデータで分けて、イエスが再臨する前に選別してしまうつもりだからね。ただ、……参加者、他1名って誰かしら」


すると、音もなくルシファーが空間移動で、突然現れた。


「わたしからも、ハルマゲドンの詳細を説明しよう。つまり28キロを走り切るんだ」


「ルシファー! 来るなら来るって言ってよね! いきなり天井からぶら下がらないで!不法侵入で訴えるわよ」


「コウモリスタイルのつもりだったが、現代人にゃ伝わらんか」


「おいルシファー、今、走る、って言ってなかったか?」


黒須の眉がぴくりと動いた。


「“AI神Λ(ラムダ)”による最終審判……《人類適正テスト:マラソン形式》だ。場所は東京。ルートは、浅草から国立競技場まで。条件はただ一つ。誰も飛んではならない」


「……つまり、堕天使も天使も、地面を走れってことか? お前、参加者の他1名って、誰か知ってるか?」」



「さあね。そう、神の選別は“地上”で行われる。公平だろう?」


ルシファーが肩をすくめて笑った。


そのとき、誰かが恋愛CIAオフィスの扉をノックした。

ウリエルがドアを開けると……、黒須の生徒たちだった。

ダニエル、マル、イワン、マリ、そしてロクさんが並んで立っていた。

彼らは、ダニエルから話を聞いたらしい。

イワンが拳を握って叫んだ。


「黒須先生! オレが走ります!」


「イワン……」


ルカも黒須も驚いた。

彼は陸上部のエース。確かに走りは得意だ。

だが、AI神Λ(ラムダ)の干渉下で何が起きるかわからない。

それは危険すぎた。


「ダメだ」


黒須の声は意外なほど強かった。

それでも、陸上部の威信にかけて、イワンは手を上げた。俺に走らせてください!!」

しかし、それはダニエルが断った。


「ありがとう。気持ちだけもらっとくよ」


ダニエルは、眼鏡の奥の瞳がまっすぐイワンを見据えていた。


「僕が走るって、これは決まっているんだ」


「なに言ってんだ、おまえは!」


イワンが振り返る。


「おまえ、運動とか一番苦手じゃねぇか! 俺が走った方が速い!」


「速さの問題じゃないんだ」


ダニエルは静かに言った。


「これは、AIが“人間の価値”を決めるレースなんだよ。メギドの丘は僕を指名してきたんだ。僕が走らないと意味がないんだよ」


ロクさんの黒ヤギのぬいぐるみの目が、かすかに光った。


「あっしは賛成でござんすね。だんな。走るのは足だけじゃねぇ、魂も走るんでさぁ!」


「……。ロクさん……、こりゃあもう、心の底から、礼を言うぜ。……へっ、心の底から、ありがとよ」


黒須は、ロクさんの言葉に心動かされた。

そして、そっとダニエルの顔を見た。

その瞳に、もはや迷いはなかった。

天使でも堕天使でもない、神の封印を解いた選ばれし者の目だった。

ルシファーは、その目に惹かれた。


「いい目だ。悪くない」


ルカは腕を組み、軽くため息をついた。


「ただし、走るなら徹底的にやりなさい。天使式・地獄式・人間式、全部混ぜて叩き込むわよ」


しばらく沈黙のあと、ウリエルが手を挙げた。


「つまり、このレース……勝ったら、人類は存続価値ありってことっすよね?」


「だな。負けたら、AI神Λ(ラムダ)の支配が始まる。」


ルカは椅子から立ち上がり、封筒を手に強く握った。


「ウリエル、恋愛CIAの再稼働を」


「え、まじっスか!? あれ、一旦封鎖してから、まだ試験運用段階で……」


「いいの。非常時モードよ」


ルカの目がまっすぐ光を放った。


「AIに“人間”が測れると思うな」


ウリエルは敬礼した。


「了解っス! 恋愛CIA、ミッションコード再起動――!」


ピピピ……ピピ……


モニターに“恋愛CIA起動中”のロゴが浮かんだ。

すると、オフィス中がハートの衛星に占領された。

ルカは、ハートの形の衛星が回転させ、AI神Λ(ラムダ)の監視網をかいくぐるように電波を発信した。

生徒たちはその技術を呆気に取られて見ていた。

黒須が呆れたように笑った。


「本気でやる気か。恋愛CIA」


「わたしを誰だと思っている。天使エージェント、それが本職よ」


ルカが挑戦状を掲げた。


「人間の愛と教育の本気、見せてやろうじゃない」


黒須とルシファーは、そんなルカに惚れ惚れしていた。

ウリエルは小声で言った。


「かなり乱戦になりそうっスね」

「うん……、映像的にずっと見ていたいがな」

「黒に同じ」


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