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ハルマゲドン始まったってよ ~堕天使教師とマッチングしたのは天使エージェントだった~  作者: 白神ブナ
第四章 天使たちのアップグレード

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第106話 俺の前で一致団結するな

 一触即発状態から、いきなり手札を切ったのはルカだった。

ルカは怒った。


「黒須先生が迷うからでしょ!」


ルシファーはルカの叱責に感心した。


「珍しく正しいことを言うな。あ、そう言えば天使だっけ。あまり圧があるから忘れてたわ」


「ルシファー! 何その言い方!!」


黒須は更にムッとした。


「……お前らさぁ。俺の前で一致団結して責め立てるのやめろよ。なんか腹立つんだよ。名前も似てるし……ルカとルシファーってさ」


「黒須先生って、バカなの? 似てないわよ。“ル”しかかぶってないじゃん! 小学生クイズじゃないんだから!」


ルシファーは、元部下の黒須にあきれ果てた。


「誰のための議論だと思っている?」


「……誰って……俺のためじゃねぇのかよ」


「ちがうわ!!」

「違うぞ」


「だからーーー!!! オーマイデーモン! お前ら揃って“違う”って言うな!!」


黒須は視線をそらし、缶コーヒーを握りつぶす勢いで言った。


「……分かったよ。伝えりゃいいんだろ、ダニエルに」


「怒ったの……?」


「お前ら二人が仲良く並んで言うとだな……なんかムカつくんだよ」


「理由がくだらないな。黒須」


「うるせぇよ。くだらなくても、俺が動く理由になったんだからいいだろ」


ルカは一瞬ぽかんとし、そして……顔を赤くした。


「……その……嫉妬したってこと? かしらん」


「違ぇよ!!! ただ……お前がルシファーに近づくのが……なんか……気に入らねぇだけだ!!!!」


ルカは真っ赤になって怒った。


「ど、ど、ど……どういう意味よそれ!!」


「痴話喧嘩なら校外でやれ」


今度は、黒須とルカが同時に叫んだ。


「「痴話喧嘩じゃねぇ!!!!」」


そして、黒須は深く息をつき、真面目な口調に戻った。


「……でもよ。ダニエルは……俺の生徒だ。あいつに嘘はつけねぇ。あの子って、感がいいからさ。俺がビビってるように見えるのも嫌だ」


「やっと本音が出たな。黒須」


「黒須先生……あなたなら言えるわ。あの子に真実を伝えられるのは、あなただけよ」


「……ああ。わかってる。行ってくるよ。ダニエルに全部話す。Λ(ラムダ)計画も、ハルマゲドンも。俺は……絶対に、あいつを死なせない」


「ふん。やっと本気の顔になったな。行けよ。反逆者。」


「お前には言われたくねーよ」


「がんばって、黒須先生」


黒須は屋上の階段へ向かった。

彼の少し背中が広くなったように見えた。

だが、一旦、立ち止まった。


「お前らへの……嫉妬から始まったけどよ……最後にはちゃんと教師らしいことすっからな」


その言葉に、ルカはそっと微笑んだ。


「……ほんと、不器用なやつ」


ルシファーも少し笑った。


「同感だ」


「あら、あなたと意見が合うなんて最悪」


「こちらもだ」



 黒須が階段の影に消えた。

屋上には夕暮れの風が残り、ルカとルシファーだけが取り残された。

しばらく沈黙。

ルカは遠くの空を見て、なんとも言えない表情をしていた。


「黒須先生……大丈夫かしら……」


ルシファーは鼻で笑った。


「心配しすぎだ。あの堕天使は、しぶとさだけは一流だ」


「そういう言い方、やめてほしいわね!」


「ふっ……また怒ったか」


「怒るわよ、当然でしょ!!」


「……実に良い」


「はぁ!? 良くないでしょ!!」


ルシファーは、ほんの少し目を伏せた。

その影は、笑みとも、痛みともつかなかった。

そして小声でつぶやいた。


「……やれやれ。わたしと君が“珍しく意見一致”したのを、あいつは相当嫌がっていたな」


「黒須先生はそういうところあるのよ。素直じゃないから」


「似た者同士だろうが」


「どこが!!」


「君も素直じゃない」


「う……っ……!! あなたに言われるのは心外だわ」


ルシファーはふっと視線を逸らした。

そして、誰にも聞こえないような声で呟いた。


「──だけど。黒須と同じタイミングで、お前と意見が合ったのは……悪い気分ではなかった」


「え? 何か言った?」


「何も言っていない」


「え、何か言ったでしょ。何?何? 絶対言ったでしょ!!」


「聞き間違いだ」


「今の、なんか意味深だったでしょ!? 何なのよ!」


「わたしと君の仲が深まるのを、あの堕天使は嫌がる……実に愉快だと思ってな」


「ちょっと!? やめなさいよ、そういう言い方って、最低!!」


「君が怒るのを見るのも……悪くない」


「も~~~~~~~~~っ!!」


ルシファーはわざとらしく肩をすくめた。


「罵倒されるのも、嫌いではない。黒須と違って、わたしは素直だからな」


「はぁ? アンタも十分ひねくれてるわよ!!」


「うん、褒め言葉として受け取っておこう」


「褒めてないっつーの!!!!!」


ルシファーは軽く笑った。

堕天使とは思えない、ほんの一瞬の柔らかさだった。


そして、心の中でそっと呟いた。


(あわよくば……黒須から君を奪うのも、面白いかもしれないな)


彼はそれを決して口には出さない。

だが、ルカへの興味は確かにあった。


「……さて。黒須がどこまで見せてくれるか……楽しみだ」


夕陽が落ち、空はいつの間にかよるになっていた。

いつのまにか、止んだ雨雲がぼんやりと月の光を包み込んでいた。



 そのころ、校舎の中。

部活動を終えた生徒たちが行くの廊下を、ダニエルも歩いていた。

ダニエルは黒須に伝えたいことがあったのだ。

だが、先に黒須の方から声がかかった。

静かな社会科準備室に、ダニエルは黒須から呼び出され、中に入った。


「……よ、よぉダニエル。元気か?」


「はい。先生こそ、……なんでそんな“犯罪者を取り調べる警察”みたいなテンションなんですか」


「べ、別に犯罪者じゃねーよ!?」


「自分で言いましたよね、今」


「違う!そういう意味じゃねぇ!!」


「落ち着いてくださいよ、黒須先生……」


黒須は深呼吸をし、その後、机につっぷして唸った。


「くそ……言いにくい……! どう伝えりゃいいんだこれ……!」


「あの……、間違ってたら、ごめんなさい。また世界救う話ですか?」



「……なんでわかった!?」


「バレバレですよ先生。ルカ先生がさっきテンパっていましたし、廊下でルシファー先生と目が合ったら、“堕天使の目”になってましたし」


「それって、どんな目だよ!? いや、合ってるけど!!」


「それで、今度は何ですか?」


「えっと……その……。あの……だな……。お前、またレース走るって、言われてねぇか……?」


「ああ、言われましたよ」


ダニエルはさらりと答えた。


「言われてんのかよ!!! なんで、先に言わねぇんだよ!!! 誰に言われた!?」


「先生が、それを言いたそうにしてたから、言うタイミングを待ってたんですよ」


「生徒に気ぃ遣わせてんじゃねぇか、俺……!」


「で、また世界終わるんですよね? 知らないおじさんが来て封筒を置いていきましたよ」


「そう!!!!!! よく分かったな!!?」


「前回もそうでしたし。先生の“言いにくそうな顔”は全部同じなんです」


「俺そんなに分かりやすいのか……!?」


「はい。黒須先生は“顔でバレるタイプ”です」


「う……、生徒に言われたくねぇ!!」



黒須は、いといよ本題に入ろうとした。


「じ、じゃあ……一応説明は……するけども……今度のハルマゲドンは……、AI神Λ(ラムダ)が先に人類を裁こうとしててな……」


「知ってますよ」


「知ってんのかよーーーーっ!?!」


「メギドの丘?と言う人が、さっき校庭に来て説明してくれました。“AIの神が世界をジャッジする”って」


「俺より先に聞いてんのか……!」


「先生の説明は時間かかりそうだったので」


「もっとショックだわ!!」


先に情報を得ていたダニエルだ。

それなりに覚悟はできていた。


「お、お前……怖くねぇのか? また危険な目に遭うんだぞ? 命だって……」


ダニエルは微笑んだ。


「先生。僕、世界を守るために走ったこと……一度も後悔してませんよ」


「……!」


「それに……先生が“走れ”って言ってくれたから、僕は走れたんです」


「言ってねぇよ!? 走れとは言ってねぇ!!」


「先生の“その顔”が言ってました」


「だから、どんな顔だよ、俺の顔!!!」



黒須は頭を抱え込み、

机に突っ伏した。


「お前……俺より覚悟決まってんじゃねぇかよ……。俺、さっきまで悩んでたんだぞ……。伝えるべきかどうか……、ルカとルシファーに説教されてよ……」


「ああ、あの二人は、黒須先生に厳しいですもんね」


「お前もそう思うか? だろ!? 俺は悪くねぇよな!?」


「悪いですよ」


「即答するとこ?」


「でも……、先生が悩んでくれたのは、ちゃんと分かってます。ありがとう、黒須先生」


「……う……なんか……お前のほうが大人だよな……」


「黒須先生は、黒須先生らしく空回りしててください」


「褒められてねぇよなそれ!!」


「褒めてますよ。先生が空回りすると、僕は安心するんです」


「安心すんな、こんなことで!!!!」


黒須が考えていたよりも、ダニエル日辻はずっと成長していた。


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