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ハルマゲドン始まったってよ ~堕天使教師とマッチングしたのは天使エージェントだった~  作者: 白神ブナ
第四章 天使たちのアップグレード

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第103話 VR授業の“余波”

 黒須のVR授業が終わって、数日たった。

校内は、まるで学園祭のあとみたいな空気、“VR授業ロス”に包まれていた。


生徒たちは、ずっとVR授業の話題で盛り上がっていた。


「ラストのVR、すごすぎたよ!」

「黒須先生、ネットでバズってるよ」

「“世界史を変える授業”って言われてる!」


黒須が生徒たちの後ろから声をかけた。


「おーい……勝手に拡散すんなよ……。職員会議で面倒くさいことになる」


生徒たちは驚き、キャーキャー言いながら黒須の後をついて歩いた。


ルカは、教材を運びながら、黒須の生徒たとのあおのまた後ろを付いて歩く。

本採用で入ったのに、いつの間にか、黒須の助手ポジションに落ち着いていた。


「ねえ、誰か。教材の運ぶのをてるだtってくれる?」


「あ、ルカ先生だ。ばて蕎麦の言うことは聞かなきゃねー」

「そう、そう。黒須先生に戦いの最前線に行かされちゃうからねー」


「こら、お前ら。もっといいところ覚えろよなぁ」


生徒たちは、ふざけな会いながら、階段を上って行った。

暫くしてから、ルカはそっと言った。


「人気が出るのは悪いことじゃないけど……ちょっと、嫌な予感がするわね……」


「やっぱりか。俺もだ」


ルカの後ろを歩くウリエルも、たまたま行先が一緒なだけで、黒須の助手に見られていた。


「……ルカ先輩。実は昨晩、天界側の“観測システム”が反応したんっすよ」


そして、三人は社会科準備室に入った。

黒須は、振り向いてウリエルに聞いた。


「観測? 俺ら、何かやばいことしたか?」


「ルカ先輩に言ったつもりです。……ま、いいか、同じか。VR授業の“天使アバター”のデータが、外部のアクセスを受けました」


“天使アバター”と言えば、ルカとウリエルのことになるが、これには堕天使も含まれる。

つまり、教師アバターが不正アクセスを受けたということだ。


「……外部? 誰だよ、そんなもん見たがるやつ」


「黒須先生……、その言い方、なんとかならない? そんなもんって何」


ウリエルがタブレットを見せた。

そこには意味不明なアクセスログが並んでいた。


《アクセス元:文科省外郭団体 → 未登録アドレス》

《目的:VR神学データ・天使の行動パターン収集》

《転送先:不明(暗号化)》


黒須は首を傾げた。


「見てもさっぱりわからねぇ。文科省? なんだそれ……なんであいつらが……?」


ウリエルは、ノートパソコンを自分の手元に戻した。


「文科省は“VR教育モデル校”のデータを自動収集しているんです。本来は授業改善のため……ですが……」


「そこに“闇の組織”が目をつけたってわけね。ウリエル」


「……闇の組織だとぉ? あいつら、まだ生きてやがったのか」


ウリエルは、黒須にもっとも痛い被害を打ち明けた。


「黒須先生。“封印を解いた生徒の、”ダニエルのデータも、同時に抜かれました」


「ダニエル!? なんであいつの記録が……!」


「《ハルマゲドン封印事件》の記録です。黒須先輩が隠していたアレ……もうバレています」


「あれって、マッチングアプリか……ちっ……!」


ルカは、額に手を当ててあきれ果てた。


「ちゃう、ちゃう!! アレとは、ダニエルの “獣をロクさんにしてしまったこと”でしょ」


「いや、あれはとっくにバレてた。他にバレるものと言ったら……、やっぱりエロ小説を読んでいたことか。それとも、昨夜飲み屋の姉ちゃんをからかったことか……」


「おい、どんだけ余罪が出て来るのよ。もうない? 話を進めていいの?」


「あ、ごめんなさい。もうしません、ルカ先生」

「本題に戻るわよ。VR授業のデータを抜くということは、普通の民間組織じゃ無理。なぜなら、聖書の記録がサーバーに残っていると言ったら天界でしょ? 天界に入れるということは、地獄に協力していること。しかも “文科省ルート”で動く闇の組織がある。つまり、政府内部に地獄の協力者がいるってことよ」


「協力者 ?誰だ……?」


ウリエルはタブレットに持ち替えて、ルカに差し出した。


「この人です」


「ん? ルシファーじゃないのか?」


タブレットにあえう男の写真が映った。

文科省の職員で、柔らかい笑顔をした中年男性……だが目が笑っていない。

プロフィールを読むと……、

《文科省 事務次官補》

《裏金疑惑:捜査中で不起訴》

《関係:闇の組織とのマネーロンダリングを仲介》


「……こいつが……文科省を使って闇の組織に協力してるわけか。それにしても冴えない顔だなぁ」


「どこにでもいる顏ってのは、一番使いやすいのよ。そして彼らの目的は……、

“再びハルマゲドンを起こすこと”かしら?」


ウリエルは頷いた。


「方法は……ダニエルを使って」


「……ッ!!

 ダニエルは利用されるために生まれて来たんじゃないぞ……」


「黒須先生。闇の組織が、ルシファー上官に“裏金”を渡した形跡があります」


「はあああ!? ルシファー!? あの野郎……また裏で何してやがる!」


「違うわよ、黒須先生。ルシファーは受け取る“フリ”をした可能性が高いわ」


「フリ……?」


「彼は、“敵の情報を泳がせるためにあえて買収されたフリをした”のかもよ。天界戦略の常套手段。」


「なるほど……相変わらず腹黒いな」


「ちょっと、あなたに言われたくないわ」


「おい、どういう意味だ」



そして、闇の組織は動いていた。

その頃、東京のあるビルの一室で、ダークスーツを着て立派な椅子に座った男は部下に確認していた。


「……例のVR授業、見たか?」


「はい。天使の行動データが豊富に入っていました。特に“ミカエルアバター”の動きは貴重です」


「文科省の職員には“謝礼”を用意してあるだろな。それより……またハルマゲドンを起こせるか?」



「できます。以前、封印を破った“ダニエル”という少年、まだ悪の力は残っています。可能性はあります。」


「使え。天使たちが再び混乱すれば……勝機がある」




放課後。

青葉学院高等部の校庭に、ひとりの生徒が立っていた。


ダニエル日辻だ。


前より少し背が伸び、転校してきたときよりずっと暗い目をしていた。


「……黒須先生。また……“あれ”、始まるよ。僕、組織から……呼ばれました。

 “走れ”って。“ハルマゲドン・レース”だって。そんなん、無理だよ……」


誰もいない校庭でつぶやくダニエルを、さぁーっと風が通り過ぎて行った。

雨は校庭にたたずむダニエルの髪もメガネも、制服も濡らし。あしもとには泥の水たまりが出来ていた。



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