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姫、出番です!  作者: 双鶴


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7/7

姫、いよいよです

市役所の屋上。

折りたたみ椅子が並び、白布のスクリーンが風に揺れている。

上映会の開会宣言は、もちろんこの人。


「出番ですぅ〜!」


甲冑姿のゆるキャラ“かいひめちゃん”が、ラムネ片手に叫んだ。

市民たちは笑い、子どもたちは踊り、鷹見迅はマイクを握った。


「史料は少ない。創作もある。

 でも、語られなかった者の物語には、語る価値がある。

 姫は、確かにここにいた。

 だから――姫、出番です」


スクリーンに映し出されたのは、三輪ひなたが制作した短編映画。

甲斐姫が妹の髪を結い、甲冑を着て出陣し、泥まみれで戦い、湯殿で笑う。

ラスト、姫が語る。


「私は語られなくてもいい。

 でも、誰かが思い出してくれるなら、それで十分」


沈黙。

風が吹いた。

誰かが、ぽつりと呟いた。


「素敵なお姫様だったね」


早乙女みちるが、涙ぐみながら言った。


「ちゃんと、ここにいた」


子どもが叫んだ。


「姫って、かっこいいね!私も槍やりたい!」


鷹見は、ホワイトボードの式を思い出した。


姫=美人=勝てる


彼は、心の中で最後の書き換えをした。


姫=語られぬ者=語る価値あり


そして、静かに呟いた。


「史料は少なかった。創作もあった。

 だけど、姫の名を呼ぶ声は、確かにここにあった。

 誰かが語り、誰かが笑い、誰かが涙した。

 それならもう、十分だ。

 姫、出番でした」


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