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5話-スコット-

黒煙の立つ王都外縁に到着した瞬間、空気は一変した。焦げた匂いと、ざらついた魔力の気配。大地には黒々とした魔法陣が焼き付けられ、まるで呼吸するかのように脈動していた。


「……これが儀式痕か」

 思わず息を呑んだ俺に、ミリアが小さく頷く。

「完全に生きている。まだ誰かが……ここに」


 その時。


「――おや、客人か」


挿絵(By みてみん)


 低く冷たい声が陣の中心から響いた。


 黒外套を羽織り、長い鎌を片手にした男がゆっくり歩み出る。灰色の瞳は氷のように濁り、笑っているのに笑っていない。胸元の紋章――七芒星と荊冠。誰もが息を呑んだ。


「《大罪教》……!」

 周囲の学生がざわめく。


 男は軽く外套を払った。

「名はスコット。陽光の信徒が一人――だが覚える必要はない。今宵ここで、お前たちは名を呼ぶ暇もなく散るのだから」



◆第一撃


 言葉と同時に、スコットが鎌を振り下ろした。

 地面に刻まれた陣が爆ぜ、炎柱が天を衝く。熱波が押し寄せ、前列の兵士が吹き飛ばされた。


「なっ……!」

「下がれ!」


 教師陣が結界を展開し、辛うじて直撃を防ぐ。

 けれど、たった一振りで戦場が塗り替えられた。


 俺は剣を抜き、トーマと背中を合わせる。

「行くぞ!」

「お前正気かよ!? でも――やるしかないか!」


 ミリアは短杖を構え、詠唱を開始した。

「《光よ、護れ――シールドライト》!」

 淡い光壁が俺たちを包み、炎の余波を受け止める。



◆近接戦


「子供が前に出るか。愚かだが……嫌いじゃない」

 スコットの灰瞳が俺を射抜いた。


 一瞬で距離を詰め、鎌が横薙ぎに振るわれる。

 風圧だけで地面が裂け、肺が押し潰されるほどの圧力。


「くっ!」

 必死に受け流す。木剣ではない、今は本物の鉄剣だ。それでも衝撃は骨に響き、腕が痺れる。


「まだ立つか」

「当然だ……!」


 剣を滑らせ、足を踏み込む。だが、鎌のリーチは長い。踏み込むより先に、切っ先が迫る。


 トーマが割って入り、短槍で軌道を逸らした。

「お前ばっかり死なせるかよ!」

「助かった!」


 すぐさまミリアの魔弾が飛ぶ。光の矢が三発、スコットを射抜こうとする。


 だが、鎌の一振りで消えた。

「小手調べだ。だが悪くない連携だな」



◆圧倒的差


 次の瞬間、スコットの鎌が地面を突く。

 陣が眩く光り、無数の火の矢が降り注いだ。


「防御!」

 ミリアが必死に結界を張る。だが完全には防ぎきれず、肩を掠めた炎が俺の肌を焼いた。


「ぐっ……!」

「セイン!」


 痛みに歯を食いしばる。足を止めたら終わる。


「俺は……止まらない!」

 声を張り上げ、再び踏み込む。


 スコットは冷笑した。

「その目……気に入ったぞ。だが弱い」


 鎌が振り下ろされる。剣で受ける。火花が散り、耳が割れるほどの衝撃。膝が沈み、視界が揺れる。


「ぐああっ!」


 押し潰される――そう思った瞬間。


 胸のペンダントが強く光った。



◆反撃の旋律


 鼓動が、耳の奥で響く。夢で聞いた旋律。

 視界の霞が晴れ、剣が妙に軽く感じられる。


「セイン……その光……!」

 ミリアの声が届く。


 俺は叫んだ。

「行ける……!」


 剣を振り上げ、鎌を弾いた。重さが嘘のように消え、勢いのまま斬り込む。

 スコットの灰色の目が、僅かに見開かれた。


 剣が頬を掠め、外套を裂いた。


「……ほう」

 笑みが深くなる。

「面白い。やはりその石か。ならば今日は、試し斬りで終えてやろう」


 鎌を振るい、炎を爆ぜさせると、スコットは黒煙と共に姿を消した。



◆戦いの余韻


 静寂が戻る。

 焼け焦げた地面、崩れた陣。息が荒く、剣を握る手が震えていた。


「……助かったのか?」

 トーマが呟く。


 ミリアは俺を見つめ、唇を噛んだ。

「彼はまだ本気じゃなかった。次は――もっと強い」


 俺は胸のペンダントを握る。まだ温かい。


「スコット……。あれで幹部の一人か」


 強さの次元が違った。だが一瞬だけ、届いた。

 光はまだ消えていない。


 俺たちの戦いは、ここからだ。

 「面白かった!」


 「続きが気になる、読みたい!」


 「今後どうなるの!!」


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