23話-試練-
アウリスの低い声が石造りの広間を震わせた。
「力を宿すか、虚ろなる器か――それを見極めねばならん」
次の瞬間、杖の先から放たれた光が床に描かれた魔法陣を走り、空気が反転する。まるで重力ごと裏返るような感覚に包まれ、俺たちの視界が闇と光の狭間に引きずり込まれた。
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試練の間
気づけば俺たちは魔塔の広間に立っていた。天井は高く、漆黒のアーチが続く。壁には巨大な魔法結晶が灯り、蒼白い光が揺れている。中央には空虚な石舞台。そこに一人、鎧を纏った巨躯が姿を現す。
銀の鬚。燃える眼光。見間違えるはずがない――ヴァルター。
いや、これは実体ではなく幻影。しかし放たれる気迫は、本物と寸分違わぬものだった。
「……先生……」
思わず呟く俺に、幻影は容赦なく大剣を振り下ろした。轟音と衝撃。石舞台が砕け、衝撃波が広間全体を揺るがす。
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セインの覚醒
「ぐっ……!」
トーマが前に出て盾で受け止める。だがその膝が沈むほどの一撃。
「トーマ!」叫ぶ声と同時に、胸の石が灼けるように脈打った。
右手に重み――光の剣が形を成す。
俺は無我夢中で構え、幻影へと斬り込んだ。火花が散り、衝撃が骨を軋ませる。だが不思議と恐怖は薄れていた。
耳の奥に微かな声。――《進め、迷うな》
ヴァルターの声だ。残穢が、俺を導いていた。
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ミリアの覚醒
「セイン!」
背後でミリアの声。彼女の掌から白光が溢れ、倒れかけたトーマを包み込む。温かな癒光と共に、小さな精霊が舞い散った。
「回復……? 私が……?」
驚愕するミリアだが、精霊たちは矢となって幻影に飛び、鋭い光の雨となった。
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トーマの進化
光を浴びたトーマが再び立ち上がる。盾に紋様が浮かび、魔力の壁を作り出す。
「俺が砦になる! 行け、セイン!」
幻影の大剣が振り下ろされる。轟音。しかし今度は、トーマの盾がそれを受け止めた。膝を沈めながらも退かないその姿は、広間の守護神のようだった。
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三人の連携
トーマの盾が隙を作り、ミリアの精霊が幻影を縛る。
俺は光剣を振り抜き、幻影を貫いた。
瞬間、広間全体が光に弾け、幻影は霧散する。静寂。砕けた石舞台の中央に、俺たち三人だけが立っていた。
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アウリスの評価
広間の高座からアウリスの声が響く。
「……見た。未熟ながらも、確かに連携して力を制御した。ヴァルターの残穢は確かにお前に宿っている」
兵士や弟子たちがざわめき、視線に畏怖と好奇が混じる。
だがアウリスの眼差しは依然冷たい。
「残穢に頼るだけなら、それは傀儡にすぎぬ。己の意思で制御できねばならん」
「俺は必ず証明します。ヴァルター先生の遺志を――俺自身の力として!」
俺の声は広間に反響した。
長い沈黙の後、アウリスは頷く。
「よかろう。監視下に置くが、魔塔での実践訓練を許可する」
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新たな誓い
緊張が解け、俺たちは互いに視線を交わす。
「……やったな」トーマが笑い、ミリアが涙混じりに頷いた。
俺は拳を握りしめる。
「必ず力をつける。三人で。ヴァルター先生の想いに報いるために」
冷たい広間に交わされた誓いは、確かな熱を宿していた。
そして――魔塔での苛烈な日々が始まろうとしていた。




