第4章:「家族の誓いと、秘密の出産」
春から夏へ移ろう頃。
美湖と美咲の小さなお腹は確実に膨らみ始めていた。
遥輝は日々変わる2人の体調に寄り添い、献身的に支え続けていた。
「ふぅ……今日も、少し疲れたね」
ソファに腰掛けた美湖が、遥輝に甘えるように寄りかかる。
「大丈夫? ちゃんと休もうね」
遥輝はその背中を優しく撫でた。
「……ん、ありがとう」
美湖が顔を上げ、彼の唇へとゆっくりとキスを落とす。
「遥輝くんのキスはいつも、安心できる」
その言葉に、遥輝は胸の奥が熱くなるのを感じた。
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一方、美咲は夜に体調が揺らぐことが多く、遥輝はそっと彼女の手を握る。
「眠れないときは、いつでも言ってね」
「うん、ありがとう……あなたがいてくれて良かった」
美咲の瞳がじんわりと潤み、彼女の口元にキスをする。
「僕のすべてをかけて、君たちを守るよ」
3人は夜ごと寄り添い、互いの体温を感じ合いながら、少しずつ「家族」のかたちを作っていった。
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夏の終わり。ついに2人の出産予定日が近づく。
しかし、誰にも知られたくない秘密のため、産院も慎重に選ばれていた。
「きっと大丈夫。遥輝くん、側にいてね」
美湖が力強く微笑みながら手を握った。
「もちろん。2人とも無事に産んで、みんなで笑おう」
美咲も同じ思いだった。
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そして、運命の夜。
美湖の陣痛が始まり、遥輝は慌てながらも2人の女性を産院へ連れて行く。
待合室で彼は手を握り締めながら、美湖と美咲の名前を心の中で呼んだ。
「頑張って、2人とも。もうすぐ会えるよ」
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数時間後、淡い産声が病院に響いた。
「おめでとう。どちらも元気な赤ちゃんよ」
遥輝は産声を聞きながら、目に涙があふれた。
「俺たちの家族が、今ここに生まれた」
産室に入ると、美湖は小さな男の子を抱き、美咲は小さな女の子を抱いていた。
「この子の名前は……」
美湖が静かにささやく。
「……僕の苗字を付けたい」
「私は、荻原をそのままにしたいの」
美咲は微笑みながらも、誇らしげに言った。
遥輝は頷き、2人の決断を尊重した。
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その夜。3人と2人の赤ちゃんは静かに眠りについた。
遥輝は美湖と美咲の額に、深く長いキスを交わす。
「ありがとう。君たちと、そしてこの命に感謝する」
2人は目を閉じ、彼の腕の中で小さくうなずいた。
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こうして、秘密の家族は確かな愛の絆で結ばれた。
苗字は別々でも、心はひとつ。これからもずっと、3人と2人の命は永遠に結ばれていく。