第3章:「交わる未来と、ふたつの命」
4月、大学生活が始まって間もないある日の朝。
遥輝が目を覚ますと、ベッドの両隣に2人の温もりがあった。
「……おはよ、遥輝くん」
美湖が柔らかな笑顔で頬にキスを落とす。寝起きでも可憐なその表情に、遥輝は自然と頬を緩めた。
「うふふ……美咲ちゃんのほう、まだ寝てるみたいね」
黒髪ショートの美咲は、遥輝の腕に抱きつくように寝息を立てていた。
小さく上下する胸元、その穏やかな表情に、遥輝は思わずキスを落とす。
「ん……もう、朝から大胆ね……遥輝くん」
目を開けた美咲が、少しだけ頬を赤らめた。
「だって、2人とも綺麗だから……キスしたくなるの、当然でしょ?」
遥輝の言葉に、美湖と美咲は顔を見合わせ、頬を染めながら小さく笑った。
⸻
朝食を終えた後、美湖がふと真剣な表情を見せた。
「……遥輝くん、少し話があるの」
「私からも」と美咲も続いた。
遥輝は緊張しながらも頷いた。
「実はね……」
美湖がゆっくりと手をお腹に当てる。
「……赤ちゃん、できたの」
遥輝は言葉を失った。息をのんだその隙に、美咲もそっと彼の手を取った。
「私も。妊娠、してるの。遥輝の、子よ」
しばらく沈黙が流れた。
しかし次の瞬間、遥輝は2人の手を強く握りしめた。
「……ありがとう。俺、ちゃんと受け止める。家族になろう、3人で。いや、これからは……5人で」
2人の瞳から、静かに涙がこぼれた。
遥輝の腕の中で、美湖と美咲は交互に彼の胸に顔を埋め、抱きしめ返す。
「嬉しい……こわかったけど、遥輝くんなら……信じてよかった」
「あなたの子を、ちゃんと産むわ。一緒に育てていこうね」
⸻
その夜、3人はこれまでで一番深く、優しいキスを交わした。
美湖の唇に、そっと口づけると、彼女は目を潤ませながら微笑んだ。
「お腹の赤ちゃんも、キスされて喜んでるかもね」
次に、美咲の頬にキスし、彼女の唇を優しく吸った。
そのキスは、ただ情熱的なものではなく、深い愛と責任をこめたものだった。
「……遥輝。これからは、パパなのよ?」
「うん。ママたちも、俺が守る」
3人の唇が再び重なり、愛が確かにそこにあった。
未来は決して平坦ではない。けれど彼らは、もう怖くなかった。
なぜなら――ふたりの命を、三人の愛で育てていく覚悟が、確かに交わされたから。