第2章:「秘密の同居と重なる唇」
――卒業から数週間後。
春の暖かさが町を包み始めた頃、遥輝は両親に「大学の近くで一人暮らしをする」と言い、あるマンションへ引っ越した。
だがその部屋には、誰も知らない“特別な同居人”が2人いた。
高瀬美湖と荻原美咲――遥輝が愛し、そして愛される2人の教師だった。
公にはできない関係。
だが卒業を機に生徒と教師という境界線を越えた3人は、今、小さなマンションで密やかな愛を育んでいた。
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夜のリビング。静かな照明の下で、3人は肩を寄せてソファに座っていた。
「ふふ、なんか不思議ね。こうして3人で住んでるのが、夢みたいで」
そう微笑むのは、美湖だった。茶髪のロングがさらりと肩を撫で、やわらかいバストが遥輝の腕に触れていた。
「夢みたいじゃなくて、本当に幸せだよ、俺」
遥輝はそう答えながら、美湖の頬に手を添えた。指先が触れるたび、彼女は照れたように目を伏せる。
「……ねえ、キス、してもいい?」
美湖は驚いたように見つめ返し、でもすぐにうなずいた。
「……うん。いっぱい、して?」
遥輝はそっと彼女の唇にキスを落とす。軽く触れるだけの、最初の一秒。
けれど、次第に深くなっていく。唇と唇が押し合い、彼女の吐息が熱を帯びる。
「んっ……はぁ……遥輝くん、上手になった……ね……」
キスの合間に、彼女の手が遥輝の首筋を撫で、胸元に顔を埋める。
「ぎゅって、して……」
遥輝は優しく彼女の身体を抱きしめた。柔らかな胸の感触が、服越しでもはっきり伝わってくる。胸の奥がドクンと熱くなる。
そのとき――
「……2人だけで、ずるいじゃない」
振り返ると、キッチンから冷たい水の入ったグラスを持った美咲が立っていた。
黒髪ショートに知的なメガネ姿。少し拗ねたようなその表情が、なんとも愛らしかった。
「ごめん、美咲先生。じゃあ――」
遥輝は立ち上がり、美咲のグラスを受け取った。そして、そのまま彼女を抱き寄せ、唇を重ねた。
「……ん、ちょっと……急すぎ……ふふ、でも……うれしい」
美咲の唇は少しひんやりとしていて、だがその奥に秘めた熱が伝わってくる。
遥輝は彼女の背を撫でながら、もう一度、深くキスを交わした。
「……今日は、特別に許す。でも今度は、私のほうが先よ?」
「じゃあ、俺が順番に何回でも……」
「ふふ、欲張りね……でも、それがあなたらしいわ」
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夜。3人はひとつのベッドに寄り添って眠るようになっていた。
「こうしてると、全部夢みたいで怖くなるの」
美湖がぽつりとつぶやいた。
「大丈夫だよ。俺が2人を守る。どんな形でもいい。3人で、家族になろう」
遥輝のその言葉に、美咲が静かに手を伸ばしてきた。
「――キスして。そう言われたら、黙っていられない」
美咲にキスをする。美湖にも、もう一度キスをする。
そして3人の唇が重なって、甘く深く、夜は溶けていった。
まだ誰にも言えない。けれど確かにそこにある、3人の秘密の愛。
それが、これから始まる新しい家族の形だった。