第4話:独占欲と嫉妬と、愛の証明
──ふたりの先生と、朝まで甘くてキケンな同棲生活
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「……遥輝くん。最近、ちょっとだけズルい」
ふいに、美咲先生がそんな言葉を口にしたのは、金曜の夜だった。
キッチンで洗い物をしている僕の背後から、ぴったりとくっついてくる。
「えっ、なにがズルいんですか?」
「わかってるくせに……ふたりにキスして、ふたりに優しくして、ふたりと……あんなことして」
「……それは、ふたりとも好きだから……」
「そう。好きなのは、わかってる。ううん、すごく伝わってる」
美咲先生は僕の背中に額を預けて、切なげに笑った。
「でもね……“一番”になりたいって、思っちゃいけないのかな?」
静かに流れていた空気が、ぴたりと止まった。
僕は振り返って、彼女の手をそっと握った。
「美咲先生は、特別です。僕の“いちばん可愛い人”です」
「ふふ、そういうのずるい……もう」
くすぐったそうに笑いながらも、美咲先生の目はほんの少し潤んでいた。
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その夜、美湖先生も、どこか様子が違っていた。
リビングで本を読んでいた彼女は、僕が声をかけるとゆっくりと眼鏡を外し、こちらを見た。
「……あなた、私たちのこと、本当に平等に見てるの?」
「もちろんです。どっちかなんて、選べません」
「それが──わたしたちを“同じだけ”愛していることにはならないのよ」
低い声だった。
だけど、その言葉には深い孤独と、不安がにじんでいた。
「……ごめんなさい、美湖先生」
「謝らないで。私は、あなたが優しすぎることを責めてるの」
「だったら──どうすれば……?」
「……私を抱いて。“私だけ”を感じて」
その一言で、すべての理性が吹き飛んだ。
美湖先生の腕の中で、僕は彼女の熱をすべて受け止めた。
キスは深く、啼き声は甘く、肌が触れ合うたびに心が求め合っていた。
「お願い……もっと……あなたを感じさせて……」
「はい……美湖先生、好きです……」
部屋に響いたのは、甘く苦しい愛の吐息だけだった。
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次の日。
朝食の席、ふたりの先生が同時に僕の名前を呼んだ。
「ねえ、遥輝くん」
「遥輝くん……話したいことがあるの」
ふたりとも、真剣な目をしていた。
「……私たち、決めたの」
美咲先生が続ける。
「“順番”とか、“交代”とか、そういうのやめようって」
「え……?」
「もう、我慢したくないの。あなたに触れたくなったら触れて、キスしたくなったらキスして、抱きしめたくなったら……」
「好きって、何かを遠慮することじゃないと思うの」
「だからね、遥輝くん。お願いがあるの」
「……はい」
ふたりが同時に言った。
「“愛してる”って、ちゃんと言って」
静まり返る食卓で、僕は息を呑んで、彼女たちを見つめた。
そして──
「……愛してます。ふたりとも。全部含めて、ぜんぶ愛してます」
その瞬間、美咲先生が椅子から立ち上がり、僕の頬にキスをした。
続けて、美湖先生も、口元にそっと唇を寄せてきた。
「……ありがとう。ようやく、私たちも“恋人”になれた気がする」
「うん……もう、こっちのものだからね?」
どちらか一人ではなく、ふたりとも。
この気持ちを、誰かに理解してもらう必要はない。
“愛”は、定義じゃない。かたちじゃない。
心が、求めたものがすべて。
そして僕たちは──
今夜も、ひとつのベッドで、ひとつになった。




