表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「二つの苗字、僕たちの秘密の絆 〜遥輝と教師ふたりの約束〜」  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
『ふたりの先生と、朝まで甘くてキケンな同棲生活』
17/21

第1話:卒業式の告白と、ふたりの返し


『ふたりの先生と、朝まで甘くてキケンな同棲生活』

副題:ラブもエッチも3人で♡先生たちと秘密の生活 より




──ふたりの先生と、朝まで甘くてキケンな同棲生活



卒業式の日。

空は晴れていたけれど、風は冷たく、春の訪れを少し先送りにしているようだった。


藤原遥輝ふじわら・はるきは、少しだけ早足で母校の校門をくぐった。黒い制服に身を包み、胸には真新しい白い花──卒業生の証。


心臓が、少しずつ早くなる。

この日を待っていた。

この日が来るのを、ずっと──願っていた。


「……あの人に会うために、今日までがんばったんだ」


誰に言うでもなく、呟く声はかすかに震えていた。

その震えは、不安でもあり、期待でもあり、そして覚悟でもあった。


──職員室。


ドアの前に立ち、軽く深呼吸をしてから、静かにノックをした。


「失礼します」


すっと開いたドアの奥。

いた。


ひとりは、長い黒髪を後ろでまとめ、知的な眼差しの国語教師・高瀬美湖たかせ みこ

もうひとりは、明るい茶髪をゆるく巻き、快活で親しみやすい雰囲気を持つ英語教師・荻原美咲おぎわら みさき


どちらも、遥輝が在学中──密かに、そして深く、惹かれていた人。


「……藤原くん? あら、卒業式もう終わったのよね」


「来てくれたの? 嬉しいな」


美咲先生が人懐こい笑顔を見せ、美湖先生が少し驚いたように眉を下げる。


その様子を見て、遥輝の胸の奥で、カチリと何かが外れた。


──もう、迷わない。


「先生たちに、伝えたいことがあります」


ふたりの視線が、静かに彼に注がれる。


「……好きです。ずっと、好きでした。ふたりとも、です」


一瞬、時が止まった。


美咲先生の目が丸くなる。

美湖先生は、何も言わず、ただじっと遥輝を見ていた。


「……ふたりとも、って。私たち、先生よ?」


美咲先生の声には、少しの照れと、戸惑いが混じっていた。


「でも……卒業したからって、そう簡単に……」


遥輝は一歩、前に出る。

背筋を伸ばし、まっすぐにふたりを見る。


「今日で生徒じゃなくなりました。もう、誰の許可も必要ありません。僕は──おふたりを本気で愛しています。どちらか一人を選ぶなんて、できません」


言い切った。

心が、静かに波打つ。


「いけない子ね……」


美湖先生が静かに立ち上がり、近づいてきた。

その目は、いつものような冷静さとは違う、どこか艶を帯びた光を宿していた。


「そういうところ、昔からずるいわよ、藤原くん」


「……でも、嫌いじゃないよ、そういうの」


美咲先生も笑って近づいてくる。


ふたりの距離が近づく。

まるで挟まれるように、彼女たちは遥輝の左右に並んだ。


「卒業祝いに、チューでもしてあげよっか?」


美咲先生がそう囁いた瞬間、遥輝の頬に、柔らかな唇が触れた。

温かくて、甘くて、そしてほんの少しだけ震えている。


「……先生」


遥輝が呟いたその声に、今度は美湖先生が顔を近づけ、口元にそっとキスを落とした。


静かな、けれど深いキスだった。

熱がこもり、触れるだけでは終わらない。

言葉では足りない想いを、唇の感触で伝え合うように。


「……本気なのね、あなた」


「だったら、その気持ち……試してみてもいいかもね」


ふたりの先生が、同時に囁いた。



それから数週間後。

遥輝は大学入学のために一人暮らしを始めた。

しかしその部屋には、今や──彼だけのものではない。


キッチンから聞こえるフライパンの音。

ソファでテレビを見ながら笑う女性の声。

そして夜、ベッドで甘く名前を呼ぶ吐息──


この日から始まったのは、恋ではなく、「暮らし」。

そして、秘密という名前の甘くてキケンな共同生活だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ