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終焉の旅路  作者: 椿野蒔琉


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夢と現

短めです。

ユリオは、夢を見ていた。


まだ「ユリオ」ではなかった頃。

ただの子どもだった自分が、人として幸せだった時代の夢。


呪血の一族として生まれたことを、当時の自分は知らなかった。

両親は優しかった。声をかけてくれた。手を握ってくれた。

顔はもう思い出せないけれど、暖かかった。

遊んだ仲間たちもいた。名前も曖昧になってしまったけれど、よく笑っていた。

先生もいた。勉強を教えてくれた。生き方も、夢の持ち方も。


……楽しかった。完璧だった。幸せだった。


だけど、帝国がやってきた。


一夜で、すべてが奪われた。

優しかった両親も、無邪気だった友達も、教えてくれた先生も。

「呪われた血だ」と、そう言われて焼かれた。

家も、名も、明日も、すべて灰になった。


だから逃げた。逃げて、逃げて、逃げ惑った。

そして、その果てで彼と出会った。


ーーセイン。


帝国と同じ服を着ているのに、なぜか安心できた。

不思議だった。でも、ほっとした。

彼の声には、あの焼ける夜にはなかった優しさがあった。


けれど、また逃げることになった。

セインも追われる身になったからだ。

僕たちは一緒に走った。あまり眠らず、歩いた。手を離さずに。


でも……追いつかれた。


金の髪の男の人が、剣を持っていた。

僕を刺した。そのまま、何もなかったように。

仕事のように。感情のない手つきで。


だけど――生きていた。

セインが命を分けてくれたのだと、あとで知った。


その男は、セインも刺した。

僕の目の前で、同じように、あっさりと。


それがあまりに冷たくて、理解できなくて、

頭の中がぐちゃぐちゃになった。


怖くて、木陰に飛び込んで、息を殺して隠れた。

ガサゴソと足音がして、何かを探している音がして、

やがて静かになった。


そのあとで、黒髪の男の人が現れた。

セインを見て、泣いていた。

僕の知らない人なのに、泣いていた。


それだけで、この人は味方だと感じた。


でも――また、あの金の髪の男が戻ってきた。

黒髪の男も、同じように刺された。


……もう、何が悪かったのか、わからなかった。

どうして僕たちは、生きているだけで刺されるのか。

どうして誰も、助けてくれないのか。


全て、おしまいにしたかった。


だから。

「――体を、貸してくれる?」という声に、簡単に頷いた。


それで、前の名前を捨てた。

もう、自分が誰だったかも忘れていいと思った。

「ユリオ」になった。

神の転生体として、生き直すことを選んだ。


けれど――それでも、心の奥ではずっと願っていた。


あの黒髪の男の人に、もう一度会いたいと。


その想いが導いたのか、いつかの旅の果てで彼に出会えた。

彼の名はディランだった。

最初は冷たいように見えた。でも、それは違った。

今は――とても優しい人だと思う。


その途中、百年の幽閉から出てきたサリウスとも出会った。

彼の瞳は、誰よりも長い夜を知っていた。

たった一言で、心の奥まで射抜くような人だった。


そして、心も体も傷だらけのバルク。

彼は怒っている。多くを話さないけれど、それでも僕を守ってくれる。

その不器用な手が、何より温かい。


一人じゃなかった。

逃げて、逃げて、それでもまだ……繋がっていたんだ。


目を覚ましたとき、ユリオの頬には、ひとすじの涙が流れていた。


焚き火の向こうで、ディランが剣を研いでいる。

サリウスが本を読み、バルクが湯を沸かしている。

木々が揺れ、炎が優しく揺らめいていた。


明け方の光は、静かで、そして少しだけ……暖かかった。


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