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異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~  作者: 黒蓬


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第98話 夢魔の贈り物

一日の喧騒が落ち着き、星空が広がる中、悠真は居間でリーフィアとリオンと一緒にユニコーンとの出来事を振り返っていた。


「今日は本当に素晴らしい体験でしたね」


リーフィアの声は穏やかで、その表情には幸福感が漂っていた。


「うん!あんな風に空を飛べるなんて、夢みたいだったよ」


リオンは興奮冷めやらぬ様子で、手に持った宝石を灯りに透かして見ている。


「そうだな。牧場での生活も随分と慣れてきたが、今日みたいな驚きはまだまだあるんだな」


悠真がそう言った時、階段から小さな足音が聞こえてきた。振り向くと、黒いドレスを着たユエがおずおずと降りてくるところだった。


「み、みなさん、おはようございます。……まだ起きていたのですね」


「おはよう、ユエ。あぁ、今日は珍しいことがあってさ。そのことについて話していたんだ」


「珍しいこと……?」


悠真たちがユニコーンと出会ったことや空を飛んだことなどを話すと、ユエは楽しそうに聞いていた。しかし、話が終わる頃になると彼女は残念そうな表情を浮かべていた。


「そんなことがあったんですね。私も皆さんと一緒に飛んでみたかったです……」


彼女の言葉には少し寂しさが混じっていた。悠真はそんなユエの肩に優しく手を置いた。


「いつか夜に機会があれば、みんなでまた飛べるといいな。ウィンドにも話してみるよ」


「本当ですか?」


ユエの瞳が期待に満ちて輝いた。


「ええ、きっとまた機会はあるでしょう」


リーフィアの優しい言葉に、ユエは嬉しそうに微笑んだ。


「ありがとうございます。楽しみにしています」


そうして悠真たちは部屋に戻り、夜は静かに更けていった。


――――――


翌日の夜、牧場の家に静寂が訪れた頃、突然の叫び声が響いた。


「きゃあっ!」


悠真は飛び起きると、急いで二階のユエの部屋へと駆けつけた。ドアを開けると、ユエがベッドの上で小さく震えていた。


「どうした、ユエ?何かあったのか?」


「あ、あの……部屋に……見知らぬ生き物が……」


リーフィアとリオンも心配そうに部屋に入ってきた。


「ユエさん、大丈夫ですか?」


リーフィアが優しく声をかけると、ユエは震える指でベッドの隅を指さした。


「あ、あそこに……」


悠真が目を凝らすと、ベッドの端に小さな影があった。それは猫ほどの大きさで、丸い体に長い耳を持ち、漆黒の体表には星のような小さな光の点が散りばめられている。大きな瞳は夜空のように深く、不思議な存在感を放っていた。


「これは……初めて見る生き物だな」


悠真が近づくと、その生き物は怯えることなく、むしろ好奇心いっぱいに首をかしげた。


「か、かわいい……」


リオンが思わず声を漏らした。


「でも、どうしてユエの部屋に?」


「あの……実は……」


ユエは恥ずかしそうに言葉を継いだ。


「さっき不思議な夢を見たんです。ユニコーンとみんなが空を飛んでいる夢で、そこに私も一緒に居て……とても楽しかったのですが、なんだか妙にリアルだったんです。それで、目が覚めたら目の前にこの子が……」


「それは昨日の……聞いた話を夢に見るのは不思議ではありませんが、もしかしたらこの子と何か関係があるんでしょうか?」


悠真は慎重にその生き物に手を差し出した。生き物は恐れる様子もなく、むしろ喜んで悠真の手に顔を擦りつけてきた。


「可愛いやつだな。例の図鑑に載ってるかもしれないし、調べてみるか」


――――――


居間に集まった一同は、図鑑のページをめくっていた。小さな生き物も興味深そうに傍らで見守っている。


「あった!」


リオンが見つけたページには、まさに今彼らの前にいる生き物の絵と説明が書かれていた。


「『夢魔』……夢の中から現実に現れることがある稀少な魔法生物」


悠真が図鑑の記述を読み上げる。


「『言葉は話せないが、精神感応で感情を伝えることができる。人や動物の夢に入り、時に夢を共有させることもある』……なるほど」


「ユエさんの夢に引き寄せられたのでしょうか」


リーフィアが夢魔を優しく見つめる。夢魔は小さな鳴き声のような音を立て、嬉しそうに首を振った。


「夢を共有させるともあるし、ユエの望みに応えに来てくれたのかもな」


「わ、わたしに……?」


ユエは恐る恐る夢魔に手を伸ばした。夢魔はその手に顔を擦りつけ、優しい感情が波のように伝わってきた。


「そう……あなたがあの夢を見せてくれたのね。ありがとう」


「どうする?この子を飼ってみるか?」


悠真の問いに、ユエは迷いながらも少しずつ頷いた。


「よ、良いのでしょうか……?」


「良いんじゃないですか?牧場には色々な生き物がいるけど、夢魔は初めてですね!」


リオンが元気よく答える。


「えぇ。また不思議な仲間が増えましたね」


リーフィアの言葉に、夢魔は嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねた。


「それなら、何か名前を付けてやらないとな」


悠真の提案に、ユエは少し考えて答えた。


「ド、ドリー……はどうでしょう?夢から来たので……」


「いい名前だね!」


リオンの言葉に、夢魔……ドリーは喜びを表すように体の星々を煌めかせた。


――――――


その日の夜、眠りについた悠真は不思議な夢を見ていた。


見覚えのある高層ビルが立ち並ぶ街。車の音と人々の喧騒。悠真の元の居た世界だ。しかし、そこには不思議なことに、リーフィアやリオン、それにノアリスやユエもいた。


「ここは一体……?」


「なにあれなにあれ~!?見たことないものがいっぱいある~!」


見たことのない世界に困惑している彼らに、悠真はここが自分の元居た世界であることを説明した。


「ここが悠真さんの世界……?」


リーフィアが驚きの表情で周囲を見回している。


「すごい!あれは何ですか?」


リオンは指を指し、空を飛ぶ飛行機を見上げていた。


「あれは飛行機といって、人を乗せて空を飛ぶ乗り物だよ」


悠真が説明すると、みんなの顔に驚きの色が広がった。


「魔法の力なしで空を飛ぶなんて……」


ユエは小さく呟いた。


夢の中で、悠真は彼らを街中へと案内した。高層ビルのエレベーター、地下鉄、スマートフォン、カメラ……すべてが彼らにとって新鮮な驚きだった。


「これが悠真さんの言ってたカメラですか。確かに魔像結晶に似てますね!」


リオンは珍しそうにカメラのレンズを覗きながらそう言った。


「この小さな箱で世界中の人と話せるなんて!」


ノアリスはスマートフォンを不思議そうに触っている。


「電気の力で動く馬車……」


リーフィアは通り過ぎる車を見つめ、その速さに目を丸くしていた。


「この世界には魔法がないけど、代わりに科学という別の力が発展しているんだ」


悠真の説明に、みんなは感嘆の声を上げた。


「悠真さんは、こんな不思議な世界から来たんですね……」


リオンが空を見上げながら言った。その空には、彼らの世界には見られない飛行機雲が白く筋を引いていた。


――――――


朝日が差し込み、悠真は目を覚ました。夢の感覚がまだ鮮明に残っている。


「懐かしい……それに、不思議な夢だったな……」


しばらく夢の余韻に浸ってから食堂に降りると、そこには既にリーフィア、リオン、ノアリス、それに朝には珍しくユエまで集まっていた。ユエの膝の上にはドリーが丸くなって座っている。


「おはようございます、悠真さん。あの……実は私たち昨夜、不思議な夢を見たんです」


リーフィアは悠真に挨拶したあと、そう話した。すると抑えきれないようにリオンやノアリスが勢いよく話し出す。


「夢の中で、悠真さんたちと一緒に別の世界に行って……」


「すごく高い建物と、走る箱と、空飛ぶ大きな鳥みたいなのがいて!」


「みんなも同じ夢を……?」


悠真が驚いて言うと、膝の上のドリーがキラキラと体を輝かせた。


「ドリー、もしかしてキミの仕業か?」


ドリーはただ嬉しそうに首を振った。その体からは温かい感情が波のように広がっている。


「みんなに悠真さんの世界のことを共有してくれたんだね」


リオンがドリーを優しく撫でる。


「悠真さんの世界、とても不思議でした。電気という力で動く乗り物や、高い建物……想像もつかないものばかりでした」


「そうですね……夜も街のあちこちに明るい光があって……」


リーフィアは感慨深げにそう言い、ユエも共感したように呟いた。


「魔法がないのに魔法みたいものがいっぱいあって、すごかったですよね!」


「そうだな。確かに色々と便利で良い世界だと思う。でも、この世界にも素晴らしいものがたくさんあるよ」


悠真はそう言って、窓の外の牧場を見渡した。朝の光に照らされる牧場では、フレアとアクアが遊んでいる姿が見える。遠くにはウィンドが優雅に空を舞い、レインが光の軌跡を描いていた。


「電気もスマートフォンもないけど、この世界には魔法があって、こんな素敵な動物たちもいる」


「そうですね……どちらの世界にも素晴らしいものがありますね」


リーフィアの言葉に、みんなが頷いた。すると、ドリーが嬉しそうに鳴いた。その小さな体から、感謝と幸福感が波のように広がっている。夢を通じて、彼らの絆はさらに深まったように感じられた。


「さて、良い夢だったけど、そろそろ朝の作業を始めないとな。今日も一日頑張ろう!」


「はい!」


悠真の言葉に皆が元気よく返事をして、新しい一日が始まりを告げた。

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