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異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~  作者: 黒蓬


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第84話 便利な新機能、五度目のレベルアップ

朝の柔らかな光が牧場全体を包み込む中、悠真は納屋の前に立ち、額に浮かんだ汗を拭った。早朝から農作業を終え、これから収穫物を納屋に運び入れる作業が残っていた。


「今日も豊作だな」


悠真が呟くと、肩に乗っていたラクルが「クルルー」と鳴き、同意するように翼をパタパタさせた。


納屋の扉を開け、中に足を踏み入れると、いつものように道具や収穫物が整然と並んでいる。最近は作物の出来が良すぎて、保管場所の確保が課題になりつつあった。


「そろそろ拡張を考えないといけないかな……」


そう思いながら収穫物を片付けていると、彼の頭の中に突然、青い文字が浮かび上がる。


【牧場経営スキルがLv6に上昇しました】

【新機能「納屋の空間拡張機能」が解放されました】

【新機能「農産物の配送サービス」が解放されました】


「え?」


驚いた悠真が声を上げた瞬間、納屋の内部が微かに光り始めた。


――――――


「納屋が……光ってる」


異変に気付いたリーフィアが納屋に駆け込んできた。彼女の後ろには、心配そうな表情のリオンも続いている。


三人は呆然と納屋の内部を見つめた。光が徐々に収束していくと、一見したところ何も変わっていないように見える。


「あ~、またスキルがレベルアップしたみたいなんだ。納屋の空間拡張機能と、農産物の配送サービスが解放されたらしい」


「空間拡張?配送サービス?」


リオンが首を傾げる。悠真は試しに納屋の中に入ってみた。


「わぁっ!中が広くなってる!」


リオンが驚きの声を上げた。確かに外から見る納屋のサイズと、中の広さが明らかに釣り合っていない。まるで魔法のような空間が広がっていた。


「これなら、たくさん収穫物を保管できますね」


リーフィアが嬉しそうにそう言った。


「そうだな。でも、配送サービスってのは何だろう?」


悠真が考え込んでいると、納屋の一角に今まで見たことのない小さな台が現れていた。台の上には薄いシートのようなものが積み重ねられている。


「これは……」


悠真がシートを手に取ると、シートの表面に細かな魔法陣のような模様が浮かび上がった。直感的に使い方が分かる感覚があった。


「これを送り先に置けば、牧場から直接農産物を転送できるみたいだ」


「それは凄いですね!」


リオンが目を輝かせて言った。


「試してみようか。ミリアムに頼んで、グリーンヘイブンに置いてもらおう」


――――――


その日の午後、ミリアムが薬草を集めに牧場を訪れた。いつものように元気いっぱいの彼女に、悠真は新しく得た機能について説明した。


「えっ!?牧場から直接農産物を送れるようになるんですか!?」


亜麻色の髪を揺らしながら、ミリアムはエメラルドグリーンの瞳を大きく見開いた。


「それで、グリーンヘイブンにこのシートを置いてもらえないかな?まずは一度試してみたいんだ」


「もちろんです!今からグリーンヘイブンに戻りますから、そのときに設置してみますね!」


ミリアムは喜んでシートを受け取り、すぐに村へと向かった。彼女の速さには悠真もいつも感心させられる。


「彼女のエネルギーには負けるな」


悠真がそう呟くと、傍らにいたハクエンが『あの小娘はいつも騒がしいからな』と返した。だが、その言葉には嫌悪感は感じられず、むしろ親しみが込められていた。


――――――


翌朝、ミリアムから報告があった。シートはグリーンヘイブンの彼女の家に設置済みとのこと。


「よし、試してみよう」


悠真は納屋に入り、シートが置かれた台の前に立った。台の表面には魔法のような映像が浮かび上がり、シートが設置された場所が表示されている。グリーンヘイブンのミリアムの家が選択できるようになっていた。


新鮮な野菜を籠に入れ、台の上に置いた。そして、送り先としてミリアムの家を選択して転送を実行する。すると次の瞬間、台の上にあった籠が姿を消した。


「おぉ、消えた……けど、本当に送れたのかな?」


悠真が首を傾げていると、手元の通信結晶が光を放った。ミリアムからだ。


「悠真さん!野菜が届きました!こんな便利な魔法があるなんて驚きです!」


彼女の驚きと喜びの声が通信結晶から響いてきた。


「良かった、ちゃんと届いたみたいだ」


悠真は安堵の表情を浮かべた。これで商品の配送がずっと楽になる。


――――――


その日の昼過ぎ、アスターリーズ商会のドミニクが牧場を訪れた。悠真は彼にも新しいシステムについて説明し、実演してみせた。


「なんと!これは素晴らしい!」


口髭を撫でながら、ドミニクは目を輝かせた。


「もしアスターリーズ商会にもこのシステムがあれば、輸送コストが大幅に削減できるのですが……」


「残念ながら、これは牧場からしか使えないみたいなんだ。それに牧場の農産物しか転送もできないらしい」


悠真が説明すると、ドミニクは一瞬残念そうな表情を見せたが、すぐに商人らしい打算的な笑みを浮かべた。


「それでも、輸送コストが無くなるというのは大きいですな!これからはもっと多くの商品を扱えますぞ、白石さん!」


「そうですね。シーブリーズにも連絡して、設置して貰おうと考えています」


「それは良いですな!私もアスターリーズ商会に戻り次第、シートを設置いたしましょう」


そう言ってドミニクは、悠真と固く握手を交わした。


――――――


夕暮れ時、悠真はリーフィアとリオンと共に牧場の丘の上に座り、落ち行く太陽を眺めていた。


「今日は忙しい一日でしたね」


リーフィアが静かに言った。彼女の銀色の髪が夕日に照らされ、美しく輝いている。


「でも、すごく良い変化ですよ!これで牧場の作物をもっと多くの人に届けられますね!」


リオンが嬉しそうに話す。その緑がかった髪も夕日を受けて金色に輝いていた。


「そうだな。牧場も少しずつ成長しているってことだ。俺たちと一緒にな」


悠真は二人に微笑みかけた。遠くでは牧場の動物たちが夕暮れの中、のんびりと過ごしている。フレアがハクエンにじゃれついている姿も見えた。


「そういえば、この納屋の拡張と配送システム、他にも使い道があるかもしれませんね」


リーフィアが思いついたように言った。


「どんな?」


「たとえば、地域の祭りに参加するときも、大量の作物を運ぶのが楽になりますし、緊急時に薬草や食料を届けることもできます」


「確かに。この能力を活かせば、もっと多くの人の役に立てるかもな」


悠真はそう言いながら、広がる夕焼けの空を見上げた。


夕暮れの風が三人の髪を優しく撫でていく。明日からの牧場生活は、今日よりもっと充実したものになるだろう。そんな予感と共に、穏やかな夕暮れの時間が過ぎていった。

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