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異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~  作者: 黒蓬


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第82話 恵みの作物、二人の精霊の贈り物

 初夏の陽射しが牧場全体を優しく包み込む午後、悠真は果樹園の様子を確認していた。拡張された牧場の一角に新しく植えられた果樹は、予想以上に立派に育っている。特に最近植えた魔力の実は、通常なら数シーズン経なければ実を付けないはずなのに、既に赤みを帯びた実をいくつも付けていた。


「何かおかしいな……これ、もうすぐ収穫できそうじゃないか」


 悠真が首をかしげていると、肩に乗ったラクルが「クルルー」と鳴き、同意するように小さな翼をパタパタと動かした。


 そこへリーフィアが、薬草を入れた籠を手に近づいてきた。銀色の髪が初夏の風に揺れている。


「悠真さん、今日も作物の調子が良いですね」


「ああ、あまりにも良すぎて不思議なくらいだ」


 悠真は実をつけた枝を指差した。リーフィアは碧い瞳を丸くして近づき、果実を優しく撫でるように触れた。


「これも、本来なら今年は実を付けないはずのものですよね。でも……」


「あぁ、それだけじゃなくて、最近は薬草の効能も通常より高いし、野菜も大きく育ってる。最初は土壌が良いからかと思ってたんだけど……」


 悠真が言葉を続けようとしたとき、リオンが畑の方から小走りで近づいてきた。


「悠真さん!リーフィア姉さん!今朝植えたばかりの苗が、もう芽を出し始めてるんです!」


 緑がかった髪の少年は、興奮した様子で二人を畑へと導いた。確かに、今朝植えたばかりのハーブの苗が、既に新しい葉を広げ始めていた。


「これは普通じゃないな」


 悠真は顎に手を当てて考え込んだ。これまでも時々不思議な現象はあったが、最近はその頻度が明らかに高くなっている。単なる偶然では説明がつかないほどだ。


「何か特別な魔法でも働いているのでしょうか?」


 リーフィアがそう言うと、リオンが思い出したように指を鳴らした。


「そういえば、アウラとサフィアって、よく畑の周りをクルクル回って遊んでますよね」


「あぁ。水やりをしてる時にもよく二人がそばにいるな。まぁ、畑はあの二人にとっては家のような場所だし、特に気にしてなかったけど……」


 悠真は思い出した。アルラウネとドライアドの少女たちは水やりの時間が大好きで、いつも近くに寄ってくる。最初は単に水が好きなのだろうと思っていたが、もしかしたら何か関係があるのかもしれない。


「二人に聞いてみるか」


――――――


悠真が近づくと、二人は動きを止めてきょとんとした表情で彼を見つめた。


「おはよう、アウラ、サフィア」


二人は言葉の意味を理解しているのか、ぺこりと頭を下げた。悠真はゆっくりと二人に近づき、膝をついて目線を合わせた。


「もしかして、二人は畑や果樹園の作物を良くしてくれているのか?」


シンプルな質問だったが、アウラとサフィアは意味がよく分からない様子で、揃って首をコテンと傾げた。その仕草があまりにも愛らしく、悠真は思わず微笑んだ。


「分からないか。無関係ってこともなさそうな気がするんだけど……」


そう呟いていると、背後から低い声が聞こえてきた。


『人間は難儀だな』


振り返ると、眠っていたハクエンうっすらと目を開けて悠真の方を見ていた。


「ハクエン、何か知ってるのか?」


ハクエンは大きく伸びをしてから、悠真の方を見た。


『詳しくは知らねえが、その二人が畑の周りを回っている時に特殊な魔力を振りまいている。それが植物に影響を与えているんだろう』


「特殊な魔力?」


『ああ。そいつらは自然の精霊だ。植物と共に生きる種族で、その存在自体が自然を豊かにする力を持っている』


悠真はアウラとサフィアを見た。二人は今、ハクエンの周りをくるくると回り始めていた。


『こいつらはただ楽しいからやってるだけだろうが、その行為が結果的に周囲の植物に魔力を与えているんだ。分かりやすく言えば、無意識の祝福ってやつだな』


「そういうことか……」


悠真は納得した表情で頷いた。


――――――


朝食の時間、悠真はリーフィアとリオンに事情を説明した。


「そういうことだったんですね!」


「アウラさんとサフィアさんが、無意識に私たちを助けてくれていたなんて」


リーフィアとリオンも驚きながらもそれを聞いて納得していた。

朝食を終えた後、三人はアウラとサフィアのもとへと向かった。二人はちょうど水場の近くで、水滴を楽しそうに跳ね返して遊んでいた。


「アウラ、サフィア」


悠真が声をかけると、二人は振り返り、笑顔で近づいてきた。


「俺たちの畑や果樹園をこんなに豊かにしてくれて、ありがとうな」


悠真がそう言うと、リーフィアとリオンも頭を下げた。


「本当にありがとうございます」


「おかげで素晴らしい作物が採れています」


アウラとサフィアは何を褒められたのかは理解していないようだったが、三人の笑顔に反応して、嬉しそうに花を揺らした。


――――――


 その日の午後、ミリアムが牧場を訪れた。亜麻色の髪を揺らし、いつもの元気な様子で薬草園に向かってくる。


「悠真さん、こんにちは!今日も薬草、分けてもらいに来ました!」


 エメラルドグリーンの瞳を輝かせるミリアムに、悠真は朝の出来事を話した。アウラとサフィアが夜な夜な踊りを踊って、植物に生命力を与えてくれていたこと。それが牧場の作物の質を高めていたという事実を。


「なるほど~確かに最近、質の高い薬草が多いなぁと思っていましたけど、そういう理由だったんですね!」


 ミリアムは驚きの表情を浮かべた後、羨ましそうに言った。


「良いなぁ、私もいつか自分の庭にそんな精霊さんたちが来てくれたらいいのに。でも、そのおかげで私も色々良い素材を分けてもらえてるんですよね!本当に感謝です!」


 ミリアムはアウラとサフィアを見つけると、深々と頭を下げた。二人の精霊は不思議そうな表情を浮かべたが、ミリアムの笑顔に応えるように、頭の花をゆらゆらと揺らした。


 夕暮れ時、悠真たちは牧場の柵に寄りかかり、眺望を楽しんでいた。拡張された牧場は、以前よりもさらに生命力に溢れている。


「さて、そろそろ夕食の準備をしましょうか。今日はアウラさんとサフィアさんのおかげで採れた新鮮な野菜で、特別なスープを作りますよ」


「それは楽しみだな」


二人は夕暮れの牧場を見下ろしながら、家路につく。晩夏の風が心地よく、自然の恵みと仲間たちの温もりを感じる、穏やかな一日の終わりだった。

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