表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~  作者: 黒蓬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/123

第71話 神殿に眠る古の剣

 ある日の午後、悠真は納屋の掃除を終えて少し休憩しようと、庭のテラスへ向かっていた。すると、牧場の東側から土を掘り返すような音が聞こえてきた。何だろうと思い様子を見に行くと、テラが一生懸命に地面を掘っている姿が見えた。


「テラか、また何か面白いものでも見つけたのか?」


 悠真はそう言いながらそちらに歩み寄った。テラはよく遊びで地面を掘ることがあるので、人の迷惑にならない場所であれば好きにさせていた。しかし今日は、いつもより熱心に深く掘っているように見える。


「ミュウ!」


 テラは悠真に気づくと嬉しそうに鳴いて、さらに前足をせわしなく動かして掘り進めた。やはり、何か目的を持って掘っているように見える。


「随分と深いな……何があるんだ?」


 悠真が近づいてみると、テラが掘った穴はかなり深くなっていた。そして驚いたことに、穴の底が突き抜けており、その下には広い空洞が広がっていた。


「こんなところに空洞があったのか……」


 悠真は懐中魔法灯を取り出し、下を照らしてみた。単なる空洞ではなく、どうやら奥に続いているようだ。


「テラ、もう少し広げて、人が降りられるような階段を作れないか?」


「ミュー!」


 テラは喜んで返事をし、前足に力を込めて土を掘り始めた。ただの縦穴だったものを、ゆるやかな傾斜の階段状にしていく。小さなテラの体が忙しなく動き回る様子は、見ていて微笑ましい。


――――――


 階段が完成したところで、悠真は一度家に戻り、リーフィアとリオンに状況を説明した。


「空洞?それは面白そうですね!」


「でも、危険ではないでしょうか?」


 リオンは興味津々な様子だが、リーフィアは心配そうな表情を浮かべている。


「ああ、確かにな。だから、俺だけで様子を見てくる。牧場のことを頼めるか?」


「はい、お任せください。でも、気をつけてくださいね」


 リーフィアは優しく微笑んだ。


「僕も行きたいです!」


 リオンが熱心に言うが、悠真は首を振った。


「今回は俺一人で十分だ。無駄に危険に巻き込むわけにはいかないからな。安全が確認出来たらいつでも見に行けばいいさ」


 リオンは少し残念そうな顔をしたが、すぐに理解を示した。


「分かりました。でも、何か見つけたら教えてくださいね!」


「ああ、約束するよ」


 悠真は暖かく微笑み、ヘラクレスとフレアを呼んだ。牛の角から出る炎と火狐の能力があれば、暗い洞窟でも明かりに困ることはない。あとは、発見者でもあるテラを連れて洞窟へと向かった。


――――――


 懐中魔法灯とヘラクレスの角の炎、フレアの尻尾の火を頼りに、悠真たちは地下の洞窟を進んでいった。空気は意外にも澄んでいて、呼吸に問題はない。壁には奇妙な模様が刻まれているが、読み解くことはできなかった。


「元は古い遺跡なのかもしれないな……」


 悠真がつぶやくと、ヘラクレスは「モォー」と鳴き、前に進む道を照らした。フレアは赤い体を小刻みに動かしながら、周囲を警戒している。しかし、進んでいく中でモンスターなどの姿は見えなかった。


 やがて、道は広い空間へと開けた。そこにあったのは、一部が土砂に埋もれた神殿のような建造物だった。


「こんなところに神殿が?」


 悠真は驚きの声を上げた。白い石造りの柱が立ち並び、天井には星々の模様が描かれている。時間の経過で色褪せているが、かつての荘厳さを偲ばせる雰囲気がある。


「これは……何かのはずみで、元々あった出入り口が土砂で埋まってしまったのか?」


 テラが「ミュウ」と鳴きながら、神殿の入り口付近を調べている。


「行ってみよう」


 悠真は神殿の中に足を踏み入れた。内部はほとんど何も残っていなかったが、不思議と神聖な雰囲気が漂っている。奥には石でできた祭壇があり、そこに一本の剣が祀られるように置かれていた。


「これは……」


 悠真は祭壇に近づいた。剣は時を経ても輝きを失わず、淡い青い光を放っている。柄には見たことのない文様が彫られ、刀身にも不思議な模様が刻まれていた。


「不用意に触るのは危険かもしれないけど……」


 しかし、その場の雰囲気からは危険な気配は感じられなかった。悠真は慎重に剣に手を伸ばし、柄に触れた。すると、剣から淡い光が広がった。


「これは……?」


 剣は予想外に軽く、武器に不慣れな悠真でも簡単に持ち上げることができた。一瞬、神殿内に何かが響いたような気がしたが、特に異変は起きなかった。


 悠真は一応、神殿に向かって礼を捧げた。


「この剣、使わせていただきます」


 慣れない作法ではあったが、心を込めて伝えた。


――――――


 地上に戻った悠真は、剣をよく観察してみたが大したことは分からなかった。


「詳しく調べるなら、エイドさんに相談したほうが良さそうだな」


 悠真はリーフィアとリオンに発見した神殿と剣について説明し、アスターリーズの町に向かうことにした。


 翌日、悠真はエイド・ローレンスを訪ねた。研究室に入ると、エイドは古書を広げながら何かの記録をしていた。


「白石さん、こんにちは。今日はどうされたんですか?」


「ああ、エイドさん。実はこれを見てもらいたいんだ」


 悠真は布に包んだ剣を取り出した。エイドは眼鏡を直しながら近づいてきた。


「これは?」


「牧場の地下で見つけた神殿に置かれていた剣なんだ。何か分かるかと思って」


 悠真が布を解き、剣を見せると、エイドの目が大きく見開かれた。


「これは……どこかで見た様な……?」


 エイドは慌てて本棚から古い書物を取り出し、ページをめくり始めた。


「白石さん、少し時間を頂けますか?これは非常に重要な発見かもしれません」


「構わないよ。何か分かったら教えてほしい」


 悠真はエイドに剣を預け、牧場に戻った。


――――――


 数日後、エイドが慌てた様子で牧場を訪れた。


「白石さん!大変です!」


 悠真は納屋から出てきたところで、駆け寄ってくるエイドを見た。


「どうしたんだ?そんなに慌てて」


「あの剣、あの剣は……」


 エイドは興奮のあまり言葉につまっている。深呼吸をして落ち着いてから、続けた。


「あの剣は、『ルミナスエルディア』だったんです。遥か昔に失われ、伝承にのみその名を残す古の剣なのです!」


「ルミナスエルディア?」


「はい!古い伝承によると、世界が大いなる危機に瀕したとき、英雄に更なる力を与えるとされています。そして、白石さんがこの剣を見つけたという事実は……」


 エイドはそこまで言うと、一つ深呼吸をしてから話を続けた。


「その、状況的に王国にもこの発見は報告せざるを得ませんでした……。そして、これを預かってきました」


 エイドは袋から公文書のような手紙を取り出した。


「王国から、ぜひ勇者たちのために献上してほしいという正式な要請です。今、魔王グレイヴァスとの戦いは膠着状態にあり、この剣が勇者たちの力になるかもしれないという話で……」


 悠真は手紙を受け取り、ざっと目を通した。確かに王家の印章が押されている。


「そうか……確かにこの剣は、彼らの方が相応しいだろうな。俺のような一般人では使いこなせないし」


 悠真は神殿から持ち帰りはしたものの、あまり自分が扱えるとは思っていなかった。せっかくの発見が彼らの役に立つのであれば、それでよいと思った。


「その、私が言うのもなんですが、本当にいいのですか?これは大発見ですよ、白石さん」


「ああ、構わないよ。その方が世界の為にもなるだろうしな」


 そう言ってエイドに剣を渡した。エイドは安堵の表情を浮かべながら、剣を受け取った。


「ありがとうございます!国王陛下もお喜びになるでしょう。何か要望があれば、王国に伝えますが……」


「……特にないな。ただ、確実に勇者たちのもとに届けてくれるようにだけお願いしたい」


「それはもちろんです!王命ですから間違いなく」


 エイドはそう言って、感謝の言葉と共にもう一度深く頭を下げた。


――――――


 エイドが帰った後、悠真は牧場の丘の上に座り、沈みゆく夕日を眺めていた。オレンジ色に染まる空と、金色に輝く雲の眺めは格別だ。


「これでまた、少しは彼らの役に立てただろうか……」


 悠真はつぶやいた。自分は戦いに向いていないと分かっていても、何かの形で世界を救う手助けができるなら、それは嬉しいことだ。


 風が吹き、草の匂いが鼻をくすぐる。遠くでは、ラクルが「クルルー」と鳴きながら、空を飛んでいる。サフィアとアウラは水場で遊んでいるようだ。


 そんな牧場の平和な風景を眺めていると、背後から優しい声が聞こえた。


「悠真さん、夕食ができましたよ」


 振り返ると、リーフィアが微笑みながら立っていた。銀色の髪が夕日に照らされ、美しく輝いている。


「ああ、ありがとう」


 悠真は立ち上がり、リーフィアの方へ歩み寄った。


「今日は何か特別なことがあったんですか?エイドさんが慌てて来られていましたけど……」


「あぁ、あれか。実は……」


 二人は家に向かいながら、神殿の剣のことを話した。


「そうだったんですね。悠真さんは本当に優しいですね」


 リーフィアは微笑みながら言った。


「そんなことはないさ。俺なんかより、彼らの方がきっと使いこなせると思っただけだよ」


「それが優しさですよ」


 牧場に戻ると、ルナが悠真の帰りを待つかのように、玄関先で丸くなって眠っていた。起こさないようにルナを抱え家に入ると、リオンが料理の準備をしていた。テーブルには温かい料理が並び、良い香りが漂っている。


「お帰りなさい、悠真さん!今日はミリアムさんが持ってきた野菜も使って料理したんですよ」


「おお、いい匂いだな」


 席に着くと、ウィンドウから見える夕焼けが部屋を温かな光で満たしていた。トレジャーもいつの間にか窓辺に止まり、家の中を見ている。


「それじゃ、いただきます」


 悠真の言葉に、リーフィアとリオンも「いただきます」と応え、穏やかな食事が始まった。牧場での日々は、時に不思議な出来事が起こるが、こうした平和な時間があることが、何よりも大切だと悠真は感じていた。


 月が昇り始め、牧場全体が銀色の光に包まれていく。またひとつ、牧場で過ごす穏やかな一日が終わろうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ