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異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~  作者: 黒蓬


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第60話 勇者からの手紙

朝露に濡れた牧場が、初夏の陽光に輝いていた。悠真は納屋から出てきて、大きく伸びをした。牧場内には、すでに活気が満ちている。


「おーい、シャドウ!ミスト!朝ごはんだぞ!」


悠真の呼びかけに、二匹の子熊が草むらから飛び出してきた。漆黒の毛並みを持つシャドウが先頭を走り、その後ろを小さなミストがのそのそとついてくる。


「おはよう。今日も元気だな」


シャドウは黄金色の瞳で悠真を見上げると、嬉しそうに前足で立ち上がった。ミストは少し眠そうな目をこすりながら、「クゥン」と小さく鳴いた。


納屋の陰からは、赤い毛並みの火狐が現れた。フレアの尻尾の先の白い部分が朝日に照らされて、まるで小さな炎のように揺れている。


「お前も来たか。みんな仲良くな」


悠真がエサ入れに餌を注ぐと、動物たちは一斉に食べ始めた。フレアはシャドウとミストに少し距離を取りながらも、時々視線を送っている。最近は子熊たちとよく遊んでいるようだ。


「悠真さん、おはようございます」


振り返ると、リオンが明るい声で挨拶してきた。彼の手には水の入ったバケツがあり、どうやらアウラの水やりに行くところのようだ。


「おはよう。今日も早いな」


「はい!アウラさんが少し元気なさそうだったので、朝早く水をあげに行こうと思って」


リオンの声には心配の色が見えた。アルラウネの少女は、牧場に来てからみんなの人気者になっていた。


「そうか、ちょっと様子を見てやってくれ」


悠真がそう言うと、リオンは頷いて花壇の方へ歩いていった。テラが「ミュウミュウ」と鳴きながら、彼の後を追いかける。


――――――


朝の作業を終えた悠真が家に戻ると、テーブルに向かうリーフィアの姿が見えた。彼女は何やら手紙を読んでいるようだ。銀色の髪が朝日に照らされ、光の粒が舞っているように見える。


「リーフィア、何を読んでるんだ?」


悠真が尋ねると、リーフィアはハッとしたように顔を上げた。


「あ、悠真さん。おはようございます」


「月影村の知り合いからか?」


珍しく手紙を読んでいるリーフィアに、悠真は自然とそう尋ねた。しかし彼女は静かに首を横に振った。


「いえ、以前月影村を救って頂いた勇者様への感謝の手紙をアリシアさんに届けて欲しいとお願いしていたのですが、その返事が来たんです」


「あぁ、そうだったのか。……手紙が返ってくるなら大丈夫そうだけど、彼らも元気にしてるのかな?」


「それなら、悠真さん宛にも手紙が来ていましたよ」


そう言って、リーフィアは封筒を差し出した。悠真の名前が書かれている。


「俺宛てに?」


少し驚きながらも、悠真は封を開けた。中には少し乱暴な字で、こう書かれていた。


『白石さんへ

そちらの牧場から届く食材が一段と美味くなって助かってる。しばらく食べられてないが、元の世界の食事より美味いかもしれないくらいだ。こっちも大変だが、魔王に攻められていた土地をいくつか救うことができた。これからもよろしく頼む』


悠真は思わず笑みを浮かべた。簡潔だが、相手の人柄が伝わってくる文面だった。


「どんな内容ですか?」


リオンが水やりを終えて戻ってきていた。好奇心いっぱいの表情で、手紙を覗き込んでいる。


「ああ、牧場の食材が美味しいって。それと、やっぱり今も魔王の軍勢と戦っているみたいだな」


それを聞いたリーフィアは少し憂いのある表情を浮かべる。


「彼も異世界から来た人。悠真さんと同じように、きっと大変なことも多いのでしょうね」


「あぁ、それでも彼らも頑張っているみたいだ。俺も返事を書いてまた届けて貰うか」


悠真は机に向かい、ペンを手に取った。何を書こうか少し考え込む。


「悠真さんのおかげで、私たちはこうして平和に暮らせているんですね」


リーフィアが静かに言った。その言葉に、悠真は顔を上げた。


「いや、俺は何もしてないさ。ただ牧場を開いただけだ」


「でも、その選択があったからこそ、この場所に皆が集まっているんです」


リーフィアの言葉に、リオンも頷いた。


「そうですよ!今ではアウラみたいな植物の精霊まで来るようになったじゃないですか!」


悠真は思わず笑った。確かに、ここ最近の牧場は賑やかだ。


「そうだな。今度、アウラのことも手紙に書いてみるか」


窓の外では、テラがアウラの花びらと戯れている姿が見える。初夏の陽光が牧場全体を優しく包み込み、平和な時間が流れていた。


悠真はペンを走らせて手紙を書き終えると、悠真は納屋の窓から牧場を眺めた。フレアとシャドウが追いかけっこをしている。ミストはそれを少し離れた場所から見ている。


「悠真さん、お茶を入れました」


リーフィアが香り高いハーブティーを運んできた。


「ありがとう」


静かな牧場に、新たな季節の訪れを感じる瞬間だった。どこかで魔王との戦いが続いているとしても、ここには確かに守るべき日常がある。初夏の風が、牧場を眺める彼の髪を優しく揺らしていた。

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