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異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~  作者: 黒蓬


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第28話 魔法の仕組みと進化する牧場

朝露に濡れた草の香りが漂う牧場で、白石悠真は動物たちの朝の世話を終えたところだった。ウィンドが優雅に空を舞い、フレアが尻尾を揺らしながら彼の足元をうろついている。そして最近の新入り、シャドウは相変わらず悠真の影から時々顔を覗かせては、すぐに隠れる恥ずかしがり屋な様子を見せていた。


「まだ警戒してるのか?大丈夫だよ」


悠真が優しく声をかけると、シャドウは少しずつ影から出てきて、慎重に周囲を伺った。黄金色の瞳がキラリと光り、漆黒の毛並みが朝日を反射して美しく輝いている。


「そうそう、怖くないだろ?この牧場は平和なんだから」


シャドウは小さく鳴き、悠真の手のひらに頭を擦り寄せてきた。その姿は漆黒の子熊というよりも、大きめの猫のようにも見える。


「悠真さ〜ん!おはようございま〜す!」


遠くから聞こえてきた元気な声に、シャドウは驚いたように再び悠真の影へと滑り込んでしまった。振り返ると、亜麻色の髪をなびかせたミリアムが手を大きく振りながら近づいてくる。そして彼女の後ろには見覚えのある人物の姿も。


「おや、ミリアムに……エイドさんも一緒か」


研究員のエイド・ローレンスは、首から下げた観測機器を抱えながら、少し息を切らせて歩いていた。彼の背中には大きなリュックサックが揺れている。


「おはようございます、白石さん!本日もよろしくお願いします」


「あぁ、おはよう。あまり動物たちを驚かせないように頼むよ」


エイドは丁寧に頭を下げると、早速周囲を興味深そうに見回し始めた。眼鏡を直しながら、キョロキョロと動物たちを探している様子だ。


「それにしても、前回来た時よりも動物たちが増えているようですね!素晴らしい!」


エイドの目が輝き、早速メモを取り始めた。リュックから分厚いノートを取り出し、ページをめくる。


「ああ、実は新しい仲間が増えたんだ」


悠真がそう言うと、自分の影を指さした。ミリアムは不思議そうな顔で影を覗き込む。


「あれ?……影の中に、何かいます?」


「シャドウっていうんだ。結構恥ずかしがり屋でね」


その言葉に、エイドが驚いたように立ち止まった。


「シャドウ?もしかして、シャドウベアーですか?」


彼は興奮した様子で眼鏡を直すと、影の方へと近づいてきた。その急な動きに驚いたのか、シャドウはさらに深く影に潜り込んでしまう。


「あ、そんなに近づくと驚いてしまうって。恥ずかしがりやなんだ」


悠真の言葉に、エイドは慌てて後ずさりした。


「す、すみません!つい興奮してしまって……シャドウベアーは非常に珍しい生物なんです。影に潜む能力を持つ闇属性の生き物で、人前に姿を現すことはほとんどないと言われているんですよ」


ミリアムも目を輝かせながら言った。


「わあ!そんな珍しい子が悠真さんの牧場に来たんですね!見せてください!」


――――――


悠真はゆっくりと腰をかがめ、優しく声をかけた。


「おいで、シャドウ。この人たちは友達だよ」


しばらくすると、影からそっと黒い頭が覗き、警戒心に満ちた黄金色の瞳が二人を観察し始めた。


「じっとしていてください」


悠真の指示に従い、ミリアムとエイドは動きを止めた。するとシャドウはゆっくりと影から全身を現し、悠真の足元に立った。その姿にミリアムは小さく息を呑んだ。


「まあ、なんて美しい……」


漆黒の毛並みは光を吸い込むかのように深く、足先や尾先にかけてわずかに紫がかった色合いが混じっている。シャドウはミリアムとエイドをじっと見つめ、警戒しながらも少しずつ二人に慣れていくようだった。


「これは貴重な観察機会です!」


エイドはそっとノートを開き、シャドウのスケッチを始めた。その真剣な眼差しに、シャドウも少し興味を持ったのか、少しずつエイドに近づいていく。


「やはり、白石さんの牧場には次々と希少生物が集まってくるんですね。様々な要因が重なった結果だと思われますが、素晴らしい!」


エイドは熱心にメモを取りながら言った。


「キュイ!」


突然、小さな鳴き声が聞こえ、青い影が空から舞い降りてきた。それはアズール、小さなドラゴンだった。彼は優雅に悠真の肩に止まると、好奇心旺盛な目で訪問者たちを見つめた。


「お、アズール。おはよう」


ミリアムの目が輝いた。前回は会えなかったアズールを初めて見て、彼女は大興奮の様子だ。


「この子がアズールなんですね。わたし、ミリアムっていうの。よろしくね」


ミリアムが優しく手を差し出すと、アズールは少し恥ずかしそうに「キュ」と鳴いた。


「小さいのに、すごく賢そうな目をしてるね」


エイドも目を丸くして驚いている。アズールは少し得意げな様子で胸を張り、「キュイキュイ」と鳴いた。


「すごい!通常、ドラゴンはこんなにも人に懐くものではないんですよ」


エイドは驚きの声を上げた。


――――――


悠真は微笑みながら、にぎやかになった牧場を眺めた。リーフィアも家から出てきて、ミリアムとエイドに挨拶をする。動物たちも次々と集まってきて、牧場全体が活気に満ちていく。


「今日は一段と賑やかだな」


悠真がつぶやいた瞬間、以前と同じように頭の中に青い文字が浮かび上がった。


【牧場経営スキルがLv3に上昇しました】

【新機能「気温調整機能」が解放されました】

【新機能「地形カスタマイズ」が解放されました】


「え?」


思わず悠真は声を上げた。周囲にいた全員が彼の方を振り向く。


「どうしたんですか、悠真さん?」


リーフィアが心配そうに尋ねた。


「またスキルが上がったみたいだ…気温調整機能と地形カスタマイズか」


悠真は少し考え込むように腕を組んだ。


「それって、牧場内の環境を変えられるってことですか?」


ミリアムが興味深そうに尋ねる。


「そうみたいだ。気温調整機能は…牧場内のエリアごとに温度を変えられるらしい。冬でも暖かいエリアを作れば、季節外れの作物や希少生物が育つ環境を整えられるってことか」


「まあ、それはすごいです!気候に左右されずに植物を育てられるなんて!」


リーフィアも驚いた様子で言った。


「あぁ、それに動物たちにとって快適な温度のエリアも作れそうだ。地形カスタマイズは…牧場の地形を変えて、動物たちにとって住みやすい環境を作れるみたいだ。これも便利そうだな。ちょっと試してみようか」


悠真は目を閉じ、気温調整機能に意識を向けた。すると、不思議なことに頭の中に牧場全体の地図が浮かび、各エリアの気温設定ができるようになった。


「納屋の裏手を少し暖かくしてみよう…」


悠真が意識を集中すると、納屋の裏手のエリアが徐々に温かくなっていくのを感じた。


「わあ!本当に温かくなってる!」


ミリアムが納屋の裏側に走り、驚いた声を上げた。


「これは…魔法の仕組みを理解すれば説明できるかもしれません」


エイドが興味深そうに言った。


「魔法の仕組み?」


悠真が尋ねると、エイドは少し講義調になった。


「この世界の魔法は、実は周囲のマナを操作して現象を引き起こすものなのです。白石さんの場合、牧場経営というスキルを通じて、この土地のマナと深く結びついたのでしょう。だからこそ、こうした環境操作が可能になったと…」


「なるほど、俺の意志が牧場全体に伝わるような感じなのか」


悠真は納得したように頷いた。


「地形カスタマイズも試してみましょうよ!」


ミリアムが目をキラキラさせながら提案する。


「そうだな…じゃあ、アズールのために小さな池でも作ってみようか」


悠真は再び目を閉じ、今度は地形カスタマイズに意識を向けた。牧場の一角に、小さな池を思い描く。すると地面が僅かに震え、土が盛り上がり形を変えていく。地面が少しずつ窪み、地下水が湧き出してきた。数分後には、きらきらと水面が光る小さな池が出現した。


「すごい…」


リーフィアが息を呑む。


「キュイ!」


アズールは大喜びで池に飛び込み、水しぶきを上げながら泳ぎ始めた。


「これで暑い日も快適に過ごせるね!」


ミリアムは笑顔でアズールの泳ぐ姿を見つめた。


「白石さん、これは本当に貴重な研究対象です。もし許していただけるなら、この環境変化と生物たちの反応を継続して観察させていただきたいのですが…」


エイドは熱心な眼差しで悠真を見つめた。


「ああ、もちろん構わないよ。あ、でもあまり街に広めるのは控えて欲しい。また前みたいに野盗とかに来られても困るからな」


「分かりました!約束は守ります」


悠真が許可すると、エイドは喜んで何度も頭を下げた。


「わあ、それなら私も手伝います!薬草の育成にも最適な環境が作れるかもしれませんね!」


ミリアムも嬉しそうに手を叩いた。


――――――


夕暮れが近づき、牧場にオレンジ色の光が差し込み始めると、エイドとミリアムは帰る支度を始めた。


「今日はありがとうございました。次回はもっと詳しい観測機器を持ってきます」


エイドは丁寧に頭を下げた。


「私も次はお薬の材料を持ってくるね!温かいエリアで育つ珍しい薬草も試してみたいな」


ミリアムは満面の笑みを浮かべる。


「ああ、いつでも来てくれ。ここはみんなの居場所だからな」


悠真はそう言って二人を見送った。シャドウもアズールも、二人が去っていくのを見つめていた。


「今日はにぎやかでしたね」


リーフィアがそっと言った。


「ああ、でも悪くない。みんな仲良くしてくれて良かったよ」


悠真は微笑みながら答えた。シャドウは二人の足元で丸くなり、アズールは悠真の膝の上で気持ちよさそうに眠っている。フレアも近くで尻尾を丸めて寝息を立てていた。


彼らの頭上では、星々が一つ一つ輝きを増していく。この平和な時間が、悠真にとっては何よりも大切だった。こうして動物たちと過ごす静かな日々に、彼は幸せを感じていた。

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