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異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~  作者: 黒蓬


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第128話 雨上がりの不思議なこだま

青空が広がる晴れやかな朝、悠真は牧場の柵に寄りかかりながら、深呼吸をした。連日の大雨がようやく上がり、久しぶりの太陽の光が牧場全体を明るく照らしていた。リンカーが彼の横を通り過ぎると、角の鈴が心地よい音色を響かせる。


「今日はやっと晴れたな」


長い雨の間、動物たちは異空間牧場で過ごしていたため、さほどストレスは溜まっていないようだったが、それでも実際の太陽の光を浴びるのは別格のようだ。牧場の住人たちは皆、いつも以上に活発に動き回っていた。


「悠真さーん!」


振り返ると、リオンが小走りでやってくるのが見えた。緑がかった髪が太陽の光を受けて輝いている。彼の背後からはリーフィアも続いていた。


「おはよう、リオン、リーフィア」


「おはようございます、悠真さん」


「おはようございます!長い雨でみんな少し元気がなかったけど、今日はいい天気になりましたね!」


リオンが嬉しそうに言った。確かに、連日の雨は牧場の雰囲気を少し押し下げていたようだ。悠真自身も、晴れ間を見て気分が軽くなるのを感じていた。


「そうだな。こんな日は思いっきり声を出して、溜まっていたものを吹き飛ばすのもいいかもしれないな」


「声を出す?」


リオンが首を傾げた。


「ああ、小さい頃にやったことないか? 思いっきり叫んで、気分をスッキリさせるんだ」


「あ、わかります!僕たちの村でも、子供の頃によくやっていました!」


「そうか。なら、さっそく試してみるか?」


悠真が提案すると、リオンは嬉しそうに頷いた。リーフィアも穏やかな表情で同意する。


「じゃあ、まずはリオンからやってみるか」


リオンは少し恥ずかしそうにしながらも、深呼吸をして牧場の向こう側、山の方角に向かって立つと思いっきり大きな声を出した。


「わーーーーっ!!」


『わーーーーっ!!』


リオンの声が牧場に響き渡った。すると、不思議なことに、山の方からもほぼ同じ声が返ってきた。まるでそのまま反響したように聞こえてきたその声に、悠真とリオンは驚いた表情を浮かべた。


「えぇ!?声が返ってきた?これって普通のこだまとは違いますよね……?」


リオンが不思議そうに言う。確かに、通常のこだまなら、距離によって音が変わったり、小さくなったりするはずだ。しかし今聞こえたのは、ほぼそのままの声だった。


そんな事を考えていると、一人何かに気づいたらしいリーフィアが悠真たちに説明した。


「たぶん、今のはナツコダマですね」


「ナツコダマ?」


悠真が首を傾げると、リーフィアは優しく説明を始めた。


「この時期になると起こる不思議な現象なんです。夏が近づくと、山に響いた声がそのまま返ってくることがあるんです」


「へぇ、面白いな。単なるこだまじゃないのか」


「えぇ。一部の学者たちは自然現象ではなく、何かの生物の能力だという説を提唱しています。ですが、そのような生物を実際に見た人はいないんです」


リーフィアの説明に、リオンも何かを思い出したように手を打った。


「そう言えば僕も小さい頃、おじいちゃんから聞いたことがありました!ナツコダマは、人間を楽しませるために声を返すんだって」


「なるほどね。じゃあ、俺も試してみるか」


悠真も山の方に向かって大きく息を吸い込んだ。


「やっっほーーーー!」


『やっっほーーーー!』


彼の声が響き渡ると、すぐさま山からも同じ声が返ってきた。その声の調子や強さまでもが、まるで悠真自身が発したかのようだった。


「すごい、本当に同じ声だ」


悠真が感心していると、牧場の門から別の声が聞こえてきた。


「おはようございまーす!」


振り返ると、ミリアムが薄緑色のワンピースドレスを翻して、小走りでやってくるのが見えた。彼女の両手には、様々な花や草が入った小さなかごが持たれていた。


「あ、ミリアムさん!良いタイミングです。僕たち、ナツコダマを見つけたんですよ!」


リオンが嬉しそうに伝えると、ミリアムは目を丸くした。


「え? ナツコダマ? 本当ですか!?」


彼女も興奮した様子で、かごを地面に置くと、三人の元に駆け寄ってきた。


「私、小さい頃ローザおばあさんから聞いて何度も試したんですけど、結局会えたことがなかったんですよ!」


「一緒にやってみるか? 今度は、みんなで一斉に叫んでみよう」


悠真が提案すると、皆が頷いた。


「せーの!」


「「わーーーっ!」」


『『わーーーっ!』』


四人の声が一斉に響き渡ると、山からも同じように四人の声が重なったように聞こえてきた。それはまるで、山の向こう側に彼らと同じグループがいるかのようだった。


「すごい!本当に同じ声が返ってきました!」


ミリアムが嬉しそうに歓声を上げた。


「はぁーすっきりした。ナツコダマ、不思議だけど面白い体験だったな」


「はい!すごく楽しかったです!」


悠真の言葉に、他の皆も晴れやかな笑顔で頷いた。連日の雨で少し沈んでいた気分は、すっかり晴れやかなものに変わっていた。


「さて、今日は久しぶりの晴れだ。しっかり牧場の手入れをしないとな」


悠真の提案に、リーフィアとリオンが頷いた。


「私も手伝いますよ。薬草畑の様子も気になりますし」


そうして四人は、晴れた日の牧場での作業に取り掛かった。動物たちもそれぞれのやり方で彼らを手伝っていた。テラは土を耕し、アクアは水やりを手伝い、アウラとサフィアは花壇の手入れをしていた。


空には雲ひとつない青空が広がり、牧場は活気に満ちていた。悠真は作業の手を止めて、この平和な光景を眺めながら深く息を吸い込んだ。


――――――


夕暮れ時、牧場は柔らかなオレンジ色の光に包まれていた。一日の作業を終えた悠真たちは、納屋の前のベンチに座ってリーフィアが入れてくれたハーブティーを飲みながら、穏やかな時間を過ごしていた。


「今日は楽しかった~!」


「ですね!久しぶりに晴れたし、初めてナツコダマにも会えました!」


リオンも嬉しそうに頷いた。


「みんなのおかげで、牧場も随分と手入れが進んだよ。ありがとう」


悠真は満足げに笑みを浮かべながら、星が増え始めた夜空を見上げた。

連日の雨が上がった後の清々しい一日は、珍しいナツコダマの経験と共に、穏やかに終わりを告げた。



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