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異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~  作者: 黒蓬


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第107話 アルカとの別れと約束の星空

朝日が昇り始める頃、牧場の納屋からは小さな金属音と不思議な光が漏れていた。アルカは一晩中、船の修理に没頭していたのだ。


「ふぅ、これで完了です」


宇宙船の側面パネルを閉じながら、アルカは満足げに頷いた。部品の取り付けは無事に終わり、船のシステムは完全に復旧していた。


悠真は温かい朝食を用意しながら、納屋から出てきたアルカを見つけた。小さな体にはどこか寂しさが漂っている。


「おはよう、アルカ。修理は終わったのか?」


「はい、白石さん。おかげさまで無事に完了しました。今夜には出発する準備が整います」


その声には、喜びと別れの寂しさが入り混じっていた。


「そうか……」


悠真も少し複雑な気持ちを抱えながら、微笑みを返した。短い間だったが、アルカの存在は牧場に新たな色を加えていた。


――――――


朝食のテーブルを囲んだ一同は、いつもより少し静かだった。リーフィアは特製のハーブティーを淹れ、リオンは新鮮な卵を集めてきたばかりだ。


「アルカさん、船の修理が完了したんですね」


リーフィアが優しく声をかけると、アルカはおずおずと頷いた。


「はい。これも皆さんのおかげです。宿や食事だけでなく部品探しの手伝いまでして頂いて、本当に助かりました」


「僕たちは何もしてないよ。あれはロカが遊んでただけだし」


リオンの言葉に、全員が笑顔になった。窓の向こうでは、ロカとアズールが仲良くボールで遊んでいる。


「出発は今夜?」


「はい。星の配置が最適なタイミングなんです。航行計画では、母星まで最短で帰れるルートが今夜開きます」


アルカは宇宙地図のようなものを広げ、星々の位置関係を示した。リオンは興味津々で身を乗り出す。


「すごい!これが宇宙の地図なんだね!」


「はい。こちらの星が私の母星、そしてここが現在地……つまりこの惑星です」


アルカの説明に、リーフィアも目を輝かせていた。宇宙への憧れは、種族を超えて共通するものなのかもしれない。


「じゃあ……今日が最後の日になるんだな」


悠真の言葉に、しばし沈黙が流れた。


「はい……ですが、その前に!」


アルカは急に立ち上がり、決意に満ちた表情を見せた。


「最後の日、皆さんに何か恩返しがしたいんです。私にできることで……」


「恩返し?」


「はい!私の星の技術で、何か役立つものを……」


アルカの提案に、悠真は首を横に振った。


「いや、そんな必要はないよ。俺達もアルカからいろんな話を聞けて楽しかったし」


「でも……」


「そうですよ、アルカさん。あなたの話を聞けただけでも、私たちにとっては貴重な経験でした」


リーフィアの優しい言葉に、アルカの目には涙が光った。


「わかりました……なら、せめて今日一日、精一杯お手伝いさせてください!」


アルカの熱意に、皆は微笑みながら頷いた。


――――――


日中、アルカは牧場の動物たちと過ごした最後の時間を大切にしていた。フロストの機械部分を特殊なオイルで手入れし、レインの水場を宇宙船の浄水技術で最適化し、アズールには星々の物語を語って聞かせた。


夕方近く、アルカは悠真に声をかけた。


「白石さん、一つお願いがあります」


「なんだ?」


「この星の思い出を、何か持ち帰りたいんです。できれば……皆さんとの写真を」


アルカの目には真剣な思いが宿っていた。悠真は納屋から魔像結晶を取り出し、微笑んだ。


「いいアイデアだな。よし、みんなで記念撮影をしよう」


夕暮れ時、牧場の全員が家の前に集まった。ベルやヘラクレスから新入りのロカまで。リーフィアとリオンは動物たちを整列させるのに苦労していた。


「みんな、こっちを向いて!」


悠真が魔像結晶を構えると、アルカはリーフィアとリオンの間に立ち、最高の笑顔を見せた。アズールは最後の瞬間に飛び上がり、フロストは尻尾を振り、ロカはボールを口にくわえていた。


カシャリと音がして、この瞬間が永遠に記録された。


「うん。よく撮れてるな」


悠真が魔像結晶を確認すると、そこには牧場の家族全員の笑顔が収められていた。


「ありがとうございます…この写真、大切にします」


アルカは魔像結晶から出力された小さな絵を両手で大事そうに持った。


――――――


夜、星々が輝き始めた頃、アルカの宇宙船は牧場の広場に据えられていた。以前よりも光沢を増した船体は、星の光を受けて神秘的に輝いている。


「出発の時間ですね」


アルカは少し緊張した面持ちで言った。悠真、リーフィア、リオンはそれぞれ小さな贈り物を持っていた。


「これ、旅のお守りに」


リーフィアは特製のハーブを詰めた小さな袋を差し出した。優しい香りが漂う。


「これは僕が作ったスケッチ!牧場の地図だよ」


リオンの手作り地図には、牧場の細部までが丁寧に描かれていた。


「そして、これは俺からだ」


悠真はアルカに何枚かの牧場の写真と、小さな種の入った袋を渡した。


「これは?」


「牧場の花の種だ。もし君の星で育つなら、ここの思い出と一緒に咲かせてくれ」


アルカは涙を浮かべながら、三つの贈り物を胸に抱きしめた。


「本当に……本当にありがとうございます。私、いつか必ずまたこの星を訪れて皆さんに会いに来ます!」


アルカの声には強い決意が込められていた。


「ああ、約束だな」


悠真が笑顔で応じると、アルカも涙ながらに微笑んだ。


宇宙船のハッチが開き、アルカが振り返る。アズールが最後の別れを惜しむように鳴いていた。


「皆さん、短い間でしたが本当にありがとうございました。この星での経験は、私の宝物です」


最後の挨拶を終えると、アルカは船内へと入っていった。ハッチが閉まり、船のエンジンが低い唸りを上げ始める。


「行っちゃうんだね……」


リオンが少し寂しそうに呟いた。リーフィアはその肩に手を置き、優しく微笑んだ。


「そうね。でも、また会えるわ」


宇宙船はゆっくりと地面から浮かび上がり、柔らかな光を放ちながら空へと上昇していく。


「気をつけてな、アルカ」


悠真は空を見上げ、静かに言った。船は次第に小さくなり、やがて星々の間に溶け込むように消えていった。


その瞬間、空全体が美しいオーロラのような光に包まれた。青や緑、紫や金色の光が波のように揺れ、星空を彩った。


「これは……」


「アルカからの別れの挨拶かもしれませんね」


リーフィアの言葉に、悠真も頷いた。それは言葉にならない感謝の気持ちが形になったものだろう。


美しい光景に見とれていると、突然アズールが「キュイ!」と鳴き、空へと飛び立った。その後を追うように、レインも光を放ちながら空へ舞い上がる。


二匹は空高く舞い、まるでアルカを見送るかのように踊った。


「空がこんなに美しいと、寂しさも少し和らぐね」


リオンの言葉に、悠真とリーフィアは静かに頷いた。


オーロラの光が消え、静かな夜空に戻った頃、一行は牧場の家へと戻り始めた。


「さぁ、アルカさんがまた来てくれた時にがっかりさせないためにも、私達も頑張らないといけませんね」


リーフィアの柔らかな声に、悠真も微笑みを返した。


「ああ、約束したからな」


星空を見上げる悠真の目には、新たな日常への期待が光っていた。別れは寂しいけれど、また会える日を信じて今日も牧場は静かな夜を迎えるのだった。

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