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異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~  作者: 黒蓬


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第106話 船の部品と遊び心

朝の光が牧場に降り注ぐ中、アルカが突然不安そうな表情で悠真のもとを訪ねてきた。


「白石さん、大変です!」


朝食の準備をしていたリーフィアと共に、アルカの慌てた様子に悠真は顔を上げた。


「どうした?」


小さな体で精一杯深呼吸をしたアルカは、少し落ち着きを取り戻して口を開いた。


「船の診断結果を確認していたところ、重要な部品が一つ足りないことに気づきました。宇宙空間を安全に航行するには絶対に必要なものなのです」


「船の部品が?……不時着した時に外れて落ちたんじゃないか?」


悠真の質問に、アルカは少し考える様子を見せた後、頷きを返した。


「確かに。あの時は詳しく確認せずに持ってきてしまったので、その可能性はありますね。不時着地点を見に行ってきます」


「待った。部品を探すなら手分けしたほうが良いだろう。俺達も手伝うよ」


「あ、ありがとうございます。とても助かります」


そうして一行は西の森へと足を踏み入れ、アルカの宇宙船の不時着地点を目指していた。


「確か、この辺りだったはずなのですが……」


小さな手に持った探知機のようなものを見つめながら、アルカは慎重に周囲を見回した。


「焦らなくていいさ。きっと見つかるよ」


悠真は落ち着いた口調でアルカを安心させようとした。リーフィアとリオンも一緒に辺りを見回している。


「あ、あそこです!」


アルカが指差す方向に目をやると、小さな船の残骸が見える。不時着の際に周囲に飛び散った部品の一部だろう。皆で急いでその場所へ向かった。


「どんな部品が足りないんだ?」


「安定装置の制御部です。小さな六角形の、青く光る部品なのですが……」


アルカが説明を始めたその時、藪の向こうから何かの音が聞こえてきた。悠真は足を止め、音の方向に視線を向けた。


「何か、いますね」


リオンがそっと声をひそめる。


静かに近づいてみると、そこには予想外の光景があった。体長1mほどの大きなトカゲのような生き物が、何かを楽しそうに転がして遊んでいる。よく見るとそれは先ほどアルカが話していた部品の形に似ていた。


「あっ!あれです!」


アルカの声に、トカゲは驚いたように顔を上げた。鮮やかな赤色の鱗に覆われたその姿は、どこか愛らしい。大きな黄色い瞳で一行を見つめている。


「なぁ、きみ。その部品を返してもらえないかな?」


悠真がそっと手を差し出しながら、優しく声をかけた。トカゲは一瞬、悠真の方を見つめたが、次の瞬間、部品を器用な前足で抱え込むと、あっという間に近くの木に登り始めた。


「あ、待ってください!」


アルカの叫びも空しく、トカゲは部品を持ったまま、木から木へと素早く飛び移っていく。


「何てすばしっこいんだ……」


リオンが感嘆の声を上げる。確かにその動きは驚くほど俊敏で、通常のトカゲとは思えなかった。


「どうしましょう?このままでは部品が……」


アルカの表情に不安の色が広がる。それを見た悠真は、少し考え込んだ。


「……あのトカゲ、部品を遊び道具として使っているみたいだよな?」


「そうですね。転がして楽しんでいたように見えました」


リーフィアが先ほどのトカゲの様子を思い出すようにして答える。


「なら、代わりの遊び道具があれば、もしかしたらあの部品を手放してくれるかも……」


悠真がそこまで言ったところで、リオンが手を叩いた。


「それなら、牧場にあるあの跳ねるボールはどうですか?アズールがよく遊んでいるやつ」


「良いアイデアだな。アルカ、少し待っていてくれ。すぐに戻るから」


悠真はすぐさま牧場へと引き返した。程なくして青と緑のしましま模様が入った、手のひらサイズのボールを持って戻ってきた。この特殊なボールは、地面に当たると勝手にはね返り、予測不能な方向に動くため、牧場の動物たちに大人気だった。


「これを使ってみよう」


悠真はトカゲが木の上から様子を窺っているのを確認すると、ボールを地面に向かって転がした。ボールは地面に触れた瞬間、勢いよく跳ね上がり、不規則な軌道を描きながら木々の間を舞い始めた。


トカゲの目が、ボールの動きを追って大きく見開かれた。明らかに興味を引かれている様子だ。しばらく様子を見ていたトカゲは、ついに好奇心を抑えきれなくなり、ゆっくりと木を降り始めた。


そして地面に降りると、部品を地面に置き、ボールに向かって一直線に駆け出した。ボールが跳ねるたびに前足を伸ばして捕まえようとする姿は、まるで子猫のように愛らしい。


「チャンスです!」


アルカがそっと部品に近づき、無事に回収することができた。


「よかった……この部品がないと、飛び立てないところでした……」


安堵の表情を浮かべるアルカを見て、皆もほっとした表情になる。一方、トカゲはすっかりボールに夢中になり、追いかけては転がし、また追いかける、という行為を繰り返していた。


「あいつ、本当に楽しそうだな」


リオンが微笑みながら言う。その様子を見ていた悠真は、ふと思いついたことがあった。


「あのトカゲにも声をかけてみるか」


「え?」


「悪気があったわけじゃなさそうだし。あれが気に入ったなら、うちの牧場に来ればいつでも遊べるってさ」


リーフィアは少し驚いた表情を見せたが、すぐに穏やかな微笑みを浮かべた。


「悠真さんらしいですね」


悠真はトカゲの方へ歩み寄り、しゃがみ込んで静かに声をかけた。


「そのボールが気に入ったなら、いつでもうちの牧場に遊びに来ていいぞ。他にも遊び道具がたくさんあるし、友達もいるしな」


トカゲは動きを止め、大きな瞳で悠真を見つめた。まるで言葉を理解したかのように首を傾げている。そして、予想外のことに、ボールを器用な前足で抱え、ゆっくりと悠真たちの方へ近づいてきた。


「もしかして……本当に理解した?」


リオンが驚きの声を上げる。


トカゲは悠真の前で立ち止まると、ボールを彼の足元に置いた。そして、尻尾を左右に振りながら、期待に満ちた目で見上げてくる。


「これは……一緒に行きたいという意思表示でしょうか?」


リーフィアが静かに尋ねる。悠真はトカゲの頭をそっと撫でてみた。嫌がる様子はなく、むしろ気持ち良さそうに目を細めている。


「そうみたいだな。いいよ、一緒に行こう。名前もつけてやらないとな」


悠真が笑顔でトカゲを見つめていると、リーフィアが思い出したように気づいたことを口に出した。


「この子、『クロマトカゲ』という種族かもしれません。図鑑で見かけたことがある気がします」


「クロマトカゲか……」


悠真はしばらく考え、トカゲの鮮やかな赤色の鱗を見つめた。


「じゃあ、『ロカ』はどうだ?」


トカゲは嬉しそうに鳴き、そのまま悠真の足元にすり寄ってきた。どうやら気に入ったようだった。


――――――


牧場に戻ると、アズールが空中から飛んできて好奇心いっぱいの目でロカを見つめた。


「キュイ?」


「新しい仲間だよ、アズール。ロカって言うんだ」


アズールはロカをしばらく観察した後、ロカが持っているボールに気づくと「キュイ―」と遊びに誘うように鳴いた。


ロカの方は近づいてきたアズールに最初は少し警戒していたが、アズールが友好的な態度を示すと、おそるおそる地面にボールを置いた。アズールはそれを前足で軽く叩き、ボールが跳ねるのを見て嬉しそうに鳴く。


「仲良くなれそうだね」


リオンが笑いながら言った。ロカとアズールは、あっという間にボール遊びに夢中になっていた。


「それで、修理はどれくらいで終わりそうだ?」


「この部品が見つかったので……明日には完了する予定です」


アルカの表情に一瞬、寂しさが浮かんだように見えた。


「そうか……もう明日には出発できるんだな」


リーフィアも少し寂しそうだ。短い間だったが、アルカはすっかり牧場の一員となっていた。


「えぇ、ですがこの星は非常に興味深い。星間探査員としてもまだまだ調べる価値のある場所です」


「それは……つまり、また来るってことか?」


悠真が聞くと、アルカは笑顔で答えた。


「はい。もちろん直ぐという訳にはいきませんが、近隣惑星などの調査を含めて、また皆さんにお礼も兼ねて挨拶に来るとお約束します」


アルカの提案に、皆の表情が明るくなった。


「そうか。それなら、その時はまた歓迎するよ」


悠真の言葉に、アルカも嬉しそうに微笑んだ。


一方、ロカとアズールは牧場内を元気よく駆け回り、他の動物たちも少しずつ新しい仲間に興味を持ち始めていた。フロストがロカに近づき、友好的に鼻先で挨拶する様子も見られた。


夕暮れ時、悠真は納屋の前に腰を下ろし、牧場の様子を眺めていた。西の空がオレンジ色に染まる中、動物たちが寄り添って休む姿は、いつ見ても心が温かくなる光景だった。


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