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異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~  作者: 黒蓬


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第105話 宇宙の技術と牧場の魔法

朝日が牧場全体を優しく照らす中、悠真は納屋の前で新しい日課となっていた作業をしていた。アルカの小さな船の修理状況を確認するため、西の森まで足を運ぶことだ。


「修理は順調か?」


悠真が声をかけると、船の横で何やら計測器のようなものを操作していたアルカが振り返った。


「おはようございます、白石さん。はい、自動修復システムは予定通りに作動しています」


小さな体で精一杯お辞儀をするアルカの姿に、悠真は微笑まずにはいられなかった。


「そうか。それは良かった」


牧場に来て三日目となるアルカは、すっかり牧場の生活に馴染んでいた。朝はリーフィアの作る朝食を共に食べ、日中は自分の船の修理を確認したり、牧場の動物たちを観察したりして過ごしている。特にアズールと仲良くなったらしく、小さなドラゴンが彼の周りを飛び回る姿はもう日常の光景となっていた。


――――――


「悠真さーん!」


牧場に戻ると、遠くから元気な声が聞こえてきた。振り返ると、亜麻色の髪を揺らしながらミリアムが駆けてくるのが見えた。


「どうした、ミリアム?」


「新しい薬草を見つけたんです!これを使って……あれ?」


悠真の後ろからひょこっと顔を出したアルカに気づき、ミリアムは言葉を途切れさせた。その目は驚きで大きく見開かれている。


「え……えっと……この子は……?」


悠真は少し考えた後、シンプルに真実を告げることにした。


「宇宙から来た探査員のアルカだ。船が故障して、修理の間うちに滞在している」


「宇宙?ってなんですか?」


「え~っと、この世界の外……夜空に見える星々の一つから来たってことだよ」


悠真がそう説明すると、ミリアムはさらに目を丸くしてアルカを食い入るように見つめた。


「はじめまして、ミリアムさん。アルカ・ネビュラと申します」


アルカが丁寧に挨拶すると、ミリアムはようやく我に返ったようだ。


「わ、私ミリアム・ハーブライトです!グリーンヘイブン村から来ています!」


慌てて挨拶するミリアムの姿に、悠真は思わず笑みを浮かべた。彼女の純粋な反応は、いつも周囲を明るくする。


「私、この世界以外にも生物がいるなんて知りませんでした!」


「宇宙に出るのは大変だからな。魔法ならできそうな気もするけど……」


「エネルギーの質が異なるだけなので、可能ではあるでしょう。問題はそれだけのエネルギーを扱う設備や装置の問題ではないでしょうか?」


アルカの考察に悠真は頷いた。ミリアムはまだよく分かってなさそうだったが、難しい話だということくらいは分かり、それ以上は聞かないことにしたようだった。


「それより、ミリアム。さっき薬草のことを言ってなかったか?」


「あ!そうでした!」


ミリアムは小さな布袋から、青みがかった葉を取り出した。


「これを見つけたんです。夜光草って呼ばれているもので、夜になると青く光るんですよ!治癒効果もあるみたいで……」


熱心に説明するミリアムの話に耳を傾けていると、悠真の頭の中に突然、青い文字が浮かび上がった。


【牧場経営スキルがLv7に上昇しました】

【新機能「クラフト機能:家具・道具作成機能」が解放されました】


「ん……?クラフト機能?」


思わず声が漏れる。流石に6回目ともなると驚きはしなかったが、表示された新機能には興味が湧いた。


「どうかしましたか、悠真さん?」


リーフィアが納屋から出てきて、悠真の様子を心配そうに見つめている。


「ああ、それが……またスキルがレベルアップしたみたいだ」


「スキル?」


アルカが興味深そうに尋ねた。


「ああ、この世界では特殊な能力のことをスキルと呼ぶんだ。俺には『牧場経営』というスキルがある。今、それがレベルアップして『クラフト機能』というものが解放されたらしい」


「なるほど!それはこの惑星の固有機能なのですか?それとも生物学的な進化の一種ですか?」


悠真の説明を聞いたアルカは、探査員としての好奇心が刺激されたのか、色々な質問を投げてきた。


「悪い、そのあたりは俺にもよく分からないんだ。とりあえず、確認してみるか」


悠真はスキルの詳細を確認しようと意識を集中させた。すると、頭の中に情報が流れ込んできた。


「……牧場の農産物を使って、家具や道具を作れるようになったらしい」


「農産物で?すごいじゃないですか!」


ミリアムが歓声を上げた。


「それじゃあ、自分たちで必要なものを作れるってことですね」


リーフィアも喜びの表情を浮かべている。確かに、これまでは必要な道具や家具はアスターリーズの街まで買いに行くか、商人が来るのを待つしかなかった。


「試しに何か作ってみましょうよ!」


ミリアムの提案に、悠真も頷いた。ちょうど作業用の台が壊れかけていたので、それを新しくするのがいいだろう。


「じゃあ、作業台を作ってみるか」


悠真がそう言って農産物を保管している設備に向かうと、皆も興味津々な様子で付いてきた。


「それで、どのように製作するのですか?」


「え~っと、材料は作る物に見合うだけの量があればどれでもいいらしい。あとはその材料を纏めるように魔力を込める……?」


悠真が戸惑いながらも。用意した材料に手をかざすと……魔力が材料を包み込み、形を整えていく。


「こうかな……」


悠真がそのまま魔力を集中させると材料たちが浮かび上がり、光に包まれる。そして光が収まると、そこには頑丈な作業台が出来上がっていた。


「すごい!卵や牛乳から作業台ができるなんて、凄く不思議です!」


ミリアムが拍手をした。リーフィアも感嘆の表情だ。


「面白い……物質変換技術のようですね」


アルカは科学者のような目で冷静にその様子を観察していた。


「次は何を作りましょうか?」


リーフィアの問いに、悠真は考えた。納屋の中を整理するための棚があると良いかもしれない。


「よし、棚を作ってみるか」


再び材料を用意して、魔力を込める。今度はより複雑な形だが、先ほどの経験があるため、いくらかスムーズに魔力を操ることができた。光が収まると、機能的で美しい木製の棚が完成していた。


「これは便利だ。牧場の作業がもっと効率的になりそうだな」


「悠真さん、椅子も作れますか?リオンくんが使っている椅子、少し壊れかけてたんですよ」


ミリアムのリクエストに応え、椅子も製作。今度は装飾的な要素も加えてみた。出来上がった椅子は、座り心地の良さそうな、背もたれに葉の模様が彫られた美しいものだった。


「素晴らしい出来栄えですね」


リーフィアが感心した様子で椅子を撫でる。


「なんだか楽しくなってきたな」


悠真は次々と必要なものを思い浮かべ、作り始めた。かまど用の道具掛け、水汲み用のバケツ、野菜を収穫するための籠……。


作業に没頭していると、太陽はすっかり高くなっていた。


「皆さん、昼食の準備ができましたよ」


リーフィアの呼びかけに、悠真は我に返った。


「あぁ、ついつい夢中になってしまった」


「白石さん、このスキルという能力は本当に興味深いです」


空腹を忘れて作業を見守っていたアルカが言った。


「宇宙には様々な技術がありますが、このように意識と魔力だけで物質を変換するような技術は、私の知る限りでは存在しません」


「そうなのか?」


「はい。我々は高度な技術を持っていますが、それは機械や道具を介して行うものです」


アルカはそう言いながら、手首の装置を操作した。小さな光の玉が浮かび上がり、三次元の映像のようなものが空中に広がった。それは星々の地図のようだ。


「これが私の来た星系です」


アルカが空中に展開したその映像を見たミリアムは息を呑んだ。美しい星々の配置に、悠真もリーフィアも見入ってしまう。


「これらはすべて実在する星なんですか?」


「はい。私たちは無数の星を調査し、生命が存在する惑星を探しています」


アルカの説明に、皆が聞き入っていた。宇宙の広大さを感じさせる映像だった。


――――――


昼食後、リオンが牧場に戻ってきた。月影村での用事を済ませてきた彼は、新しい椅子に喜びの表情を見せた。


「これを僕のために作ってくれたんですか?ありがとうございます!」


「気に入ってもらえてよかった」


悠真が答えると、リオンは早速椅子に座ってみた。


「座り心地もバッチリです!」


そこへアズールが飛んできて、リオンの膝の上に着地した。


「キュイ!」


「どうしたの、アズール。アルカさんを探しにきたの?」


アルカの名前を聞いて、アズールは首を傾げた。その仕草が可愛らしい。


「彼なら今、船の様子を見に行ったよ」


リオンの言葉に、アズールは再び空へ飛び立った。どうやらアルカを追いかけるつもりのようだ。


「アズールもアルカさんに懐いているみたいですね」


「ああ、アルカもドラゴンの子供を見るのは初めてらしくて、お互い興味深いみたいだ」


会話をしながら、悠真は新しく作った道具を納屋に運び入れた。以前よりも整理整頓され、作業がしやすくなっている。


「こんなに便利なスキルがあるなんて、悠真さんは本当に凄いです」


リオンの言葉に、悠真は少し照れくさそうに首を振った。


「俺というより、このスキルが特殊なんだろう。アルカも言っていたが、魔力で物質を変化させるなんて、宇宙規模で見ても珍しいらしい」


「宇宙規模……」


リオンは空を見上げた。昼間でも薄く星が見える、この世界の空。その向こうには無数の世界があるのだろう。


――――――


夕暮れ時、アルカが船から戻ってきた。その手には小さな装置を持っている。


「どうだった?修理は順調か?」


「はい、予定より早く進んでいます。あと五日ほどで完了しそうです」


嬉しい報告だが、どこか寂しさも感じる。わずか数日の滞在だが、アルカは確実に牧場の一員となっていた。


「そうか……それは良かった」


悠真の複雑な心境を察したのか、アルカは微笑んだ。


「ですが、私の調査はまだ十分ではありません。この牧場は、調査価値の高い場所です」


アルカが持ってきた装置を地面に置くと、それは展開して小さな台座になった。その上に球体を置くと、周囲に光が広がった。


「これは?」


「環境分析装置です。この牧場には通常ではありえない多様な生態系が共存しています。それを科学的に分析してみたいと思いまして」


装置から投影された映像には、牧場の地形と、そこに住む生き物たちのエネルギーの流れが可視化されていた。まるで生命の網目のようだ。


「すごい……」


ミリアムが感嘆の声を上げた。リーフィアとリオンも不思議そうに映像を見つめている。


「この牧場は、何らかのエネルギーの結節点になっているようです。様々な生命体が共存できる特殊な場なのです」


アルカの説明に、悠真は以前にエイドも似たようなことを言っていた思い出した。


「調査に来ているエイドも似たようなことを言ってたよ。まぁ、俺にとってはみんなが集まってくる不思議な場所っていうだけなんだけどな」


そう言って、悠真は牧場の生き物たちを見渡した。ベルが寝ぼけた様子で草を噛み、ルナはまどろむように目を細めている。アズールはアルカの肩の上で小さく目を閉じ、フロストは悠真の足元で寝そべっていた。


「確かに不思議な場所です。こんな光景は、他の星では見ることはできないでしょう」


悠真の言葉に同意するように、アルカも悠真の隣に座り、しばらくの間、穏やかな牧場の景色を眺めていた。

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