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異世界に召喚されたけど、戦えないので牧場経営します~勝手に集まってくる動物達が、みんな普通じゃないんだけど!?~  作者: 黒蓬


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第104話 宇宙からの不思議なお客様

春の陽気に包まれる牧場で、悠真はいつものように朝の仕事に取り掛かっていた。納屋の前で餌桶を運びながら、フロストと戯れる姿は、いつもの光景だった。


「よしよし、今日も元気だな」


悠真が撫でると、フロストは嬉しそうに尻尾を振った。


そんな平和な時間を破るように、突然、上空から甲高い「カア!カア!」という鳴き声が聞こえてきた。見上げると、トレジャーが何やら興奮した様子で旋回している。


「どうしたんだ?トレジャー」


悠真が声をかけると、カラスは何度も西の森の方向を指し示すように飛び、また戻ってきた。いつもは金や宝石を見つけると騒ぐのだが、今日は様子が違う。


「また何か見つけたのか?」


悠真が尋ねると、トレジャーは一層激しく鳴き始めた。これは何か異変があったのかもしれない。


「リーフィア、ちょっと西の森を見てくる。トレジャーが騒いでいるんだ」


納屋から顔を出したリーフィアに告げると、彼女は心配そうな表情を浮かべた。


「気をつけてくださいね。もしかしたら危険なものかもしれません」


「分かってる。フロスト、ついてきてくれるか」


フロストは「ワン!」と短く返事をすると、悠真の足元に駆け寄った。


――――――


森の中を進むにつれ、奇妙な光が木々の間から漏れているのが見えた。それは太陽の光でも月明かりでもない、青白い不思議な輝きだった。


「あれは……何だ?」


悠真は慎重に足を進めた。フロストも警戒するように耳を立て、前方を凝視している。トレジャーはすでに先に飛んでいき、光源の近くの枝に止まって悠真たちを待っていた。


森の小さな空き地に辿り着くと、そこには驚くべきものがあった。木々が倒れ、地面には浅い窪みができている。その中央には、見たこともない形をした小さな物体が横たわっていた。


それは長さ2メートルほどの卵型をした物体で、表面は銀色に輝いていた。悠真が思わず足を止めていると、その物体の側面が突然動き、小さな開口部ができた。


「なんだ……これは……」


悠真は息を飲んだ。見たこともない乗り物のようだ。開口部からは蒸気のようなものが漏れ出し、そして――そこから何かが出てきた。


それは人間の形をしているが、身長はせいぜい60センチほど。全身を覆う銀色の薄い服を着て、頭には半透明の丸いヘルメットをかぶっている。


小さな生物は周囲を見回すと、悠真とフロストに気づいた。


「ガル・メトリオン・ザス!ネブタ・クレイオス?」


謎の言葉が響いたが、それは悠真には全く理解できないものだった。


「困ったな……何を言っているのか分からない……」


悠真が戸惑いながら首を傾げると、小さな生物は慌てた様子で手首についている装置を操作し始めた。装置から小さな光が放たれ、しばらくすると再び話し始めた。


「……こ、この言語は……理解できますか?」


今度は明確に言葉が聞き取れた。悠真は驚きのあまり言葉を失ったが、すぐに我に返った。


「あ、ああ……分かる。君は……何者だ?」


小さな生物はヘルメットを外した。中から現れたのは、赤みがかった肌に大きな青い目を持つ生物だった。頭には短い銀色の髪が生えている。


「私はアルカ・ネビュラと申します。星間探査員です」


「星間……探査員?」


「はい。私はメタリオン星系から来ました。この惑星の調査を行っていたのですが、不運にも航行船に不具合が発生し、不時着してしまいました」


悠真は混乱していた。メタリオン星系?この惑星?そんな言葉は初めて聞いた。だが、目の前の小さな生物の困惑した表情は本物のようだ。


「つまり……君は宇宙から来たってことか?」


「その表現で正確です。宇宙の別の星から来ました」


フロストが好奇心からアルカに近づくと、彼は少し驚いたものの、恐れる様子はなかった。


「興味深い生物ですね。機械と生体のハイブリッドですか?」


「いや、これはクロノドッグと呼ばれる魔法の犬だ。俺はこの近くの牧場を経営している白石悠真だ」


「なるほど。白石悠真さん、お会いできて光栄です」


アルカは小さな体で精一杯頭を下げた。その姿は可愛らしいとすら言えた。


「船の修理に必要な時間は約七日ほど。その間、安全に滞在できる場所をご存じないでしょうか?」


「修理ができれば、元の……星に戻れるのか?」


「はい。船の自動修復システムが作動していますが、完全な修理には時間がかかります」


悠真は困っているアルカを見て、何かしら助けになれないかと考えた。確かに見たこともない存在だが、悪意は感じない。むしろ、不慣れな環境で困惑している旅人のようだ。牧場には様々な珍しい生き物がいるし、一人くらい増えても問題はないだろう。


「もし良ければ、俺の牧場に滞在するといい。二階に空き部屋があるから」


アルカの青い瞳が驚きと喜びで大きく見開かれた。


「本当ですか?それは助かります!こんなにすぐに親切な方に出会えるとは思いませんでした」


「ああ。うちの牧場にはいろんな生き物たちが集まってるからな。一人くらい増えても問題ないさ」


悠真が笑うと、アルカも安堵の表情を浮かべた。


「ありがとうございます。お礼といっては何ですが……こちらを」


アルカは船内から小さな透明な球体を取り出した。それは内側から淡い光を放っている。


「これは何だ?」


「スターライトシードと呼ばれるものです。夜になると美しく光り、その光には心を落ち着かせる効果があります。私たちの星では、贈り物として珍重されているものです」


悠真はそれを受け取った。手のひらに乗る程度の大きさだが、何とも言えない温かさを感じる。


「こんな貴重そうなものを……ありがとう。それじゃ、牧場に戻ろうか。みんなに紹介するよ」


――――――


牧場に戻ると、リーフィアとリオンが心配そうに待っていた。二人はアルカを見て目を丸くした。


「悠真さん、この方は……?」


リーフィアの問いに、悠真は簡潔に説明した。宇宙の別の星から来た探査員であること、船が故障して修理の間滞在する場所を探していたこと。


リオンは興奮気味に質問を投げかけた。


「すごい!他の星にも生き物がいるんですね!どんな星なんですか?」


「私の星は三つの太陽に照らされ、空は常に明るいんですよ。夜というものがありません」


アルカの言葉に、リオンはさらに興味津々な表情を見せた。


一方、リーフィアは慎重に観察していたが、やがて穏やかに微笑んだ。


「不思議なご縁ですね。ようこそ、白石牧場へ」


その言葉に、アルカは礼儀正しく頭を下げた。


「ご厚意に感謝します」


悠真は家の二階の空き部屋にアルカを案内した。小さな体には十分すぎるほどの広さだ。


「ここを使ってくれ。何か必要なものがあれば言ってくれ」


「ありがとうございます。これだけあれば十分です」


アルカは手首の装置を操作すると、小さな箱のようなものを取り出した。それを床に置くと、箱は展開し、アルカのサイズに合わせたベッドと作業台に変形した。


「おぉ、すごいな……」


悠真が感心していると、窓からは「キュイ!」という声が聞こえた。アズールが好奇心いっぱいの目でアルカを見ていた。


「あれは……まさか、ドラゴンの幼体ですか?!」


アルカは驚きと興奮を隠せない様子だった。


「ああ、アズールだ。他にもいろんな生き物がいるぞ」


「素晴らしい!私の探査記録に大きな発見となります!」


小さな手を興奮気味に動かすアルカを見て、悠真は微笑んだ。新しい出会いは、いつも牧場に新たな風を運んでくる。


「なら、他のみんなにも紹介するよ」


――――――


夕暮れ時、牧場の生き物たちはそれぞれアルカに対して様々な反応を示した。アクアは好奇心から近寄り、チチチと鳴きながらアルカの周りをグルグル回った。フレアはやや警戒しながらも、次第に興味を示すようになった。


アズールはずっとアルカの後をついて回り、時々鳴き声を上げては何かを伝えようとしているようだった。


「皆さん、フレンドリーですね」


アルカはアズールの頭を優しく撫でながら言った。


「ああ、最初は珍しいものに興味津々なんだ」


夕食時、リーフィアが用意した料理をアルカは興味深そうに観察していた。


「私たちの食事に問題はありませんか?」


リーフィアが心配そうに尋ねると、アルカは小さな装置で食べ物をスキャンした後、安心した表情で頷いた。


「大丈夫です。むしろ、とても栄養価が高いようです。いただきます」


小さな口で一口食べると、アルカの顔には驚きの表情が広がった。


「これは素晴らしい!こんな美味しい料理は初めてです!」


リーフィアは照れくさそうに微笑んだ。


「ありがとうございます。どうぞたくさん召し上がってください」


食事の後、アルカは悠真にスターライトシードの使い方を教えた。丸い球体を軽く握ると、中から淡い青白い光が漏れ出し、部屋全体を幻想的に照らした。


「綺麗な光……」


「こんなに小さい道具なのに凄いですね」


ユエはその光に魅せられたように小さく呟き、リオンも驚いた様子で息を呑んだ。まるで星空を手のひらに収めたかのような光だった。


「この光は心と体を癒し、良質な睡眠をもたらします。星間旅行で疲れた時にも重宝する道具です」


悠真はその優しい光を見つめながら、思い出した。かつてカメラマンとして世界を放浪していた時、星空の下で眠ることが何よりの安らぎだった。この光は、どこかその時の感覚に似ている。


「ありがとう、大切にするよ」


――――――


夜、悠真が納屋の様子を見回っていると、二階の窓からアルカが星空を見上げている姿が見えた。


「まだ起きているのか」


二階に上がると、アルカは穏やかな表情で悠真を迎えた。


「私の星には夜がないので、この星の夜空は特別に美しく感じます」


「そうか。俺はこの世界の外のことなんて考えたこともなかったよ」


悠真も窓辺に立ち、満天の星を見上げた。


「宇宙には無数の星があり、それぞれに様々な生命が育まれています。この星も、私から見れば不思議に満ちた場所です」


「お前から見ても不思議なのか?」


「はい。特にこの牧場の生き物たちは驚きの連続です。私たちの記録にもない特徴を持っていますから」


アルカは少し考え込むような表情を見せ、続けた。


「白石さんは、なぜこんなにも様々な生き物と共に暮らしているのですか?」


「それは……」


悠真は少し間を置いてから答えた。


「きっかけは偶然だった。この世界に来て牧場を始めたら、自然と生き物たちが集まってきたんだ。この牧場のある場所が結構特殊な土地みたいでな」


「なるほど。確かに地形スキャンをした時にも、特殊なエネルギーの濃度を感じました。ですが、それだけではこれほどの種が共存して穏やかに暮らすことは不可能でしょう。やはりこの牧場は特別だと感じます」


アルカの言葉に、悠真は少し驚いた。


「似たようなことは言われたことがあるけど、アルカから見てもやっぱりそう思うのか?」


「もちろんです。様々な生命を受け入れ、共存する環境を作ること。それは宇宙でも稀有なことなのです」


夜風が二人の間を通り抜けていく。星々の光は、はるか遠くから二人を見守っているようだった。


「私も……帰る場所があるんです」


アルカの小さな声に、悠真は黙って耳を傾けた。


「家族が待っています。修理が終わったら、彼らの元に戻らなければ」


「そうか……早く修理が終わると良いな」


そう言って、悠真は微笑んだ。この牧場も、様々な生き物たちの帰る場所になっている。それはアルカにとっては一時的な避難所に過ぎないが、それでも良いのだ。


「君の船が修理できるまでは、ここをくつろぎの場にしてくれ」


「ありがとうございます」


アルカもまた微笑み、二人は静かに星空を見上げ続けた。


牧場の夜は静かに過ぎていく。牧場の動物たちは眠りにつき、納屋からはアクアやフレアの寝息が聞こえる。時折、アズールが夢でも見ているのか、小さく「キュイ」と鳴いた。


悠真は自室に戻り、アルカからもらったスターライトシードを手に取った。淡い光が部屋を優しく照らし、心が落ち着いていくのを感じる。


「宇宙か……」


そんな遠いところから来た存在が、今は自分の牧場にいる。不思議な巡り合わせだが、牧場にとっては日常の一コマかもしれない。様々な生き物との出会いは、いつも新しい発見と喜びをもたらしてくれるのだから。


スターライトシードの柔らかな光に包まれながら、悠真は静かに目を閉じた。明日はアルカと共に、どんな一日が始まるだろう。そんな期待と共に、彼は穏やかな眠りに落ちていった。


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